バッテリ研究室


1.基本知識

 ご存知の方は読み飛ばしてください。
 私がラジコンを初めた頃に疑問に思っていたことについて、思い出しながら書いてみます。

1-1.バッテリの種類(NiCDとNiMH)

 電池内部構造の違いにより、NiCD(ニッカド:ニッケル-カドミウム)NiMH(ニッケル-水素)の2種類があります。長い間NiCDが使われてきましたが、2000年からNiMHが広く出回るようになりました。NiCDには人体に有害なカドミウムが含まれており、それよりも安全で大容量が期待できるNiMHが出てきたところです。ただし、NiCDに比べNiMHは、瞬間的大電流を放出しづらいとか、熱に弱いといわれています。具体的なところは分りませんが。
 NiMHは、NiCDで主流のサンヨー製と、NiMHで巻き返しを図るパナソニック製の2メーカーが現時点では多くのシェアを握っています。
 また、両者ともリサイクル(再資源化)するように心掛けましょう。大抵のラジコンショップやサーキットには電池用の回収箱があります。

1-2.バッテリの種類(容量)

 容量は一般的なものは 1500,1700,2000,2400,3000 とあります。単位はmA/Hで、1時間当たりどれだけの電流を供給できるか、というものです。ただし、実際には個体差があって、その実数値は多少幅があります。長い間使って電池が痛んでくると数値が下がったりします。もちろん、数値が大きい方が沢山電気を貯めておくことができ、長い時間走らせることができます。ただし、同じ分、充電するのに時間が掛かります。
 3000はNiMHだけです。逆にいえば、NiMHは3000だけです。それ以外はNiCDです。

1-3.バッテリの種類(ストレートパックとバラセル)

 普通我々が手にするバッテリは、6個の電池が直列に接続され、カバーを掛けて1本にまとめられたストレートパックバッテリです。それとは別に、1個の電池を接続しない状態でバラバラに売っているものがバラセルバッテリです。電池のことを”セル”と呼びますので、それがバラバラの状態だから、”バラセル”です。1個1個の電池(セル)は良く使う乾電池の単2サイズを一回り小さくしたくらいの大きさです。
 バラセルは、自分達が1つ1つを直列に接続しなくては、ラジコンに載せて走らせることができません。手間も掛かるし、電池代以外にコネクタやカバー代も掛かりますが、1つ1つのセルを自由に組み合わせることができたり、自分で納得のいく接続ができたり、カバーを掛けたりできるので、コダワル人にとっては嬉しいものです。
 ただし、バラセルの接続の仕方で通電ロスが生じ、電池全体の性能をフルに引き出せなくなる可能性があります。最初のうちはストレートパックで十分です。

1-4.バッテリの種類(ザップ、マッチド)

 NiCDであれNiMHであれ、出荷前に高電圧を掛け、バッテリの電圧を高める処理があります。これをザップド(ZAPPED)と呼びます。電圧の話は後の項で解説します。電池メーカはZAPの効果に否定的、という話を聞いたことがありますが、世間一般的には”効果アリ”とされているようです。売られている値段も、何の処理もされていない(ノンザップ)のものよりも高目です。
 同じく、NiCDでもNiMHでも、マッチド(MATCHED)というものがあります。これは接続された6個の電池の性能が同じようになっているものです。普通、放電時間が一緒のものを選抜し組み合わせます。レースの時、全部の電池が等しく最後まで一緒に仕事をすることで、間違いなくクルマを走らせるためです。
 ただし、そういう特別なモノですから、ただ放電時間を合わせたものを組にするだけでなく、大量にある電池の中でも特に上位の優秀なものの中からマッチングを行うのが普通です。結果的に、電圧も高目のものがピックアップされるので、パンチもある、素晴らしいバッテリとなります。(電圧の話は後の項で解説します)
 マッチドのものは当然ザップドされていると思って良いです。(と思う。。違うかな?)
 ただし、ZAPの効果や、マッチドの選抜するレベルをどれ以上とするかで、良し悪しが変わってきます。信頼のあるメーカのものが良いでしょう。当たりはずれもあるものですので、経験を積むか、いろいろな人に話を聞いてください。ここのレポートも何らかの参考になるかもしれません。

1-5.電圧と抵抗(パンチ)

 まず普通の電池の使われ方を見てみましょう。バラバラの電池1つ1つの定格電圧は1.2Vです。6個接続して7.2Vとなります。実際に充電してみると、最後には9Vを超えます。その後走らせ始めると、当然電流が消費されるので電流が少なくなると同時に、バッテリの電圧も下がってきます。大体、普通は6V位まで下がったところが電池の電流も減ってきたところで、走行もダラダラとなってきます。
 さて本題ですが、スロットルをグイッと入れた時に、クルマが勢い良くダッシュすればするほど、パンチがある、と言われます。実際に走らせてみて、走り始めの頃が一番ダッシュに勢いがありますよね。徐々に勢いがなくなります。通説ではバッテリの電圧が高いほど、パンチがある、と言われます。電流を勢い良く流そうとする力が電圧です。例え一杯電流を蓄積していても、チョロチョロとしか流れようとしないのであれば、それは電圧が低いからだ、と思っておけば良いと思います。
 ただし、厳密に言えば、実は電池の”抵抗”が大いに関係します。例え電圧が高くても、抵抗値が高ければ電流は少ないはずです。パンチとは、実際のところは一度にどれだけ多くの電流を流せるか、です。電圧が高くても抵抗が大きいせいで電流が流れなければ、結局モーターは勢い良く回転しません。それについては後ほど、改めてレポートの中で解説します。

1-6.充電(充電電流)

 充電時に、"C"という単位が使われます。これはそのバッテリの容量を表していて、例えば2000mA/Hのバッテリで2Cというと4000mA/H、つまり4A/H(簡単に書けば4A)ということです。
 充電するときの充電電流値の設定で迷うことがあると思いますが、例えば3A、と決められるものではなく、2Cなのか3Cなのか、で決まる面があるそうです。(私はその理屈は分りませんが)
 普通私は、NiCDなら3C充電(1700なら5.1A、2000なら6A)、NiMHなら1.33C充電(4A)してます。そんな話をドクターTから聞いた事があるからです。(笑)  高い電流値での充電は、バッテリを早く痛める(容量が低くなる、電圧が低くなる)と言われていますが、反面、NiCDでは高電流充電は電池内部の結晶のキメを細かくでき、それが電圧を高める効果がある、というような話を聞いたことがあります。
 寿命と性能のどちらをとるか、各自で判断してください。
 ちなみに私は始めてまだ1年経ってませんが、少なくとも寿命が来た電池は1本もありません。

1-7.充電(カットオフ電圧)

 電流設定値は上の通りです。で、中級以上の充電器になるとカットオフ電圧、とかデルタピーク降下検知電圧の設定が出来るものがあります。これは充電が一杯になった後、徐々にバッテリの電圧が下がる特性がある事を利用して、充電終了の判断とするためのものです。0.05V電圧が下がったところで充電を終了するのか、0.10V下がったところなのか、というものです。
 充電時、電圧がピークに達し、電圧が降下しだしたらバッテリの温度がそれまで以上に急に暖かくなりはじめます。握っていれば分ります。電池内部は化学反応を起こしているわけですから、活発になれば暖かくなるのは当然です。なので、温度が上がらない状態で充電を終了するのは十分に充電できていないと言えるかもしれません。が、これもやはり寿命と関係してくると思うので、各自の判断で行ってください。良く言われるのは、手で握ってみて暖かくなって来たところで充電を終了が良いといわれます。体温が36℃くらいですから、40℃ちょっと位でしょうか。何回か試して、その時点で充電が終わるような値を設定すると良いでしょう。
 私はNiCDの2000のストレートパック(6セル)の場合、普通は0.12V下がったところで充電終了するように設定しています。2400なら0.06Vです。NiMHの場合は0.02Vです。バッテリの個体差もありますので自分で試して決定するようにして下さい。

カットオフ電圧の表示が1桁間違っていた部分がありました。
すいません、修正しました。

1-8.充電(充電モード)

 中級以上の充電器になると、電池のコンディションを整えるとか、元気を回復させるために、充電機によっていろいろな特別モードが用意されています。ターボフレックスとか、パワーフレックスとか、パルスなどがあります。その動きの詳しいところは知りませんが、充電電流値を刻々変化させたり、時々大きな電流で充電してみたり、少し放電を交えてみたり、、、という感じだったと思います。
 それぞれの充電器の特性により内容が変わると思いますが、私の使うTurbo35の場合、ターボフレックスをONにすると、充電後のバッテリの発熱が若干多いように思われます。いろいろ内部的刺激を与えているのかもしれません。ただし、私は、このモードはNiCDで使用していますが、熱に弱いNiMHでは使用していません。

1-8.充電(ウラワザ?)

 より強いパンチを求めて、奥の手があるそうです。
 まず、バッテリはある程度暖かい方が活性しやすいです。寒い所へ行くと、カメラの電池やウォークマンの電池が普通より早く切れることがありますが、それと似ています。
 そのため、出来れば充電終了後、暖かいうちに走り出したほうが、冷めてから走るよりパンチがあるように感じられます。
 更に奥の手として、一旦わざと冷まして、走行直前にもう一度充電してやる(追充電)という技があります。再度暖めてやるという意味と、NiCDの場合は前述した通り、電池内部の結晶を更にキメ細かくするというような意味があるそうです。特に後者の理屈について、本当かどうかは私は詳しく分りませんが。私はNiMHでも、事情により冷めてしまった場合には、暖める意味もあって追い充電することがあります。が、普通の遊びの時には面倒くさいのでNiCDでもNiMHでもそのまま走ってしまいます。
 追充電は、無茶すると電池が一杯になり壊れてしまう可能性があります。手で握りながら、過度に熱くならないように注意しましょう。パシッと破裂しないように気をつけて下さい。私は別な理由でですが、今まで2,3回バッテリを派手に破裂させたことがあります。特にNiCD電池に含まれるカドミウムは有毒なので、本当に注意してください。

1-9.使用サイクルと保管方法

 バッテリは1回使ったらできれば1週間置いておくのが良いといわれたりします。人によっては3日とかいう人もいます。同じ日に何度も使っても良いのですが、その場合、2回目以降徐々に充電容量が減って走行時間が少なくなったり、電圧も少なくなってパンチが減ったりする、と言われています。加えて、バッテリの寿命も短くなるそうです。
 走行後は、簡易な放電器で十分なので放電した方が良いと言われています。”メモリー効果”によって、残された電流が居座り取り出せなくなって、その分、次回使うときに容量が減ってしまうそうです。簡易な放電器では5V位まで落ちるまで2A程度の電流で放電してる、と聞いたことがあります。私はシンワのレーザーTWINを使用しています。走行後、そのままバッテリを繋いでスイッチON。あとは自動的に放電終了してくれます。
 ただ、これらはNiCDでの話です。NiMHはまだ歴史が浅く、決定的で全てに通用する説が決まっていないです。メモリー効果があるとかないとか、自己放電するので若干充電してから保管するとかNiCDと同じで良いとか、1日に何度も使って良いとか悪いとか、いろいろ言われてます。私はNiCDとまったく同じ方法で保管してしまってますが、これで良いのかは分りません。

1-10.ならし

 バッテリにも”ならし”があります。が、私はまだその効果を見える形で数字で確かめたことがないので断言はできませんが、そういう傾向がある事自体は認めています。新品時よりも、しばらく使ったバッテリの方がフィーリングが良いように感じます。特にNiCDで見受けられますが、NiMHではまだ確認できていません。
 バッテリは初期段階での充電、放電の仕方によって特性付けが可能だと聞いたことがあります。が、NiMHではNiCDと構造が違うため、ならしは意味がない、という話も聞いたことがあります。そうそう、マッチドバッテリではメーカで放電作業した上で販売されているので、実質的にならしが終えられているようなものだと思います。実際、マッチドバッテリは新品状態でも素晴らしいデータを示します。
 私の場合、ならしは、充電した後、放電器で20Aとか30Aで放電させることを何度か行います。放電の終了は、6セルの合計電圧が設定した電圧まで下がったところとなります。これをカットオフ電圧といい、私は通常は5.40Vと設定しています。ただし30A放電の場合は4.80Vとしています。その後は残った電流を再度10Aで放電し(数秒)、更に、簡易放電器で放電しておきます。ただそれだけです。ただ、ならしでも1日に何度もせずに、日を置いて繰り返すようにしてます。
 もしかしたら、数A程度の放電でも良いかもしれません。放電器を用いずに、単に走行させるだけでも良いのかもしれません。このあたりの考察は次章以降のレポートで触れてみたいと思います。
 また、ならしで放電する時に、放電器がさまざまな測定データを示してくれます。それを記録しておけば、その電池の特性が大体わかります。平均放電電圧とか、放電容量、内部抵抗値などが分ったりします。何ヶ月か後に、再度放電してみて、買った頃と比較することができます。製品の個体差がどれほどなのかもわかるし、メーカ毎の違いや価格との相対的価値もわかります。また、室内温度や冷却の有無、充電の仕方によってデータが変わることが分かると思います。できるだけ同じ条件で測定する方が良いです。

1-11.カツ入れ

 ならしとは別に、カツ入れ、というものもあります。ならしと同じように充電・放電を行うことです。バッテリはしばらく使っていないと”眠る”らしいです。これは性能劣化というよりも、そういう性格らしいです。その場合に、刺激を与えて”目覚め”させ、本来の働きを取り戻させることができるといいます。新品時は、流通の過程でバッテリが眠りに入っていることが多いため、ならし作業はカツ入れ作業を兼ねるのかもしれません。
 ”眠り”については、次章以降のレポートで考察してみたいです。

1-12.放電データ計測

 前記ならしの項で書いた事と同じですが、私の場合、更に放電電圧(刻々と変わる)と放電開始からの時間を記録し、バッテリの放電カーブをグラフに描いて参考にします。放電器の計測データが同じでも、実際には前半強いバッテリや、後半強いバッテリ、容量は多いけど全域に渡って電圧が低い、といった傾向がありありと浮かび上がり、良いバッテリ選び(カスをそれ以上つかまない)ができます。
 私の場合、放電電流値は大体20Aにしています。30Aで行うこともありますが、送風冷却しても放電中にバッテリ温度が70℃前後まで上がることがあるため、バッテリを痛めるような気がして頻繁には行っていません。
 また、電池単体(バラセル)での測定データは、それを単純に6倍すればストレートパックにしたもののデータになる、という訳ではありません。バッテリ同士を接続するハンダ付けテクニックや、コード、コネクタなどが付けられるため、つまり抵抗が増え、データは若干ダウンします。
 もちろん、最終的には実際に走らせてのフィーリングです。これが一番です。計測データはあくまでも参考と裏付けのためのものです。
 測定に際し注意すべきことは、室内温度や充電の仕方、冷却の有無、時間の置き方などの測定条件を、できるだけ合わせる事です。また、放電器の個体差によっても、その値が違い単純比較できません。できるだけ同一条件で測定するようにします。せっかくのデータも比較できなくては意味がありませんから。


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