わが故郷は漆黒の闇


【二七】


「お、おしっこなら、ちゃんと言えます。おしっこが出そうなのも、ちゃんとわかります。わかるからトイレへ行きたいって言ったんです。だから、おむつを外してください。お願いだから」
 おむつを外してもらえそうにないということにようやく気がついて、ユリは弱々しく首を振って懇願した。
「そうね、ちゃんとおしっこを言えるわね、ユリちゃんは。でも、今ちゃんと言えても駄目なの。ユリちゃんはこれからおむつっ子になるのよ。いつもおむつをあてていて、気がつくとおむつをおしっこで濡らしちゃう、本当の小っちゃな子になるの。その方が地球に潜入しやすいからね。それで、地球に着いて、新しいパパとママにトイレトレーニングをしてもらって、またもう一度ちゃんとおしっこを言えるようになったら、その時はトイレでおしっこをすればいいわ。でも、今からは、おむつを外すためのトイレトレーニングじゃなくって、おむつに慣れるためのおむつトレーニングが始まるのよ。だから、トイレに連れて来てあげたの。もう二度と座ることのない便座の座り心地を最後にもう一度だけ経験させてあげるためにね」
 ケイトは、教え諭すような口調でゆっくりとユリに言った。
「そ、そんな……」
「言った筈よ。このおむつカバーに使っている電磁マジックテープは或る程度の水分を感知すると外れるようになっているって。つまり、ユリちゃんがおしっこでおむつを濡らさない限り、絶対に外れないのよ」
「で、でも、フィールドキャンセラーを使えば……」
 ユリはおそるおそる言った。
「駄目よ。フィールドキャンセラーは、新しいおむつを用意するためにマジックテープを外さなきゃいけない時とか、お洗濯の後に干すのにマジックテープを外さなきゃいけない時とか以外は使わないことにしているの。だから、このおむつは、ユリちゃんがおしっこをするまでは絶対に外れないのよ」
 ケイトはユリの下腹部を包み込むおむつカバーを掌でぽんぽんと叩いて言った。そうして、不意に意味ありげな微笑みを浮かべると、ボビンのショーツにそうしたように、ユリの感じやすい部分をいたぶるみたいに、右手の中指をおむつカバーの上に突き立てて、ぐっと押した。
「な……」
 思いもかけないケイトの行動に、ユリの顔がぱっと赤く染まる。
 それに対して、ケイトは平然とした様子で右手を蠢かせ、笑みを浮かべたまま言った。
「いくら言葉でおむつに慣れなさいって言われても難しいわよね。これまでちゃんとトイレでおしっこをしてきたのに、急におむつにしなさいって言われても、なかなかできるものじゃないわよね。だから、急にじゃなくって、少しずつ慣れていけばいいわ。ユリちゃんを便座に座らせてあげたのには、そういう意味もあるのよ。いつもおしっこをするのと同じように便座に座れば、慣れないおむつの中にでも少しはおしっこしやすいかなと思ってね」
 そこまで言ってケイトは中指を動かすのをやめた。
 思わずユリが安堵の溜息を漏らす。
 と、その隙を待っていたみたいにケイトの右手が再び動いた。中指を鈎みたいな形に曲げ、ユリの秘部を、おむつカバーの上からくいっとまさぐる。
「あ……」
 緊張が解けて幾らか油断していたところへの仕打ちだから堪らない。ユリの口から漏れ出たのは、悲鳴というよりは喘ぎ声といった方が近い、ひどくなまめかしい声だった。『ねんしょうぐみ・ユリ』と書いた名札を胸元に付けた幼稚園を制服を着て、おむつでお尻を大きく膨らませた姿からはとてもではないが想像もできない、ひどく大人びた、ひどく淫靡な呻き声だった。
「それに、ほら、こうすれば下半身の力が抜けておしっこがしやすくなるでしょう? ボビンちゃんの時はパンツがおしっこで濡れていないかどうか調べてあげただけだったんだけど、ユリちゃんには、おしっこが出やすくしてあげるわね」
「い、嫌です! おしっこなんて、おしっこなんて、したくありません!」
 逃げ場のない便座の上、それでも少しでもケイトの手から離れようとして両脚を突っ張ってユリはかぶりを振った。
「あら、おかしいわね。あんなにトイレへ行きたがっていたのは誰だったっけ。おしっこがしたいからトイレへ行くって喚いていたのは誰だったのかしら」
 くすくす笑って、ケイトはなおいっそう強く中指をおむつカバーの上に突き立てた。
「やだ、そんなことしちゃやだってば……お、おしっこはしたいけど、ちゃんとトイレでしたいんです……お、おむつの中なんかじゃありません……」
 ユリは涙目で訴えた。
「でも、おむつに慣れてもらわないといけないからね、ユリちゃんには」
 ケイトはユリの敏感な部分をおむつカバーの上から何度も優しくいたぶり続けた。ケイトの指の動きに合わせて、柔らかな布おむつがユリの秘部を撫でさする。




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