わが故郷は漆黒の闇


【十七】


「やめようよ、カタン。ねえ、こんな馬鹿げたことはもうやめようよ、ボビンてば」
 カタンとボビンの手ですっかり準備の整った布おむつとおむつカバーから目をそむけて、ユリは懇願するように声を震わせた。
「よかったわね、ユリちゃん。カタンお姉ちゃんとボビンお姉ちゃんにおむつの用意をしてもらえて嬉しいよね」
 ユリの胸の内なんてまるで知らぬげに、ケイトはわざとのような明るい声で言って、あやすみたいにユリの体を何度か揺すると、カタンとボビンが準備したおむつに向かってゆっくり足を踏み出した。
「や、やめてください。お願いだから、ケイト保護官。お願いだから……おむつなんて嫌なんだから」
 ユリはケイトの腕の中で、幼児がいやいやをするように力なく首を振った。
「あらあら、何度言ったらわかるのかしら。ケイト保護官じゃなくて、ケイト先生よ。本当にユリちゃんは何度も教えてあげなきゃいけない困った子なんだから。うふふ、でも、そんな手のかかる子だから、おむつがお似合いなのよね」
 ケイトはわざと優しい声で言って、すっと腰をかがめた。
「いや、おむつなんて嫌。私、赤ちゃんじゃありません。赤ちゃんじゃないから、おむつなんて嫌なの」
 布おむつを広げた床におろされまいとしてユリは思わずユリの胸にしがみついた。
「ふぅん、赤ちゃんじゃないのに甘えん坊さんなのね、ユリちゃんは。でも、先生の胸にしがみついても、おっぱいは出ないわよ」
 ケイトはくすっと笑って尚も腰をかがめた。
「あ……」
 ケイトが更に腰をかがめ、床に膝をついてユリの体をそっとおろした途端、ユリの口から、悲鳴とも呻き声ともつかない吐息が漏れ出た。お尻が布おむつに触れ、その想像以上に柔らかな感触に羞恥を掻きたてられて思わず喘ぎ声をあげてしまったのだ。
「……いや!」
 お尻を布おむつの上に載せる姿勢で床におろされたユリは、ぶるっと体を震わせて両手を床に突っ張った。
「駄目よ、ユリちゃん。すぐにすむから、少しの間だけおとなしくしてなきゃ」
 ケイトはあやすように言って、再びカタンとボビンに目配せをした。
「そうよ、ユリちゃん。ケイト先生の言いつけを守っていい子にしていようね」
 ケイトがユリの体をそっと床におろす様子を見守っていたカタンとボビンが、ケイトの目配せを受けて、床に体をつけまいとして力いっぱい突っ張っているユリの両腕を絡め取って体の両側に開かせた。
「な、何するのよ、カタンてば。ちょっと、そんなことやめてよ、ボビン」
 両腕を二人に絡め取られ体を支える術をなくしたユリは、とうとう上半身も床の上に倒してしまい、かろうじて自由になる首を力なく振ってカタンとボビンの顔を見上げた。もちろん、そうしている間も、下半身からは布おろつの羞恥に満ちた柔らかな肌触りが、これでもかといわんばかりにじんじん伝わってくる。
「そうよ、ユリちゃんが暴れないよう、そのままにしていてね」
 ユリの両腕を押さえつける二人に向かって、ケイトはにこやかな笑顔で言った。
「は〜い、ケイト先生」
 二人はわざとらしく本当の幼稚園児みたいな声で返事をして、互いに、くすくす笑いながら顔を見合わせた。
「本当にカタンちゃんとボビンちゃんはいい子だわ。ユリちゃんも二人のお姉ちゃんを見習っていい子にしましょうね」
 ユリが暴れ出さないよう押さえつけるのは二人にまかせて、ケイトは膝立ちのまま、ユリの両脚の間に場所を変えた。
「やだってば。やめてください、ケイト保護官。お願いだから、そんなことしないで」
 ユリは後頭部を床にこすりつけんばかりに激しく首を振った。
「ほら、また、ケイト保護官だなんて。本当の年少さんだってこんなに何度も教えなくてもちゃんと憶えるのに」
 ケイトはわざと呆れたように言って、ユリの両方の足首をまとめて左手でつかむと、そのまま高々と差し上げた。
「やだ、やだってば……」
 ケイトの手で足首を高く差し上げられ、体を海老みたいに曲げながら、ユリは更に激しくかぶりを振る。けれど、両腕をカタンとボビンに押さえつけられ、両脚も自由にならない姿勢では、もうケイトのなすがままだ。
「カタンちゃんとボビンちゃんもよく見ておいてね。あなたたちも保護官だった時は小さな子供のお世話でおむつを取り替えてあげたこともあるでしょうから経験はあると思うけど、念のために、今から私がユリちゃんにおむつをあててあげる様子をよく見て憶えておくのよ。私が手を離せない時は二人にユリちゃんのおむつを取り替えてもらうことになるんだから」
 ケイトはそう言って、ユリのお尻の下に重なって敷いてある布おむつの端を右手で持ち上げ、そのまま、ユリの両脚の間にゆっくり通した。
「ん……」
 スペースジャケットの下に穿いていたパンツなんてまるで比べ物にならない柔らかな肌触りの布地に両脚の内腿をそっと撫でられるような感触があって、ユリは思わず喘ぎ声を漏らしてしまう。
「ね、おむつはとっても柔らかでしょう? 柔らかでふかふかで、体がとけちゃいそうでしょう?」
 布おむつの柔らかな肌触りに羞恥心をくすぐられて目の下をぽっと染めるユリにケイトが甘い声で囁きかけて、ユリの両脚の間を通した布おむつの端をおヘソのすぐ下のあたりに置いた。そうすると、お尻から股間、下腹部にかけて、ユリの下半身はふかふかの布おむつにすっかり包み込まれてしまう。
「まだ動いちゃ駄目よ。すぐだから、もう少しだけ我慢していてね」
 布おむつでユリの下腹部を覆い隠したケイトは、ユリの足首をそっと床の上に戻してから、おむつカバーの左右の横羽根を持ち上げた。
「これで押さえちゃえばおむつがずれにくくなるから、それまでおとなしくしているのよ」
 ケイトは、左右の手で持ち上げた横羽根を布おむつの端に合わせて重ね合わせ、マジックテープでしっかり留めた。




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