IIZUNAYAMA
飯縄山 (飯綱山)

北峰 (1917m)

南峰 (1909m)
  飯縄山 ( 戸隠バードラインより )
平成18年8月10日(木), 日帰り
   ★ 総所要時間: 5 時間 20分
   ★ ハイキング標高差: 797 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 郷里、長野市のシンボルとも言うべき最高峰で、存在感の強いまろやかな曲線に包まれたコ
ニーデ型の休火山が 「飯縄山」 (1917m)である。 「霊仙寺山」 (1875m), 「怪無山」 (1549m),
瑪瑙山」 (1748m) など、周囲に幾つもの衛星峰を従えた複合的で大きな山だ。 山名には
飯綱山」 の表記も使われており、地形図にも二つの漢字が併記されている。 山麓にある飯
綱高原、飯綱スキー場、飯綱町などの地名は全て 「」 の文字が使用されており、現在では
山の名前も 「飯綱山」 の方が主流となっているが、全国に広がる 「飯縄権現飯縄社の総
本山であることから、依然として 「飯縄山」 と表記されることも多い。

 北信濃を代表する景観の一つに、「北信五岳」 と呼ばれる山々がある。 長野市から北の、
新潟県境に連なる大きな山容の山たちで、「戸隠山」 (1904m), 「黒姫山」 (2053m), 「斑尾山
(1381m), 「妙高山」 (2454m) そして、この飯縄山を加えた五つの山岳をさす。 小布施町や須
坂市あたりからは、その北信五岳が並んで一望でき 壮観な眺めだ。
今回、たまたま飯縄登山の翌日に小布施町に立ち寄ったのだが、良く晴れ渡り五岳すべてが
揃い踏み状態(!?)であった。 とりわけ、飯縄山の後方に沈んだ夕焼け空がとても美しく見事な
景観だった。
            
                   飯縄山 ( 翌日の夕方、小布施町より )

 飯縄山は、正に長野市民の山として古くから親しまれ、善光寺平の頂点に位置することか
ら、長野市だけでなく北信濃全域からその姿を眺めることが出来る。 危険な箇所も無く、標高
も2000mにわずかに届かない程度なので、地元小学校の学校登山をはじめ様々な団体の集
団登山や、全国に広がる飯縄信仰の登山者達でいつも賑わっている人気の高い山である。
川中島の合戦」で相まみえた、武田信玄上杉謙信の両雄も飯縄信徒であったらしく、何
度となく登山に訪れたそうだ。
飯縄山への登山道は4本あるが、今回は長野市側からアプローチする 「南登山道"一の鳥
居コース
)」 を選択した。 最も一般的で、正面コースと位置づけられている登山道だ。

夏休みの帰省中であった為、我ら "インチキ山屋" 一行は、さほど早起きするでもなく通勤
時間帯の渋滞にはまりながらも20分ほどで長野市街を抜け、国宝 「善光寺」 の脇から 「戸隠
バードライン
」 へと向かう。
この日の周囲の天候は、一応晴れで気温も朝から高いのだが、市街地からも良く見えるはず
の飯縄山が見えていない(!!)。 飯縄・戸隠を含めた 北信方面の高い山には全体に "朝もや"
のようなものがかかっており、遠方の見通しがあまり良くないのだ。
道路の方は次第に標高が上がり、所々から善光寺の本堂や塔、市内の街並みが展望でき
る。 バードラインへの入口には一応二車線 (対面通行) ながら、急坂・急カーブが次々と連続
する全線シェルター付道路、通称 「七曲り」 を通過しなければならない。 日光の「いろは坂
など問題にならない程の急坂路を越えて、一気に標高を稼ぐ。
前方に荒々しく見えるはずの戸隠山も見えてこない。 イヤな予感を感じながらも先へと進む。
やがて飯綱高原へと入り 「大座法師池」 を経て、ゴルフ場の反対側に位置する飯縄神社
一の鳥居」 に到着した。
             飯縄山 ・ 南登山口  

ここに、飯縄山南登山口の標識と大駐車場がある。 トイレはここにしかないが、車は鳥居を
くぐってもう少し先まで進むことが出来るので、カラマツ林の別荘地内を直進すると、「飯縄山」
と札の付けられた木の鳥居が現れる。 本来ならば、この鳥居の真上に飯縄山がクッキリと見
えていなければならないのだが、この時点でも "御本尊さま" はモヤの中だ(涙) !!
更に奥へと進むと、道は行き止まりとなり 第三番目の小さな石の鳥居 (南登山口) が現れ
た。 その手前の道路脇・駐車スペースに車を停めて、身支度を整える。 現時点では山頂から
の展望は期待できそうもないが、天候は良いので次第にモヤが取れてくれることを願いながら
出発することにした。
今季は冬眠(!?)が長く、かなり運動不足状態なので、準備運動をタップリしてから登り始めるべ
きだったのだが、何やら後ろの方から小学生らしき60〜70名ぐらいの大集団が迫ってきていた
ので、「あの団体に先を行かれたら大変だ…!! 」と 言わんばかりに、準備運動もしないで慌て
て出発した(笑)。

             白樺の混じった雑木林の中を進む

入口からカラマツ林の中の緩やかな登山道を上ると、林道を横切ったところで 再び 「飯縄大
明神」 の木の鳥居が現れる。 白樺なども混ざった雑木林の道は、木の根と腐葉土が堆積して
クッションの役目を果たしており、フワフワして歩きやすい。 やがて、登山口から10分ぐらい歩
いたところで、道脇に 「第一 不動明王」 の石仏があった。
このコースでは、森林限界点に至るまでの道脇に十三体の石仏が安置されている (石仏巡
りコースとも、呼ばれているそうだ)。 ここには、その 「十三佛縁起」 と記された立札も置かれ
ていた。
展望が殆どないので、それぞれ別の表情をした石仏に順次出会えるのは、気分転換にもなっ
て楽しい。 釈迦如来文殊菩薩地蔵菩薩弥勒菩薩薬師如来観音菩薩と、聞き覚
えのある名の石仏が 5分から7分位の間隔で次々に現れる。 日頃の運動不足がたたって、少
し登っただけて足が疲れてしまっている自分にとって、チョッと進んでは 「あっ、またあった! 」
などと、イチイチ休めたので助かった(笑)。

         
      第一 不動明王 と 十三佛縁起             第九 勢至菩薩

第十 阿弥陀如来」 を過ぎたところで、番外編の 「馬頭観音」があって、そのすぐ上がや
や広くなった平坦地の 「駒つなぎの場」 だった。 ここで、荷を降ろして長い休憩をとることにし
た。
昔、武田信玄や上杉謙信などの武将が、ここに馬をつないで登山をしたのであろう。 実際、4
頭ぐらいの馬がつなげられそうなスペースがある。 しかし、このスペースが後から登ってきた
子供たちの大集団に、すぐに埋め尽くされてしまった。

            駒つなぎの場

この先は急坂になるので、登山道はいったん右方向にトラバースしてから、沢状の急斜面を
ジグザグに登ってゆく。 道幅の狭い岩場の急登が続き、先行した小さな子供たちのペースが
落ちたため一時的に渋滞する。
途中に水場があり、かつては飲めたようだが、水量も少なく 「飲水には適しません」 と、書か
れていた。 そういえば、「登山者達のし尿があまりにも増えてきた為、土壌の汚染が原因であ
る…」 旨の注意書きが、登山口付近の立て看板に書いてあった。
そんな時、上の方からホラ貝を吹くような音が聞こえてきた。 はじめは、前の方の小学生たち
が玩具の笛でも吹いているのかと思っていたら、だんだんリアルな音となって近づいてくる。
ふと見上げると、目の前に "山伏" の衣装を身にまとった、体格のいい5〜6人の男達がすご
い迫力で下山してきた。 あれが、ホンモノかどうかは知らないが、さすがに修験道の山岳だな
あ〜と実感した。
           大岩に付けられた、唯一の鎖場

最後の石仏、 「第十三 虚空蔵菩薩」 を過ぎ、大きな岩に取り付けられた唯一の鎖場を越
えると、次第に視界が開けるようになり 「天狗の硯岩」 と呼ばれる尾根筋の上に出る。
やがて森林限界となり、ササの草原をさらに進むと、戸隠中社方面への分岐 「西登山道」 と
合流する。
この辺りでは、すでに戸隠連峰や日本百名山の 「高妻山」 (2352m)、北アルプスの展望も
出来るはずなのだが、依然としてガスがかかっており、近場の飯綱高原がわずかに見える程
度だった。 ただ、周辺の草原には色鮮やかな沢山の花が咲いており、お花畑になっていた事
がせめてもの救いである。

   
     天狗の硯岩より (飯綱高原と戸隠山方面)            前方に山頂らしきピークが見える

前方に山頂らしきピークが見えてきた。 だが、これは地元の人が 「ニセピーク」 と呼んでい
双耳峰にみられる低い方の (二番目の) 山頂で、「南峰」 (1909m) にあたる。 本当の山頂
は、ここからではまだ見えない。
急坂を登りきった斜面に、小さな二つの鳥居と祠があり、もうひと上りしたところで、ニセピー
ク・南峰山頂に到着した。 澄みきっていれば、360度遮るものがない大展望が得られるうえ、
飯縄神社の奥宮もこの山頂部の一段下に設置されているのだから、昔の人たちがここを本当
の山頂と勘違いしたのかもしれない。 確か、そんな云われがあってニセピークと呼ばれたのだ
……と、小学校の時に教えてもらったような気がする (汗)。

         
          南峰 ・ ニセピーク ( 1909m )         一気に、山頂へと向かう

本当の(!?) 山頂は、ここから10分ほど北側にある。 鞍部へといったん下って、登り返したとこ
ろが飯縄山・山頂 (北峰)だ。 入山口から一度も下らずに、ずっと上り勾配だったので鞍部
への僅かな下りは、妙に足早で軽快だった。
広い山頂に到着すると、既に沢山のお客さんたちが腰を降ろして休んでいた。 先の小学生集
団の他に、もう2グループぐらいの団体がありそうだ。 我らも山頂の一角に、イスになりそうな
適当な石を見つけて、大休憩をとることにした。

    
     飯縄山 ・ 山頂 (1917m)       わずかに得られた、山頂からの展望

残念ながら360度の展望は殆ど得られず、飯綱高原が微かに見えている程度で、先程までと
変わりばえのしない景観だ。 全方位に遮るものがないので、晴天時には北信五岳はもとより、
北アルプスの槍・穂高連峰白馬連峰も望める。
特に近場の戸隠連峰は、黒い岩壁が屏風のように立ちはだかって見えて圧巻だし、その奥の
高妻山も、鋭い山頂を高く天に向けてそそり立っているはずだ。 また、これらとは対照的な黒
姫山の雄大で穏やかな姿も展望することは出来なかった。 それでも、もう少し待てばガスが消
えるかも…と、微かな期待を抱きつつ、山頂での昼食タイムとした。
一時間ほど、山頂でコーヒーを飲みながらゆったりとしていたが、依然としてガスは取れそう
もないので諦めて下山することにした(涙)。 ニセピークを経由して、往路をそのまま戻る。
西登山口の分岐から戸隠中社方面に下るのも変化があって面白いようだが、車の関係で直
進し再び十三仏の待つ南登山道へ。 岩場の下山路は、火山灰の混じった黒い土が滑りやす
いので注意が必要だ。 すっかりと足腰が弱ってしまい、ヨタヨタとしながらも登山口まで無事に
生還した (笑)。
さあー、次は温泉だ !! 

         
      色鮮やかな花の中、飯縄山を下山する           南登山口Pに、帰還

車に乗り込みバードラインを北上、戸隠神社の宝光社を経て、有名処が軒を連ねる蕎麦屋
通りを抜け、戸隠神社・中社に到着。 西登山口はこの辺りにあり、目指す日帰り温泉施設
戸隠神告げ温泉・湯行館」 もこの奥に入った所にあった。
久々の山登りの後に入る温泉は、実に気持ちがいい。 そして、ここは 「霧下そば」 として全
国的にも有名な蕎麦処 "戸隠" である。 戸隠に来て、戸隠蕎麦を食べずに帰るのは、バチ
あたり! というものだ(笑)。 特に、"ソバの味にうるさいオヤジ" としては、食べずにいられな
い!! (ソバの食べ方にまで、拘っている!! …笑)  マユは例によって、"岩魚の塩焼き" も頬張っ
ていた。
                 振り返ると、戸隠連峰が…

温泉と蕎麦を堪能して帰路につくが、外に出て驚愕する。 なんと!! 霞がかっていた空がスッ
キリと晴れ渡り、雲も殆ど無いではないか!! バードラインに戻ると、前方に飯縄山の美しいライ
ンがハッキリと見えるし、後ろを振り返れば戸隠連峰の険しい山並みが、逆光の中にシルエッ
トとなって立ちはだかっていた。
午後の方がこんなに視界が良好だとは…、悔しさがこみ上げてきたが、今からもう一度登る
元気はモチロン! ないっ!! (笑) こんな事なら、昼頃から登山すれば良かった…と、思ったところ
で後の祭りである。
いつでも再訪できる山なので、次こそは!! と、リベンジを誓い、一の鳥居から見た飯縄山の姿
も写真に収めて、やむなく帰路へとついた。

  一の鳥居をくぐり、飯縄山を望む (下山・後)

                                                                ( 2006.8.27 記 )

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