第1回(1月14日)ボルドー、南西部

1.ボルドー地方のブドウ品種とAOC
 フランス南西部ジロンド県ほぼ全域がいわゆるボルドー地方である。様々なタイプのワインが作られているが、ブドウ品種は以下のものが用いられる。

 赤:Cabernet Sauvignon、Cabernet Franc
   Merlot、Petit Verdot
   他にMalbec等が認められているが、殆ど使われていない。
 白:Semillon、Sauvignon Blanc
   Muscadelle

 独自のAOCを持つ地区がいくつかあるが、特定の名称を持たない地域や、規定に合わないワインはBordeauxなどのAOCとして売られる。この地方では、ワイン醸造場と周囲のブドウ畑全体をシャトー Chateauと呼ぶことが多い。
 以下に主な地区と代表的なAOCを挙げる。

1)Medoc(メドック)地区
 ボルドー市の北西側、ジロンド川左岸一帯。赤ワインのみが独自のAOCを持つ。北半分はMedoc、品質が勝る南半分がHaut Medoc (オー・メドック)となり、後者の一部は以下のように村の名前を付けた独自のAOCを持つ。

 Saint-Estephe、Pauillac、Saint-Julien、Margaux、Listrac、Moulis

 メドックのワインは比較的カベルネ・ソーヴィニョンが多く力強いが、品種構成やシャトーの場所によって様々なタイプがある。
 1855年に上級シャトーの格付けがなされ、1〜5級に分かれている。格付けに漏れたシャトーで一定の基準を満たしたものは Cru Bourgeois (クリュ・ブルジョワ)と表示される。格付けはオー・メドックのみであるが、クリュ・ブルジョワは全域にある。

2)Graves(グラーヴ)地区
 ボルドー市の南側、ガロンヌ川の左岸一帯。10年程前までは全域がGravesのAOCであったが、北部の優良産地はPessac-Leognan (ペサック・レオニャン)という独自のAOCを持つようになった。何れも赤・白両方のワインを産する。
 赤ワインはメドックに比べて軽めのものが多いが、北部の優良なものはレベルが高い。また北部はボルドー地方で最高の辛口白ワインの産地でもある。南部は比較的白の比率が高く、一部では甘口も作られる。
 グラーヴ地区の格付けは、かつては1855年のメドックの格付けに紛れ込んだ1級のCh. Haut-Brion赤だけであったが、1950年代に格付けが行われた。格付けは全てペサック・レオニャンにあるシャトーで、級別はないが、Ch. Haut-Brionだけは別格の扱いを受けている。

3)Sauternais(ソーテルネ)地区
 グラーヴ地区南部の川沿い。高名な貴腐ワインの産地、Sauternesはソーテルヌ村及び周辺の4つの村で作られる。このうちBarsac村だけはBarsac AOCとすることもできる。貴腐ワインとは、ブドウにBotytis cinereaというカビが生えて丁度良い条件になったときに、ブドウの水分が失われて得られた糖度の高い果汁を醸造した濃厚な甘口ワインのことである。
 ソーテルヌでも1855年にメドックと同時に格付けがなされたが、1級と2級に分かれ、Ch. d'Yquemだけは特1級とされている。
 Sauternes AOCの隣のCerons、対岸のLoupiac、Cadillac、1ere Cotes de Bordeaux、Sainte-Croix-du-Mont等のAOCにも甘口白ワインがあるが、ソーテルヌほどのコクはないし、価格も比較的安い。これらの地区に格付けはない。日本にはそれほど多くは輸入されていないようである。

4)Entre−Deux−Mers(アントル・ドゥー・メール)地区
 ジロンド川の支流のガロンヌ川とドルドーニュ川を海に見立て、2つの海の間という名前を付けてある地区。比較的平凡なワインの産地であるが、白は独自のAOCであるEntre-Deux-Mers を名乗る。赤はBordeauxなどである。この地区に格付けはないし、格付けされるべきレベルのシャトーもほとんどない。

5)Blayais(ブライエ)地区
 オー・メドックの対岸。赤ワインが多い。この地区にも格付けはない。

6)Pomerol(ポムロール)周辺
 メルロー種中心の高品質の赤ワイン産地であるポムロールと、その隣でやや質的に劣るLalande-de-Pomerolが有名。また、西隣のFronsacとCanon Fronsacも赤ワインの産地として知られる。何れもAOCは赤ワインのみである。
 何れの地区にも格付けはないが、ポムロールには良質かつ高価なワインを産するシャトーも少なくない。

7)Saint−Emilion(サンテミリオン)地区
 ここも比較的メルローが多く栽培されている赤ワインのみのAOCである。上級品は特級のSt-Emilion Gd Cru AOCとなり、更に上級品は格付けが表示される。格付けは第1格付特級1er Gd Cru Classe(A、Bの区別がある)と格付特級Gd Cru Classeに分かれる。上級シャトーが集中するサンテミリオンの町周辺の産地はCotes (コート)とGraves (グラーヴ)の2地区に分かれ、前者は力強く、後者は繊細であるといわれる。
 また、周辺にLussac St-Emilion、Montagne St-Emilionなどの村の名前を付けたAOCがあるが、より安価なワインである。

2.ボルドー地方のシャトー格付け
 ボルドー地方で地元の原料で生産されるワインは殆どAOCであるが、この中にも10フラン強で売られるものから1万フランに達するものまである。この目安としてシャトーを格付けしている地区がいくつかあるが、その方法はまちまちである。以下に独断で4段階に分け、上述の各地区の番号別に記述する。

最高格付シャトー
 1)メドック:1級(4シャトー)
 2)グラーヴ:Ch. Haut Brion
 3)ソーテルヌ:特1級(Ch. d'Yquem)
 6)ポムロール:格付けはないが、Ch. Petrusが同格。最近ではCh. Le Pinを同格あるいはそれ以上の評価にする人もいるが、評価は分かれる。
 7)サンテミリオン:第1格付特級A(2シャトー)

格付シャトー
 1)メドック:2〜5級
 2)グラーヴ:格付
 3)ソーテルヌ:1〜2級
 6)ポムロール:格付けはないが、これに相当するシャトーはかなりある。
 7)サンテミリオン:第1格付特級B、格付特級(格付の実力があるシャトーからブルジョワ相当程度のシャトーまである)

クリュ・ブルジョワ相当
 1)メドック:クリュ・ブルジョワ
 2)グラーヴ:格付けはないが、これに相当するシャトーはかなりある。
 3)ソーテルヌ:同上。
 6)ポムロール:同上。
 7)サンテミリオン:格付特級、特級

その他
 1)〜7)上記以外の一般シャトー

3.ボルドー以外の南西部のワイン
 ボルドー地方の東側及び南側にもワイン産地が広がっている。これらのワインは日本へは多くは輸入されていないようであるが、以下に比較的よく見掛けるAOCを挙げる。

1)Bergerac(ベルジュラック)地区
 ボルドーの南東側。Cotes de Duras(赤、白)、Monbazillac(甘口白)、Buzet(赤、白、ロゼ)などのAOCがある。赤、白、ロゼ、甘口ともに、軽めの(安価な)ボルドーに似たタイプのワインが多い。

2)Gaillac(ガイヤック)地区
 更に南東。GaillacAOC(赤、白、ロゼ)など。発泡性ワインも知られているが、軽快な赤ワインもある。

3)Cahors(カオール)
 1)の東、2)の北。赤ワインのみのAOC。TannatやMalbec種を使った赤ワインは独特のコクで名高い。比較的安価なものから、ボルドーの格付シャトーに近い価格のものまである。公式な格付けはないが、上級ワインの生産者がLes Seigneurs Cahorsという組織を作って、特別な瓶とマークを使用している。

4)Pyrenees(ピレネー)地区
 ボルドーの南側、スペイン国境バスク地方の辺りにまでワイン産地が広がっている。Tannat種を中心にした赤のMadiranや、甘口白のJuranconが有名。

4.南西部のオー・ド・ヴィー
 Eau de vie de vin(グレープ・ブランデー)の2大産地はいずれもフランス南西部にある。以下に両産地について簡単に記す。

1)Cognac(コニャック)
 コニャックというとブランデーの代名詞のように使われた時代もあったが、ボルドーの北側、ジロンド川の対岸のシャラント県周辺のコニャック地方でAOCの規定に従って作られたものだけがCognacである。コニャックの産地は以下の地区に分かれる。

 Grande Champagne
 Peteite Champagne
 Borderies
 Fins Bois
 Bons Bois
 Bois Ordinaires

 概ねこの順に良質であるが、それぞれに特徴があるので単純に決めることはできない。Grandeを半分以上、残りをPetiteとしたものはFine Champagneと表示できる。また、熟成年数によって☆☆☆、VO、VSOP、Napoleon、XOなどの表示がなされる。最低熟成年数の規定はあるが、実際にはメーカーによって大きく異なるので単純に比較することはできない。

2)Armagnac(アルマニャック)
 ボルドーの南側、ガイヤックとピレネーの間にある。コニャックとは蒸留方法が若干異なるし、熟成に用いる樽材もコニャックとは異なるため、味わいの違いが生じる。Bas Armagnac地区がもっとも良質のアルマニャックを産する。

ワインリスト

1)Bordeaux 1996 白:Chevalier de Reysson
  Cepage:Semillon, Sauvignon Blanc
  約 1,300円

2)Chateau de Fieuzal 1993 白 (Pessac-Leognan)
  Cepage:40% Semillon, 60% Sauvignon Blanc
  約1万円

3)Montbazillac:Cordier
  Cepage:Semillon, Sauvignon Blanc, Muscadelle
  約2千円

4)Chateau de Viella 1995 (Madiran)
  Cepage:Tannat, Cabernets etc.
  約2千円

5)Chateau Pavie 1994 (St-Emilion 1er Gd Cru Classe)
  Cepage:55% Merlot, 25% Cabernet Franc, 20% Cabernet Sauvignon
  約7千円

6)Pavillon Rouge du Chateau Margaux 1994 (Margaux, Chateau Margauxのセカンドワイン)
  Cepage:75% Cabernet Sauvignon, 20% Merlot, 5% Cabernet Franc
  約8千円

フロマージュ

1)Brie de Meaux AOC
2)Roquefort AOC



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