第3回目(1999年7月11日) エッシェンシュタインを探せ! その1−エッシェンシュタインってどんな国?−
遠藤淑子作品初期の代表作、「エヴァンジェリン姫」シリーズ。その舞台となっているのが、ヨーロッパの架空の小国、「エッシェンシュタイン公国」。今回は、その実像に迫ろう、というのがテーマである。
「エッシェンシュタイン公国」は、どこにあるのか、って、それは架空の国だろう、という答えがすぐに返ってきそう。まずは、作品から探られる、エッシェンシュタイン公国の様子を洗い出してみたい。
<自然>
- 地形は全体に山がちで、火山もあり、温泉も湧く(「大さわぎのウエディングマーチ」)。海はない。
- 南部に湿地帯があり、野鳥の棲息地(「もしかしたらSF」)。
- 国境を接しているのは、西どなりに徒歩3時間ほどでスイス(「4月の魚」)、A国(「大さわぎのウエディングマーチ」)。アルプスを越えるとイタリア(「星はなんでも知っている」)。フランスへは車で行ける(「夢見る佳人」)。
- 冬にはかなり雪が降り(「王女様とたわし」)、スキー場もある(「大さわぎのウエディングマーチ」)。風が強い(「夢見る佳人」)。
- トドマツが自生している(これはギャグかもしれない(笑))(「4月の魚」)。
<歴史>
- 戦争のどさくさに紛れて独立した(「大さわぎのウエディングマーチ」)。
- かつての国王で、名前のあがっているのはフランツ・ヨゼフ2世(「波乱ぶくみのイブ」)。当時、エッシェンシュタインはお金持ちだった。
<政治>
- 政体は君主制、エッシェンシュタイン公家?が統治しており、現在の国王はルドルフ(「アルト…」)、次期国王は一人娘(「アルト…」)のエヴァンジェリン王女。
- 名前のあがっている官職は、執務室長、女官長、執務官、近衛(「大さわぎのウエディングマーチ」)、門番、庭師、財政(「波乱ぶくみのイブ」)、広報、観光課(「お姫様のワルツ」)、山小屋番(「南から来たインディラ」)。確認された政府機関は、畜産試験場(「波乱ぶくみのイブ」)、林産試験場(「王室スキャンダル騒動」)。国政(エッシェンシュタイン家政?)については、エヴァンジェリン王女を主席とし(ルドルフ王は、病気がちであって、ほとんど政治にタッチしていない。エヴァンジェリンが代務しているのだろう)、執務官等が出席する会議で決められている。
- のどかな国情の割に、王制反対運動があったり(「大さわぎのウエディングマーチ」)、テロリストのアジト建設を企てられたり(「もしかしたらSF」)、政情は意外にも不安定。
- 軍隊はない(「夢見る佳人」)。(「大さわぎのウエディングマーチ」の時は「近衛」が存在したので、この間に廃止されたのかもしれない)
- 友好的な他国として登場するのは、姫の結婚相手が迎えられたり(「大さわぎのウエディングマーチ」)、王の留学時代の学友がいる(「アルト…」)ロッテンベルク王国、皇太子とエヴァ姫を結婚させることを望んでいた(「王室スキャンダル騒動」)ハイデル王国、昔に姻戚関係を結び、以前はたびたび交流があったクランドル王国(現在は共和国)(「夢見る佳人」)、国王のおばが伯爵家に嫁いでいるアイルランド(「王室スキャンダル騒動」)、警察との共同捜査など、政治的な繋がりも感じさせるスイス(「4月の魚」)、国ではないが(ノイシュタット公国?)コンコルディアでのノイシュタット公主催の舞踏会へは毎年出席している(「お姫様のワルツ」)。
<経済>
- エッシェンシュタイン家は貧乏である。主な産業は牧畜、観光。地下資源にも恵まれていない(「大さわぎのウエディングマーチ」)。
- 空港はない(「もしかしたらSF」)。国外に出るときはバスを使う(「魔女の家」)。
<社会>
- 銃の所持は禁じられている(「大さわぎのウエディングマーチ」)。
<文化>
- エッシェンシュタイン家の宗教はカトリック(「大さわぎのウエディングマーチ」)、おそらく国民の多くはカトリック信者だろう。
- 週刊誌はない(「王室スキャンダル騒動」)。
- 動物園はない(「南から来たインディラ」)。美術館はある感じがする(「波瀾ぶくみのイブ」)。
- 代々伝わったものを持っていると無事に旅ができるという言い伝えがある(「魔女の家」)。
(この他に、「エッシェンシュタインこんな国」情報がありましたら、ぜひお寄せください)
まずはこんなもんだろうか。スイスに程近い山がちののどかな小国、というイメージが浮かばれるというものだが、ところで、現実にヨーロッパの地図を広げてみても、スイスの周りには(というか、世界中どこにも)エッシェンシュタインなどという国は実在しない。が、よく似た名前の、リヒテンシュタイン公国(Principality
of Liechtenstein)という国は実在する。
リヒテンシュタインとはどんな国だろう。次回はそれについて書いてみようと思うが、惜しむらくは日本には、リヒテンシュタインに関する情報が少ない。どうなることやら。
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