●平成15年6月29日(日), 日帰り ★ 総所要時間: 4時間30分 ★ ハイキング標高差: 467 m
中里介山の長編小説「大菩薩峠」の舞台として有名となった大菩薩峠(1897m)と、日本百名
山のひとつで、大菩薩連嶺の主峰、大菩薩嶺(2057m)を結ぶ草原の稜線コースは、楽チンに 登れて素晴らしい展望の中を歩く、極めて快適なルートである。特に富士山の眺望が素晴らし く、裾野までを丸ごと拝むことができる。さらに、八ヶ岳や奥秩父の山々も一望できるし、遠くは 冠雪した南アルプスの3000m峰が、白く横一列に並んで見える姿も、豪快そのものということ である。 が、‥‥しかし。誠に残念ながら、今回はその素晴らしい展望を拝むことは、最後までできな
かった。天気は梅雨の時期にしては良かったのだが、周囲には雲が多く時折ガスもかかり、遠 方の景色は白一色となってしまった。展望には見放されたのだが、それでも陽射しは強めで、 青空もみられたし、何よりも稜線歩きは実に気持ちがよく、快適なハイキングが楽しめた。今 回は筋肉痛も殆んどない(笑)。これで良し、としておこう。 大菩薩嶺を存分に楽しむのであれば、2日間の長い周回コースがあるが、モチロン我ら一行
が選択したのは、車で入れる処まで行きハイライト部分だけを半日程度で巡る、大人気のコー スだ。 国道411号(大菩薩ライン)の登山口から、山道をクネクネと抜けて上日川峠にある「ロッヂ
長兵衛」前の駐車場に車を留めて出発した。車はさらにその上の「福ちゃん荘」まで入れるの だが(徒歩25分の距離)、車道の幅が狭く(1.5台分ぐらい) 停められる台数も少なく、また宿泊客 が優先される事があるのでやめておいた。その福ちゃん荘まで、車道に沿って林の中に登山 道がある。軽い登りで歩きやすい林の道を通って、まずはコースの起点となる福ちゃん荘に到 着。 ![]() 売店と休憩所もあって、観光地の色合いが濃い山小屋である。いきなり玄関前に出て、『皇
太子様・雅子様、ご休憩場所』と書かれた大そうな看板が眼に入った。売店前の広場にコース を示す大きな案内板があったので、それを見て確認していたら、黄色いTシャツを着た60代位 と思われるオジサンが話しかけてきた。 「どちらから回るつもりですか?」との、問い。(この後、マユが ”黄色いおじさん” と呼んで仲良く
なり、時折ご一緒することになる) 多くのガイド本や紹介記事では、ここから大菩薩峠に出て 稜線コースを緩やかに登って(けっこう長い) 大菩薩嶺山頂に至り、雷岩から唐松尾根を下っ て帰るルートが紹介されている。当方も定石どおりに、そのルートで登るつもりでいたので、そ う返答すると、”黄色いおじさん” は 「傾斜は緩くても、ダラダラと長い登りが続くのはケッコウ疲れるので、逆ルートの方が快適に
景色を楽しみながら歩けるよ‥‥」と、教えてくれたのだ。ナルホドと思いながら、暫らくおじさ んと立ち話しをした。おじさんは奥様と二人で、四季を通して何度もここを訪れているようで、と ても気さくな人だ。 「途中でまた会うかもしれませんね。お先に。」と、いったん別れて、おじさんの助言に従って唐
松尾根から逆周りで登ることにした。 ![]() 暫らくは樹林帯の中を歩くが、強めの陽射しと、先日までの雨で濡れた地面からの湿気で蒸
し暑く、おまけにコバエ(?) のような小虫が大量発生し、ちょっと止まっただけで顔の周りにまと わり付いてきて鬱陶しかった。途中に何箇所か展望の開ける部分があり、麓の上日川ダムが 覗けたり、近隣の山々が見渡せた。小休止しながら進むと、後から来ていた黄色いおじさん夫 妻に追い越された。 「ガスがなければ、このあたりから富士山がきれいに見えるんだけどなあ‥‥」とは、おじさん
の弁。さすがに慣れている。多少、急坂が続いたが、これまでの山ほどのものではない。た だ、蒸し暑さとまとわり付くムシには、少し参った。 唐松尾根から大菩薩連嶺主稜線を望む
![]() 登りきったところが少し広くなっており、岩が重畳して小高い展望台となった「雷岩」に着い
た。マユが真っ先に岩へ登る。なかなか降りてこないので、後から我々も登っていくと、先に休 んでいた黄色いおじさん夫妻から、浅漬けキュウリをもらって一緒に食べていた (唖然)。 結局、我々も一本ずつ戴いて休憩したのだが。こういう所で食べると、格別に美味しいものだ
と、シミジミ感じた。 ![]() ![]() 雷 岩 大菩薩嶺・山頂 (2057m)
ここまで来ると、大菩薩嶺の山頂はすぐそこである。樹林帯の道を軽く登ると、10分足らずで
連嶺の主峰・大菩薩嶺(2057m)に到着した。だが、この山頂部は木々に囲まれていて展望は 全くなく、山頂を示す標識がなければ誰も気がつかない様な所である。したがって、訪れる人も あまりいないようだ。日本百名山のピークだというのに、寂しい様な感じがするが、確かに何に もないのだから、仕方があるまい。記念写真だけ撮って、足早に雷岩まで引き返す。 そして、ここからが今回のハイライト、大菩薩連嶺の稜線歩きだ。
![]() 広い稜線上は、傾斜が緩やかでとても歩きやすく、気持ちがいい。ムシも纏わり付かなくなっ
た。視界を遮るものも殆んどないため、遠景が見わたされれば、終始、南アルプスや富士山の 豪快な景観を堪能しながら進むことができたはずだ‥‥。しばらく下ると、標高2000m地点を 示す記念碑のある神部岩に至る。先に出発していた黄色いおじさん達の姿は、はるか先の方 に小さくなってしまった。(遠くでも、黄色のTシャツが良く目立つ) マユは、 「黄色いおじさんに追いつくんだ‥」とペースを上げて一人で先に行ってしまった。そう、子供が
張り切ってドンドン歩いてゆけるような、快適なハイキングコースなのだ。 ![]() ![]() 賽の河原(1935m) レンゲツヅジのお花畑
やがて、「賽の河原」と名づけられた広い場所に出た。その先にはお花畑があり、オレンジ
色のレンゲツツジが広い範囲にわたり花を咲かせていた。さらに進むと、ようやく大菩薩峠と思 われる、人の沢山集まっている場所が見えてきた。その前の少し脇に寄った所に「親知らずノ 頭」と書かれた展望台があり、マユはそこで黄色いおじさん夫妻に追いついて、一緒に休んで いた (なんと、今度はグレープフルーツを貰ったらしい)。ここで、昼食をとることにした。 ![]() ![]() 大菩薩峠の介山荘が視界に入る 大菩薩峠(1897m)
大菩薩峠には「介山荘」が建ち、中里介山の文学碑のほかに休憩舎や売店、トイレなどの
施設があり、観光スポットとなっていた。ここからは、ふたたび樹林帯へ入り下山する。 登山道はやがて、小石の転がる広い山道に変わり「勝緑荘」をへて「富士見山荘」に出た。こ
こで、またまた先に下山していた、黄色いおじさん達と合流。ここは、その名の通り富士山の好 展望台にもなっている山小屋である。残念ながらこの日は一度も見ることができなかったのだ が、おじさん達は富士山の見える方向の雲を見つめて休憩していた。 何度も訪れているおじさん達にとっても、やはり名残惜しかったのであろう。ここで、黄色いおじ
さん夫妻ともお別れし、足早に山道を下り「福ちゃん荘」にたどり着いた。 ![]() 後は、登ってきた時と同じ林の中の道を戻って駐車場所である「ロッヂ長兵衛」に帰った。
( 2003.7.6、記 ) ![]()
|