第5回(3月11日)ロアール、南仏他

1.ロアール渓谷 Val de Loire

1)ロアールとは
 ロアール川はフランスで最も長い川で、コート・デュ・ローヌの中部の少し西から発し、大西洋岸まで流れている。上流のロアール県にもワイン産地はあるが(トロワグロで有名なローアンヌ周辺のガメー種による赤ワイン)、通常いわれるワイン産地としてのロアール地方とは、河口近くから中流のサンセール辺りまでである。河口から中流までとはいってもその距離は 500 km 近くに及び、以下に述べるように、それぞれの地区でブドウ品種やワインのタイプが大きく異なるので他の地方のように、すべてが同一のワイン産地とは言い難いところがある。

2)ペイ・ナンテ地区 Pays Nantais
 ロアール河口近くからナント市周辺までの地域にミュスカデ Muscadet 種とグロ・プラン Gros Plant 種が植えられている。前者からはAOC、後者からはVDQSの白ワインがつくられる。

・AOC  Muscadet
 Muscadet des Coteaux de la Loire
 Muscadet de Sevre et Maine
・VDQS Gros Plant (du Pays Nantais)

3)アンジュ・ソーミュール地区 Anjou Saumur
 アンジェ Angers 市周辺。殆どあらゆる種類のワインをつくっている。

・赤(カベルネ・フラン等)
 Anjou、Saumur、Saumur Champigny等
・ロゼ(カベルネ、ガメー、グロロー、ピノー・ドーニス等)
 Rose d'Anjou、Cabernet d'Anjou(やや甘口)
 Rose de Loire(辛口)
・辛口白(シュナン・ブラン)
 Anjou、Saumur等
・甘口白(シュナン・ブラン)
 Coteaux du Layon、Coteaux de l'Aubance、Quarts de Chaume、Bonnezeaux
・発泡性(シュナン・ブラン等)
 Cremant de Loire、Saumur 等も可

4)トゥーレーヌ地区 Touraine
 トゥール Tours 市周辺。ここもアンジュ・ソーミュール地区と同様様々なワインがあるが、一部品種が異なっている。

・赤(カベルネ、一部ガメー等)
 Touraine、Chinon、Bourgueil、Saint Nicolas de Bourgueil等
・ロゼ(カベルネ、ガメー、ピノー・ドーニス等)
 赤ワイン産地で一部つくっているが、アンジュと異なり辛口である。
・白(シュナン・ブラン、ソーヴィニョン・ブラン等)
 Vouvray、Montlouis:シュナン・ブラン種による辛口、やや甘口、極甘口、発泡性ワイン
 Touraine:ソーヴィニョン等による辛口が主。

5)サントル地区 Centre
 ブルゴーニュ地方との境界近く。主にソーヴィニョン・ブランによる辛口白と、ピノ・ノワールによる赤、ロゼを少量つくる。

・白、赤、ロゼ:Sancerre、Menetou Salon
・白のみ:Pouilly Fume、Pouilly sur Loire、Quincy等

2.ジュラ、サヴォワ

 ブルゴーニュの東側、スイスの国境近くのワイン産地である。

1)ジュラ Jura
 ブルゴーニュ同様にピノ・ノアールやシャルドネが栽培されるが、この地方独自の品種として、Trousseau、Poulsard(赤)、Savagnin(白)がある。
 この地方独特のワインとして、Vin Jauneと Vin de Pailleがある。前者は完熟したブドウを陰干しにして更に糖度を高めた極甘口ワイン、後者はサヴァニャン種の辛口白ワインを長期間樽で貯蔵し、酸化させたシェリーに似たワインである。
 ArboisなどのAOCでは、赤、ロゼ、白、ヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユ、発泡性などあらゆる種類のワインがつくられる。Chateau Chalon シャトー・シャロンはヴァン・ジョーヌの銘産地。

2)サヴォワ Savoie
 Vin de Savoie、Roussette de Savoie等のAOCで、様々な品種を使った赤、白、ロゼワインをつくっているが、日本では、あるいはパリなどでもあまり見掛けない。

3.プロヴァンス Provence

 マルセイユからニースまでの海岸沿い、いわゆるコート・ダジュールの辺りがプロヴァンスのワイン産地である。ロゼワインが有名であるが、赤ワイン、白ワインの品質向上も著しい。主なAOCは、Cotes de Provence、Coteaux d'Aix en Provence、Cassis、Bandol等。ブドウ品種は Sylah、Carignan、Grenache、Cinsault、Mourvedre(赤)、Clairete、Ugni Blanc等である。

4.ラングドック・ルーション Languedoc Roussillon

 ローヌ川の河口近くからモンペリエ周辺一帯がラングドック、スペインとの国境近くの海岸沿いがルーションである。ブドウ品種はプロヴァンスで述べたものの他にも様々なものが用いられる。近年品質の向上が著しく、安いボルドーよりも品質・価格ともに上回るのが当たり前のようになりつつある。
 以下に主なAOCを挙げる。

・コスティエール・ド・ニム(赤、白、ロゼ)
・コトー・デュ・ラングドック Coteaux du Languedoc (赤、ロゼ、(白))
 通常は赤、ロゼであるが、特定の地区名を付けたものでは白もある。
・コート・デュ・ルーション(・ヴィラージュ)Cotes du Roussillon(-Village)(赤、白、ロゼ)
・フォージェール Faugeres、サン・シニアン St-Chinian (赤、ロゼ)
・コルビエール Corbieres、ミネルヴォア Minervois (赤、白、ロゼ)
・フィトゥー Fitou (赤)
・ブランケット・ド・リムー Blanquette de Limoux (発泡性白)
・ミュスカ・ド・リヴザルト Muscat de Rivesaltes (VDN)
・バニュルス(・グラン・クリュー) Banyuls (Grand Cru) (VDN)

5.コルス(コルシカ)島 Corse

 ナポレオンの生地であるコルシカ島は歴史的に見ても完全にフランスの一部とは言えず、今日でも独立運動が収まっていない。地名もイタリア語的な地名が多いが、ブドウ品種もフランスのものとイタリアのものが混在している。
 AOCはヴァン・ド・コルス Vin de Corse 等いくつかある。

ワインリスト

1)Muscadet de Sevre et Maine sur lie Chateau du Coing de St Fiacre 1989
  Cepage:Muscadet 新樽発酵  約5千円

2)Chateau Rouquette sur Mer 1996 Coteaux du Languedoc La Clape
Cepage:Bourboulenc  レストラン用、約2千円

3)Sancerre Les Crilles 1993
Domaine Gitton Pere et Fils
Cepage:Sauvignon Blanc   レストラン用、約 2,500 円

4)Coteaux du Layon 1996
Chateau de Beaulieu
Cepage:Chenin Blanc  約3千円

5)Cote de Provence Rose
Crus et Domaine de France
Cepage:Syrah他  約 1,800 円

6)Rose d'Anjou 1996
Les Caves de La Loire-Brissac
Cepage:Grolleau 、Pineau d'Aunis他  約千円

7)Chinon 1996 Domaine de la Chapelle
Cepage:Cabernet Franc  約 2,300 円

8)Corbieres (コルビエール) 1994 Chateau les Ollieux
Cepage:Carignan 、Grenache、Cinsault他
  約2千円

フロマージュ

1)カマンベール Camembert fabrique en Normandie
 ノルマンディー地方産のカマンベールであるが、AOCの規定には合致していないもの。殺菌乳でつくったより軽い味わい。

2)クロッタン・ド・シャヴィニョール Crottin de Chavignol AOC
 フランス中央部の山羊乳から出来るやや固めのチーズ。

3)フルム・ダンベール Fourme d'Ambert AOC
 オーベルニュ地方の塩味の強くない青カビタイプ



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