ママは同級生



 美也子が目で合図を送ると、弥生が歩行器の前にまわりこんで茜の脇に掌を差し入れ、そのまま抱き上げた。そうして、おむつで膨らんだお尻を左腕の肘のあたりに載せ、首筋から背中を右腕で支えるようにして横抱きに抱き直す。それから弥生は、茜の体を横抱きにしたまま廊下から脱衣場に足を踏み入れ、美也子が床に敷いておいたバスタオルのすぐそばまで歩み寄った。
「じゃ、ここでおりましょうね。最初はお帽子とよだれかけを外してお洋服を脱がせてあげから、バスタオルの上にお座りするのよ」
 弥生はそう言って脱衣場の床に膝をつき、それまで左腕の肘のあたりに載せていた茜のお尻をバスタオルの上におろしてから、茜が仰向けに倒れないよう、右手で支えていた背中をそっと前に押した。こうすると、茜は両脚を大きく広げてバスタオルの上にお尻をぺたんとつけて座る格好になる。
 髪を優しく包むボネットや胸元を覆うよだれかけという装いで、おむつのせいでぷっくり膨らんだオーバーパンツを三分の一ほど丈の短いベビードレスの裾から覗かせてそんなふうにして座り、美也子や弥生の顔をおずおずと見上げる茜の姿は、体の大きささえ気にしなければ、あいくるしい赤ん坊そのままだった。
「そのままおとなしくしててちょうだいね。すぐに終わるから、いい子にしてるのよ」
 弥生は、バスタオルの上に座らせた茜の顎の下に手を伸ばしてボネットの紐を緩めた後、体の後ろに手を伸ばしてよだれかけの紐も二本とも手早くほどき、ベビードレスの背中のファスナーをさっと引きおろした。
 そうして弥生がボネットとよだれかけに続いて、ベビードレスを上の方に引っ張るようにして脱がせると、肌着があらわになる。一見したところでは純白のコットンでできた幼児用のスリップシャツなのだが、胸元がカップになっているのが本当の幼児が身に着けるスリップシャツとは違った仕立てになっていた。まだ発育途上の固い乳房ではあるものの、ベビードレスの上からでもそれとわかるほどには膨らみがあるものだから、そのへんは幼児用の肌着と違ったデザインになるのも仕方ないところだ。が、ぱっと見はいかにも幼児用といった肌着なのに胸元だけが妙に大人びたところがアンバランスで、却って妙になまめかしく見える。
「じゃ、今度はねんねしてちょうだい。そうそう、そのままおとなしくしているのよ」
 ベビードレスに続いて肌着も脱がされて上半身を丸裸に剥かれた茜を、弥生はバスタオルの上にそっと横たわらせて、両足のソックスを脱がせた。それから、左右の足首を一つにまとめてつかみ、そのまま高々と差し上げて、オーバーパンツを脱がせる。
「さ、あとはおむつだけね。どう、気持ちいいでしょ? 窮屈なお洋服を脱がせてもらったら大抵の赤ちゃんは嬉しそうに笑うものだけど、もちろん、茜ちゃんそうよね?」
 おむつカバーだけの姿でバスタオルの上に横たわる茜の体を見おろして美也子が少し意地悪く言った。
 けれど、よだれかけやベビードレスといった赤ん坊めいた装いからは解放されたものの、殆ど丸裸に近い格好を人目にさらしているわけだから、そんなふうに決めつけられて、本当の赤ん坊のように嬉しそうな笑顔になれるわけがない。まして、最も幼児めいた衣装であるおむつを着けたままなのだから尚更だ。
「じゃ、おむつを外すわよ。ちっち、たくさん出てるかな」
 こわばった表情の茜に向かって弥生があやすように言って、おむつカバーの前当てに指をかけ、両端を持ち上げてマジックテープを剥がすと、ベリリという音が、決して広くない脱衣場に響き渡った。それから、マジックテープを剥がす音がもういちど聞こえると、おむつカバーの横羽根も外れて、布おむつが丸見えになる。歩行器に乗って座ったままの状態が続いたから、おむつのおヘソのあたりに近い部分はあまり濡れていないが、特にお尻から股間にかけて下腹部はぐっしょりなのが一目でわかる。
「あらあら、たくさん出ちゃったのね。気持ち悪かったでしょ? でも、もうすぐあったかいお風呂でお尻をきれいきれいしてあげるからね」
 弥生は、ぐっしょり濡れて茜の肌に貼り付く布おむつを一枚ずつ剥がすようにして、両脚の間に広げたおむつカバーの前当ての内側に広げ重ねた、
「さ、これでいい。あとは、お姉ちゃまがお洋服を脱ぐのを待っててね」
 茜のおむつカバーとおむつを広げ終わると、弥生はその場に立ち上がって自分の着ている物を脱ぎ始めた。頭に巻いたバンダナを外し、トレーナーを脱ぎ捨て、ブラを外してジーンズを脱ぎ、ショーツを脱衣篭に放り入れるのに、さほど時間はかからなかった。けれど、その僅かな間が、無毛の股間をなんら遮る物なく人目にさらし、自分のおしっこで濡れたおむつの上にお尻を載せ、まるで無防備な格好でバスタオルに横たわる茜には、いつ終わるともしれぬ永い永い時間のように感じられてならない。
「お待たせ、茜ちゃん。さ、お姉ちゃまと一緒にお風呂に入ろうね。ずっとおむつで濡れちゃってる茜ちゃんのあそこ、きれいきれいしようね」
 弥生にとってはあっという間の、茜にとってはじりじりするほどの時間が過ぎて、弥生が茜の体を横抱きに抱き上げた。
「いいわ、そのまま茜ちゃんをお風呂に入れてあげて。あとは私がやっておくから」
 弥生が茜を抱き上げると同時に、バスタオルの上に残ったおむつとおむつカバーに向かって美也子が手を伸ばしながら言った。
「それじゃ、お願いね、お姉ちゃん。茜ちゃんが風邪をひくといけないから、お風呂場に連れてくわね」
 濡れたおむつを入れるポリバケツを手元に引き寄せる美也子に向かって軽く頷いてから、弥生は浴室のガラス戸を開けた。

「うん、これなら熱くないわ。ほら、お風呂の前にちゃんと掛かり湯しておこうね、茜ちゃん」
 洗面器の湯の温度を指先で確認した弥生は、バスマットに膝をつき、茜のお尻を自分の太腿の上に載せ、背中を左手で支えて言うと、洗面器の湯を茜の首筋から肩、お腹へと優しくかけた。
 そうして、もういちど浴槽から湯を掬い取って、今度は、お腹から下腹部、膝のあたりにかけ、更にもういちど、最後は茜の下腹部に入念に湯をかけた。
 それから、改めて自分の体にもたっぷり掛かり湯をかけて、茜の体を横抱きに抱き直してから浴槽に身を沈めると、弥生は茜のお尻を支えていた左手をすっと離した。けれど、そのまま茜の体が浴槽に沈んでしまうことはない。三人で入るには狭い浴槽も、二人だと充分な広さがある。それに深さもあって大柄な弥生でも窮屈な感じはしないから、まるで本当の赤ん坊をお風呂に入れるのと同じように、茜の後頭部から背中にかけてを右手だけで支えて茜の体を湯に浮かべるようにして入浴させることができるのだ。
 けれど、浴槽の水面に体が浮いたかと思うと、お尻を支えていた弥生の手が急に離れたものだから、そんなこと予想もしていなかった茜にしてみればたまったものではない。慌てふためいて茜は手足をばたつかせ、思わず弥生の首筋にぎゅっとしがみついてしまう。
「あらあら、甘えん坊さんだこと。でも、そんなにお姉ちゃまになついてくれるなんて、本当に茜ちゃんは可愛い子ね」
 茜の慌てように逆に少しばかり驚きながらも、自分の首筋にしがみつく茜が浴槽に顔をつけてお湯を飲んでしまわないよう弥生は乳房のすぐ下あたりまでを湯面の上に出して茜の頭を優しく撫で、悪戯っぽい笑みを浮かべると、声をひそめて言った。
「茜ちゃん、ママのおっぱいが大好きなんだよね? お姉ちゃま、茜ちゃんが美也子ママのおっぱいを吸ってる写真見せてもらったから知ってるんだよ。……それで、それでね、茜ちゃん、お姉ちゃまのおっぱいも吸ってみない?」
 最後の方は幾らか躊躇いがちに、けれど満更でもさなそうに顔を輝かせて弥生は茜の耳元に囁きかけた。
 成り行きだったとはいえ、熱に浮かされつつ美也子の乳首を口にふくんだのは事実だ。決して否定することはできない。その時の写真を見られたと知った茜は、羞恥のあまり、弥生と目を合わせまいとしてますます強く弥生の首筋にしがみつき、顔を伏せてしまう。



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