化け猫情報処理論文集 上級シスアド準備論文



 これは私が初めて書いた準備論文である。問題文は特に想定しておらず、システムを更新するだけでなく、それに合わせて業務を見直し、改善したという趣旨である。実際にはほとんど改善されていないのであったが・・・。(=^^=;;


標題:システム更新時期に合わせた業務の見直し
(平成12年9月執筆)

(設問ア)

1.業務と情報システムの概要
 私の勤務する会社は大手酒類メーカーの100%子会
社で、従業員数は約30名である。私は総務部門の係長
で、情報システムの企画・運用の責任者であるが、小さ
い会社ゆえ、販売部門も兼務している。販売部門では、
親会社の生産する酒類をグループ企業の社員およびOB、
取引先企業の社員等に販売しているが、私自身は定常的
な担当や販売ノルマは持たず、繁忙期に他の社員が担当
する業務を手伝うことが主体となっている。数年前には
自ら販売の企画を立てて実行した経験も数回ある。
 近年の厳しい経済状況下において、親会社のキャッシ
ュフローの問題から、過剰な在庫を特別価格で多量にか
つ迅速に販売する必要に迫られている。また、販売量を
増やすためには、顧客の細かい注文にも対応しなければ
ならず、業務量が増加している。
 当社には以前からパッケージソフトを利用した販売管  400
理システムが導入されており、販売担当者が記入した伝
票にしたがって入力を行い、納品・請求書の発行や、配
送伝票の印字を行っている。また、月間・年間の部門別
売上額・諸経費等の帳票出力や、画面による当月売上額
速報の閲覧なども可能である。データはサーバに格納さ
れており、2台の端末でデータの入出力ができるように
LANが構築されている。これ以外にスタンドアロンの
パソコンが約10台あるが、ワープロや表計算程度しか
利用されておらず、販売管理システムとのデータのやり
取りはほとんど行われていなかった。また、親会社との
データ受け渡しもフロッピーディスクを送ったり、出力
帳票を見て再入力する作業もあって、非常に効率が悪か
った。
 販売管理システムは約10年前に導入したCUI環境
のものであり、西暦2000年問題への対応もあって、
新しいシステムに更新することになった。        800

(設問イ、ウ)
2.システム更新に合わせた業務改善
2.1.システム更新前の問題業務の洗い出し
 私はシステム更新を単に2000年問題対応にとどめ
ず、これを機会に業務全般を見直し、効率化しようと考
え、以下のように非効率な業務や、問題を生ずる恐れの
ある手順等をピックアップした。
1)親会社社員データの再入力
 親会社の社員が顧客の場合、社員コードの数字に当社
の識別用の桁を加えて顧客コードとし、顧客マスターに
登録しているが、親会社のシステムで出力した帳票と人
事異動通報を突き合わせ、手作業で顧客マスターをメン
テナンスしていた。
2)EUCデータを利用せず再入力
 顧客が取引先企業の社員等の場合、社員コードマスタ
ーを入手できないので、当社で独自に顧客マスターに登
録することになる。販売担当者は申込み状況を随時表計  400
算ソフトに入力して集計することが多いが、そのデータ
をシステムに渡すことは行われておらず、ファクシミリ
で受信した受注表を元に伝票入力を行っていた。
3)手作業の発注と請求のチェック体制不備
 親会社への発注作業は、販売担当者が製品の所要量を
集計した上で所定の発注伝票に記入し、親会社の物流セ
ンターへファクシミリで送信していた。この伝票は当社
システムに入力後ファイルされるが、後日親会社から送
られて来る納品書・請求書と突き合わせる作業は行われ
ていなかった。
4)親会社の給与天引きデータの手作業による作成
 親会社の社員が製品を購入した場合、毎月社員ごとの
購入金額の一覧表を作成し、親会社の人事部に提出する
ことになっている。親会社からの指示で数年前からグル
ープで共通の表計算ソフトに社員コードと金額を入力し
たものをフロッピーディスクで提出することになってい  800
るが、このデータは親会社社員への売上伝票一覧の帳票
を出力し、手作業で集計して作成していた。
5)システムのセキュリティ管理
 サーバのデータベースのバックアップ作業は毎週末に
入力担当者が行うことになっていたが、磁気テープを用
いたバックアップ作業が煩雑で時間が掛かるため、実際
には月に2回程度しか行われていなかった。幸いにもシ
ステムに重大な障害が生じる事故は起きなかったので、
特に問題にはなっていなかった。
 また、端末からのアクセスにはパスワードなどは必要
なく、サーバが動いている限りは誰でもデータを閲覧お
よび書き換えできるようになっていた。実際には部外者
の出入りはほとんどなく、端末の操作方法を知る社員も
限られるので、データが漏洩したり、改変されることは
なかった。
2.2.業務の改善と新システムの設計          1200
 新システムは従来使用していたパッケージソフトの最
新版をベースに、当社で必要な機能をベンダに依頼して
開発する方式ですすめた。サーバ1台と端末2台の体制
に変更はないが、高速・大容量の新型機種に更新した。
さらに、当社のEUCの見直しも含め、業務を以下のよ
うに改善した。
a)表計算ソフトからのデータ移植
 2.1.1)の問題を解決するため、親会社の社員コードを
表計算ファイルで入手できるようにした。当社社長は親
会社の役員でもあり、親会社のグループウェア端末を支
給されているので、親会社の情報システム部の許可を受
けて、社員コード一覧表を人事異動のたびにダウンロー
ドできるようにした。これをパソコンの表計算ソフトの
マクロ機能で処理し、当社所定のコード表にして、テキ
ストファイルを作成し、そのまま新システムの顧客マス
ターを更新できるようにした。            1600
 2)の問題を解決するため、受注の集計の様式を標準化
し、表計算ソフトのテンプレートとして私が作成したフ
ァイルを用いることにした。このデータの必要部分をテ
キストファイルとして保存し、顧客情報と受注内容をそ
のまま新システムに送って、受注伝票を作成できるよう
にした。
b)発注内容と請求内容のチェック
 3)の問題を解決するため、親会社の情報システムに依
頼し、毎月の請求書のデータファイルを前述の社長の端
末に送信してもらうようにした。新システムでは、この
請求書と発注伝票の内容を突き合わせ、過不足があれば
一覧を出力できるようにした。
c)給与天引きデータの自動作成と送信
 4)の業務を合理化するため、親会社社員の購入データ
を新システムで毎月末に集計し、顧客コードと合計金額
をファイルとして出力できるようにした。これを表計算 2000
ソフトで処理し、親会社の社員コードに変換(下6桁の
みにする)して、前述の社長の端末から親会社の人事部
に送信するようにした。
d)セキュリティ管理
 5)の問題に関しては、バックアップは作業が容易な光
磁気ディスクを用いる方式とし、5枚のディスクを用意
して、月曜日から金曜日まで毎晩終業時にバックアップ
を取ることにした。これにより、常に5世代のバックア
ップを持つことになった。
 また、入力担当者、販売担当者の全員にIDとパスワ
ードを与え、販売担当者は伝票と集計結果の閲覧・出力
のみができるようにすることで、データの漏洩や損壊を
防ぐことにした。
3.新システムの評価と今後の課題
 新システムの導入によって販売担当者と入力担当者の
過負荷が改善され、繁忙期にもほとんど残業をしなくて 2400
よい状態になった。業務全体の進め方がかなり改善され
たと考えられるが、まだ以下のような問題がある。
1)社内LANの構築
 現状ではまだ、EUCはスタンドアロンのパソコンで
行い、新システムのLANとも、親会社のグループウェ
アとも繋がっていない。データの受け渡しや印刷の際に、
フロッピーディスクに取って別のパソコンへ持って行く
状態である。セキュリティを十分に考慮した上で、社員
1人1台のパソコン端末支給と、グループウェアまたは
イントラネットによる社内ネットワークを構築すること
が理想である。親会社のグループウェアは端末の標準化
や通信ポートの制約の問題で社内LANに接続すること
が困難であるし、セキュリティ上の問題もあって実現は
難しいが、改めて問題点を洗い出して検討してみたい。
2)発注のオンライン化
 発注そのものについては親会社のシステムの問題もあ 2800
って、従来のファクシミリによる送信のままである。納
品の間違いは年に数件であるが、一層の効率化のために
は、受注伝票のデータを集計し、親会社のシステムに送
信できる方式が望ましい。今後も親会社のシステム部門
と連絡を密にして、当社の要求を取りまとめて反映させ
るようにして行きたい。


<みなさんのコメント要旨>

  • 「苦労した点、システム導入に対する障害と克服」そういった視点での準備を行っておいた方が良い。
  • 現場で実際にやっている臨場感がある。
  • 従業員30名の総務部係長だと、立場が弱い。「社内ではシステムの最終責任者」を強調したい。
  • システム更新に合わせたのは止むを得ずではなく、しかるべき伏線を作る。
  • 現状の問題点が事実の羅列になっている。各問題点を改善すれば業務の何がどう良くなる(効率化・迅速化・収益性・コスト削減)かという視点で記述すべき。
  • 評価と課題に説得力がない。会社の規模を拡大するか、自分の立場を上げれば説得力が増す。


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