ママは同級生



「あらまぁ、おむつ、本当にぐっしょり濡れちゃってるわね、茜ちゃん。可哀想に、お尻、気持ち悪かったでしょう?」
 おむつカバーの前当てと横羽根を広げると、乾いたところなどまるで見当たらないほどたっぷりおしっこを吸った布おむつがあらわになった。美也子は、茜の肌にべっとり貼り付く布おむつを一枚ずつゆっくり剥ぎ取ってから、茜の両足の足首を一つにまとめて高々と持ち上げた。そうして、お尻とおむつカバーとの間にできた僅かな隙間から、おむつカバーの上に広げたおむつを手前に引き寄せ、ポリバケツの中に放り込む。
「そのままおとなしくしているのよ。すぐにすむから」
「んん……」
 引出からバスケットへ移す時に予めきちんと重ねておいた布おむつを美也子が茜のお尻の下に敷き込むと同時に、茜の口から、どこかなまめかしくさえ聞こえる喘ぎ声が漏れ出た。今朝からこれまで、今を含めて七回もおむつを取り替えられている。そのたびに新しい布おむつで下腹部をくるまれるのだが、その柔らかな感触は、何度経験しても決して慣れることはない。弱く傷つきやすい赤ん坊の肌を痛めないよう優しい肌触りに仕立てられた布おむつの感触は、赤ん坊ではない身の茜に、想像以上の羞恥を幾度となく与えるのだった。
「まだ動いちゃ駄目よ。おむつかぶれにならないよう、薫先生からいただいたお薬を塗り塗りするからね」
 新しい布おむつを茜のお尻の下に敷き込んだ後、美也子は丸い容器の蓋を外して、中に入っている塗り薬を人差指に掬い取り、指先を茜の下腹部に押し当てた。名目はおむつかぶれの予防薬ということになっているから、太腿からお尻、内腿にかけても薬を塗りつけてゆくのだが、そのあたりでは実際のところ指の動きはおざなりだった。そうして、それとは対照的に、茜の下腹部でも特に敏感な部分の近く、今は剃り落としているものの本来なら飾り毛が生えているあたりでは、薬を掬い取った美也子の指が執拗に蠢き、それに加えて掌で丁寧にマッサージするようにして薬を塗り込んでゆく。朝、昼、夜と日に三回この薬を塗り続ければ四日めくらいには飾り毛の毛根が永遠に除去されるという強力な脱毛剤だということは無論のこと茜には知らせていない。毎晩のように紙おむつのお世話になっているため嫌々ながら自分の手で処理していた飾り毛が全く生えてこなくなったことに茜が気づくのは何日くらい先のことだろう。その時、茜はどんな顔をするのだろう。そう思うと美也子の胸の中に加虐的な悦びがふつふつと湧き上がってきて、薬を塗り込む手にますます力が入るのだった。
「さ、薬の後はぱたぱたよ。おむつをあてる前にぱたぱたしてお肌をすべすべにしましょうね」
 じっくり時間をかけて茜の下腹部に脱毛剤を塗り込んだ美也子が次に取り出したのは、ベビーパウダーの容器だった。蓋を外し、さらさらのベビーパウダーをパフに掬い取った美也子は茜の足首をますます高く差し上げ、そのまま体を海老のように丸く折り曲げさせた。そうして、まるで無防備な状態でこちらに向かって突き出すような格好になったお尻にパフを押し当て、ぽんぽんと軽くはたき続けると、見る見るうちにお尻の肌が薄化粧を施され、幼児めいた雰囲気に包まれてゆく。
「はい、今度は前の方ね。ほら、ぱたぱた」
 お尻から太股にかけて肌をベビーパウダーでうっすらと白く染め上げた美也子は、ようやくのこと茜の脚を敷布団の上に戻した。それまで無理な姿勢を取らされていた茜の口からほっとしたような溜息が漏れて、同時に唇の端からよだれの条がつっと流れ落ちた。それを美也子は、あらあらと呆れたような声をかけながらわざとおおげさな身のこなしでよだれかけを使って拭い取ってから、改めてお臍のすぐ下あたりにパフを押し当てた。パフは、茜の感じやすいところの周りを執拗に這いまわり、時おり、最も敏感な部分をねっとり絡みつくようにして責めたてた。そのたびに茜の口からは切ない喘ぎ声が漏れ、よだれが頬を濡らす。
「あら、濡れてきちゃったわね、茜ちゃんのあそこ。ひょっとしたらちっちが出そうなのかな。じゃ、いつ出ちゃってもいいように早くおむつをあててあげなきゃいけないわね。すぐすむから、それまでちっちは我慢するのよ」
 茜の恥ずかしい部分がぬるぬると濡れ始めたのは、敏感な部分を柔らかなパフに責められ遂に我慢できなくなって蜜壷から溢れ出させてしまった愛液のせいで、決しておしっこが出そうになっているからではない。けれど、茜は、からかうようにそう言う美也子の言葉を否定することはできなかった。ベビーパウダーのパフに責められて恥ずかしいおつゆを溢れ出させてしまったなどと口にできるわけがない。美也子は、屈辱にまみれてオシャブリをぎゅっと噛みしめる茜の顔を面白そうに眺めながらパフを容器に戻してから、茜の両脚を大きく左右に押し広げ、その間を通して布おむつの端をお臍のすぐ下まで持っていった。本当はまだおむつをあてずに、小児用の体温計を肛門に突き立てて茜の羞恥を更に煽って楽しみたいところなのだが、日に何度もおむつを取り替えるたびにそうしていると茜が体温計の感触に慣れてしまう恐れがあるため、今回は我慢せざるを得なかった。体温計を使っての責めについては日に三度くらいの回数に抑えておけば、肛門をガラス管に貫かれる屈辱に満ちた感触に茜が慣れることはないだろうという薫のアドバイスに従うことにしたわけだ。その代わり、検温という名目で小児用の体温計を再び茜の肛門に差し込む機会が得られた時には、その状況を思う存分楽しむつもりの美也子だった。
「これで、こうして横羽根を留めて、と。これで少しくらい体を動かしても大丈夫よ、茜ちゃん。でも、もう少しの間あんよはじっとしていてね」
 美也子は、布おむつの上におむつカバーの左右の横羽根を重ね、互いをマジックテープでしっかり留めた。こうすれば、少しくらいなら茜が体をよじったりしてもおむつがずれることはない。美也子は、横羽根で押さえた布おむつの位置を整え、よれ気味になっている箇所を丁寧に直してから、おむつカバーの前当てを横羽根に重ねて、これもマジックテープでしっかり留めた。そうして、裾からはみ出している布おむつをおむつカバーの中に親指の腹で残さず押し込み、横漏れを防ぐために二重ギャザーになっている股ぐりの乱れを整える。
「さ、できた。あとはロンパースのボタンを留めておしまいよ」
 美也子はおむつのあて具合をじっくり確認してから、お腹の上に捲り上げておいたボトムの生地を両脚の間を通してお尻の方にまわし、後ろの生地と合わせてボタンを留め始めた。その手つきは、外す時と同様ゆっくりしたもので、わざとおおげさな手振りなものだから、指が何度も何度も茜の内腿に触れる。それも、決して偶然などではなく、茜の羞恥を煽るために美也子がわざとそうしているのは言うまでもない。
「はい、いいわよ。ちゃんとおとなしくしていて、いい子だったわね、茜ちゃん」
 美也子は、十枚の布おむつでぷっくり膨れた茜のお尻をロンパースの上からぽんと叩いてから、ロンパースのスカートを引っ張って形を整えた。けれど、ドレスやワンピースのようなちゃんとしたアウターではなく、ほんのお飾りみたいな丈の短いスカートだから、どうしてもボトムの部分が完全には隠れず、三分の一ほどはスカートの下から覗いてしまう。もちろん、いつでもおむつを取り替えられるようになっていることを無言で物語る恥ずかしいボタンも丸見えだ。
「これでいつまたおもらししちゃっても大丈夫だから、安心してねんねしましょうね。ねんねの間におねしょしちゃってもすぐにママがおむつを取り替えてあげるから心配しなくていいのよ。お熱が下がるまでゆっくりおねむしようね。それで、お熱が下がったらママと一緒に思いきり遊びましょう」
 美也子は、茜が逃げ出さないようベビーベッドのサイドレールを二段目まで引き起こしてしっかり留め金をかけた。そうして、一部分だけサイドレールを一段にすると、そこからベッドの中に手を差し伸べ、茜のお腹をぽんぽんと優しく何度も叩き始める。
「ほら、天井でお人形さんが踊っているでしょう? 茜ちゃんも早くお熱が下がってあんなふうに元気に遊べるようになるといいわね。だから、ちゃんとねんねしなきゃ駄目よ。ママが子守唄を歌ってあげるから、ゆっくりおねむなさい」
 美也子はそう言って茜をあやすが、薫が体温計の目盛りを狂わせたせいで熱があるように思わされているものの実はもう殆ど平熱だから、こんな昼間から眠れるわけがない。天井でくるくる回りながらかろやかな音色で童謡のメロディーを奏でるサークルメリー。ミルクの混ざったよだれが滴り落ちたせいでほんのり甘い香りがするシーツ。まだ部屋の中に漂っているベビーパウダーの懐かしく甘ったるい匂い。窓から見える物干し場で早春の日の光を浴びてそよ揺れるおむつ。美也子が澄んだ声で歌って聴かせる子守唄――ベビーベッドに眠っているのが本当の赤ん坊なら、そのどれもが、いたって穏やかな日常のありふれた光景にすぎない。けれど、実際にその光景の中心にいるのは、赤ん坊そのままの格好を強いられているとはいえ実は高校生の茜だ。一見しただけでは穏やかに見えるその光景は、茜の羞恥をこれでもかと掻きたててやまない。
 これから先どれほど屈辱と羞恥に満ちた生活を強要されるのかと思うと、美也子にあやされればあやされるほど、茜の目はますます冴えわたってしまうのだった。






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