KAI-KOMAGATAKE
甲斐駒ヶ岳 (2967m)

駒津峰 (2750m)

摩利支天 (2820m)
   甲斐駒ヶ岳 (2967m, 駒津峰より)
平成19年8月14日(火), 現地日帰り
   ★ 総所要時間: 8時間 15分
   ★ ハイキング標高差: 937 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 南アルプスは長野・山梨・静岡の三県にまたがり、北から甲斐駒山脈白峰山脈伊那山
赤石山脈と4つの山系からなり、南北120km・東西40kmにも及ぶ、日本第二のアルプス
だ。 周囲の前衛峰も数多く、幾つもの山系が複合して懐が深いために、全般的に 北アルプ
に較べてアプローチが長くなり、登山日数も長く要するのが特徴だと言われている。
つまり、”インチキ山屋” などの邪道組は、なかなか受け入れてもらえない ツワモノ揃い とい
う訳だ (笑)。 そんな南アルプスの中でも、日帰り登山の可能な秀峰の一つが 「甲斐駒ヶ岳
(2967m)、通称 「甲斐駒」 であり、今回のチャレンジ対象とした。

甲斐駒は、日本第二位の高峰 「北岳」 (3193m)と並び称される ”南アルプスの雄” だ。 白く
美しい黒雲母花崗岩で形成された山頂部は、夏でも雪かと見間違うほどに豪快な姿で、比較
的穏やかな山貌の多い南ア連峰の中でも、特異的な存在の山として人気も高い。
お隣、中央アルプスの最高峰 「木曽駒ヶ岳」 (2965m)とは、互いに 北端にて伊那谷を挟んで
対峙しており、いわゆる大駒ヶ岳の両雄でもある。
ちなみに、木曽駒を 「西駒」、甲斐駒を 「東駒」 と呼ぶこともあり、この両山はモチロン! 日本
百名山の一員であることは言うまでもない。 インチキ山屋としては、木曽駒の方は4年前にお
得意のインチキ手法にて登頂済みであるが、こちらの甲斐駒についてはインチキが通用しな
いので、試練の山登りと言えよう (笑)。 (まあ、それでも林道バスを使って2030m地点からの登
りですけどネ…)
                         
                 甲斐駒ヶ岳と摩利支天 (駒津峰8合目より)

 甲斐駒を日帰りで登るための絶対条件として、長野県側の拠点 「仙流荘」 前から 「南アル
プス林道バス
」 の始発に乗る必要がある。 さらに言えば、早朝の始発バスは7/16から8/31
の期間限定 (ただし、6/15から11月中旬までの土・休日も運行、冬季は全面運休) の運行だ。
これに間に合わない場合の日帰り登山はムリなので、深夜のうちに出立して現地入りした。
ガイド本によれば、始発時刻は 6:30 だったので、 (実はこの情報は古くて、ダイヤは改正され
ていた!!) 中央自動車道を諏訪ICで降りた後、遅刻したらシャレにならないのでガラ空きの国
道152号線 (途中に山道を含む) を激走して高遠に至り、なんとか6時ちょっと前に 仙流荘・バ
ス営業所前 の無料駐車場に到着。

ゆとりをもって身支度したかったので、ちょうど良い時間だと思いホッとして車を停めていた
ら、駐車場係のおにいさんが慌てて寄ってきて 「お客さん、6:05発のバスに乗りますか?」 と聞く
ではないか(!!)。 「えっ、6:30じゃないの?」 と聞き返すと、「いや、改正されて6:05が始発です。
その次は8:05まで出ません。」 との事 (!!)。  
あと5分足らずしか余裕はなかったが、「乗ります! 乗ります!」 を連発して、大急ぎで持つものだ
けもってマイクロバスに乗り込み、ぎりぎりセーフ!! (笑)。 危なかったが、なんとか第一関門を
クリアした。
親切に教えてくれた駐車場のおにいさんに感謝しつつ、事前に最新情報を確認していなかった
ことを大いに反省しながら、約1時間のバスにゆられ 一路 「北沢峠」 へと向かう。

仙丈ヶ岳 (3033m, 駒津峰より)

バス車中では運ちゃんがガイドも兼ね、色々と説明しながら運転してくれたので飽きなかっ
た。 天気は上々で、高度が増すにつれ 「鋸岳」 (2685m), 「仙丈ヶ岳」 (3033m) と、目指す甲
斐駒ヶ岳も姿を現し、絶好の眺めだ。 とりわけ鋸岳はギザギザした稜線が見事で、まさにノコ
ギリを連想させてくれた。

     
    雲海に浮かぶ中央アルプス (駒津峰より)         鋸岳 (2685m, 駒津峰より)
  
 終点の北沢峠でバスを降り、身支度を整えてイザ出発だ。 林道を5分ほど広河原方面に歩
き「仙水峠」 への登山道に入る。  
すぐに 「北沢長衛小屋」 の前を通過し、「栗沢山」 (2714m) への分岐を左に折れて、しばらく
北沢」 沿いの樹林帯をアップダウンしながら進む。 沢を反対側に渡って離れ、さらに進むと
仙水小屋」 に到着する。 小休止して、コメツガやシラビソ原生林の急坂を登ると、まもなく樹
林帯を抜け、岩塊斜面の正面に出たところで視界が開ける。 ゴロゴロした露岩帯の上を慎重
に歩き、仙水峠へと向かう。 

    
  北沢沿いの樹林帯をアップダウンしながら進む       露岩帯を渡り、前方の仙水峠へ

 振り返ると、後方には仙丈ヶ岳が聳えており、さらに高度を上げていくと白い岩肌がゴツゴツ
した 「摩利支天」 (2820m) の頭が、ものすごい迫力で正面に出現する。

         正面に現れた 摩利支天 (2820m)

標高2264mの仙水峠に到着すると、その姿は見上げんばかりに白く豪快に聳え立ち圧巻だ。
そして、その摩利支天に連なって同じく白い岩肌をした甲斐駒の姿も垣間見えている。
北側には、真っ白く漂う雲海の彼方に 「八ヶ岳連峰」 を望み、右側には 「鳳凰三山」 ( 「地蔵
ヶ岳
」 (2764m), 「観音岳」 (2840m), 「薬師岳」 (2780m) ) の一部もシルエットとなって見えてい
る。
   仙水峠 (2264m)、 奥に 仙丈ヶ岳  

    
    雲海の彼方に 八ヶ岳連峰 (仙水峠より)     北面、鳳凰三山の一部が見える (仙水峠より)

 仙水峠は、栗沢山から 「アサヨ峰」(2799m) を経て 鳳凰三山へと続く縦走路の分岐点でも
ある。 これを背にして、まずは前面に立ち塞がる 「駒津峰」 (2750m) への急登に取り掛か
る。
ここから見上げても、甲斐駒の山頂は遥か上空にあり、まだまだ長く険しい道のりだ (汗)。

              
                 遥か上方、向かう稜線を見上げる (仙水峠より)

 峠から左の樹林帯に入り、イキナリ急登が始まる。標高差500mほどを一気に登る、本日最
大のガンバリどころ(!!) だ。 展望のない原生林の中をジグザグに登り詰め、1時間ほどすると
ダケカンバ帯に変わって 所々で後方の展望が得られるようになる。
栗沢山から続く アサヨ峰と鳳凰三山、そして栗沢山の右肩から広がる 南アルプスの主軸線
上方向からは、まず遠方の 「塩見岳」 (3047m) が姿を見せていた。 これら次第に広がって
ゆく後方の展望が、キツく長い登りの励みとなり、小休止しながら更に上へと進んだ(汗)。
 やがてハイマツ帯へと変わると、栗沢山の右肩から 「間ノ岳」 (3189m) が見えはじめ、続い
て「北岳」 (3193m) がついに姿を見せる。 更にもうひと頑張りして、ようやく駒津峰の山頂に
到達した。

    
    間ノ岳(左)が見えてくる (右奥は塩見岳)            駒津峰・山頂 (2750m)

 山頂は広くて、展望は一級品の素晴らしさだ。 何と言っても、これから向かう甲斐駒の白い
岩肌の巨体は、豪快そのもので美しい。
北側には鋸岳と、その遥か遠方に見える北アルプスの山並み。 東方向には雲海に浮かぶ中
央アルプスと、下山時に帰路として向かう 「双児山(ふたごやま)」 (2649m) を見下ろす。
更にその奥に聳える仙丈ヶ岳の姿は、さすがに ”南アルプスの女王” と呼ばれるだけの風格
はある。
そして、その左側から南面には、南アルプスの奥深くへ幾重にも連なった山並みが広がってい
る。 とりわけ、北岳のピラミダルな山頂部が天に向かって聳える姿は優美であったし、同じく
白峰(しらね) 三山」 と称される 間ノ岳, 「農鳥岳」 (3026m) を含め、塩見岳などの3000m超
級の山々を山座同定していると、ここまでの疲れを忘れさせてくれるから不思議だ。  
更にアサヨ峰の西側に目を移せば、鳳凰三山が全貌を現しており、その特徴的なオベリスク
も クッキリと天を突いて見える。 そして、その右肩からは 「富士山」 (3776m) も覗いている。

    
      北岳 (3193m, 右奥は間ノ岳) (駒津峰より)    鳳凰三山 と、 富士山 (奥)

 最高の展望を充分に堪能して休憩をとったところで、更に極上の展望が期待される甲斐駒ヶ
岳へと向かう事にした。

           
                駒津峰から岩稜線を辿り、甲斐駒・山頂へ向かう

 駒津峰からはいったん急勾配を下って、狭い岩場の痩せ尾根を進む。 岩や木につかまりな
がら、岩稜線のアップダウンを繰り返してゆくと 「六方石」 と呼ばれる巨岩のコルに辿り着く。
その脇を抜けてしばらく進むと、進路は岩場を直登する上級コースと、砂礫の巻き道を進む一
般コースとに分岐する。 当然、身分相応(?)に一般コースの巻き道へ進むべきところだったが、
この分岐を見落としてしまい、気が付いたら岩場の直登コースに紛れ込んでいた (笑)。
さほど危険という程のものではなかったが、気を抜かずに三点支持を守り、岩場を慎重に登り
詰めて、ようやく甲斐駒ヶ岳の山頂に躍り出た。

    
     六方石を抜けて、花崗岩の頂稜部へ         岩場の直登、山頂まであとわずか

 山頂は意外と広く、白砂に花崗岩を配した庭園のような広場で、そこに石造りの祠と一等三
角点
が埋設されている。 
最高の展望を期待していたのだが、岩場に取り付いていた頃から急激にガスが上がってきて
いた。それが山頂に至って全方位に広がり、大展望は白いガスの海と化し、見えているのは摩
利支天を含めた山頂周辺の狭い範囲だけの景観となってしまった。
山頂の到着時刻が11時30分過ぎ…、やはりアルプスなどの高山帯では晴天であっても、この
位の時間になると既にガスが発生してきて、景観を奪われてしまう事が多いのであろうか。
その意味でも、やはり日帰り登山ではなく、山小屋に一泊して朝のうちに山頂へ到着する計画
の方が、体力的にも良いのであろうと思った。まあ、駒津峰で全方位の眺望が得られていたの
で、今回はそれで ”良し” とする事にした。

        甲斐駒ヶ岳・山頂 (2967m) 

 仙水峠からは大迫力で見えた摩利支天も、山頂から見下ろすと小さな尾根の頭にしか見え
ないほどだ。 また、摩利支天とは反対側に少し下った副ピークには 「駒ヶ岳神社奥社」 が建
てられていた。

    
      周囲を覆い、摩利支天に迫るガス       駒ヶ岳神社奥社は、山頂下の第二ピークにある

 充分な昼食休憩をとって、さっそく下山に取り掛かる。よもや、北沢峠からの終バス(16:00)に
間に合わない事はないと思うが、ある程度のゆとりをもって行動するのに越したことはない。
下山は、登りで見逃してしまった巻き道の一般コースを辿ることにした。 
岩場ではむしろ下りの方が怖い部分もあるからだが、こちらの砂礫・ザレ場もズルズルと滑っ
て結構アブナイ (笑)。
まずは、摩利支天の方に下って分岐点を見送り、六方石の先で痩せ尾根の往路と合流して駒
津峰へと戻る。

    
    砂礫の巻き道から、駒津峰(前方)に戻る      六方石付近、岩場からのコース(上)と合流

 駒津峰からは、往路を辿らずに直進して尾根伝いに北沢峠へと向かう。 はじめはハイマツ
帯を下るのだが、この辺りからは正面に仙丈ヶ岳、左手に北岳や塩見岳を眺めながらの快適
な下りルートのはずだった。 ガスで遠方の視界が遮られてしまっているのが、少々残念だがや
むを得まい (苦)。やがてガレ場を通過して、なだらかな鞍部に至る。 そこから少し登り返したと
ころで双児山の山頂に到着した。
     駒津峰からは、双児山方面へと下る 

そこは岩山の頂で狭く、展望も仙丈ヶ岳方面が少し開いているだけで殆どないので、小休憩だ
けして下山を急ぐ。 再びハイマツ帯の茂みの中を下り、樹林帯へと突入する。
かなりの急坂が続き、いよいよもって足腰が痛みを伴ってきたが、焦らずにひたすらジグザグ
道を下っていく。
やがて、道の起伏が緩やかになったところで山腹を横巻くように進むと、右下に 「長衛荘」 が
現れて北沢峠に辿り着いた。 何とか無事に、終バスの30分前に到着したので、まずまずの出
来と言えようか(笑)!?

 北沢峠からの終バスは 16:00発であったが、臨時便として 15:45発のバスがあったので、そ
れに乗車して駐車位置の仙流荘へと戻る。 約1時間の乗車なので、少し目を閉じて休もうと思
っていたのだが、例によってマイクロバスの運ちゃんが名調子(?)で、今度は花(高山植物)の解
説をしながら運転してくれたので、まんまと乗せられて(!?) 車窓の景色から目が離せなくなって
しまった (笑)。
北沢峠は 2030mもあるので、シーズン中の林道沿線には実に沢山の高山植物が咲いており、
それを運ちゃんが 通りかかる度に徐行して 「あの紫の花は…といって、…が特徴でございま
す。」 とか言って、一つ一つ説明しながら進むのだ。
その数たるや 数十種にも及び、その度に乗客も 「へえー !」 とか、「ほおうー !!」 を連発して反
応するので、ついこちらも引き込まれた形で 最後までつき合ってしまった (笑)。
いやー、しかし商売柄とはいえ、運転しながらチラッと見ただけで種を鑑別して解説するのに
は ホント感心した。 花の名前は殆ど覚えていないが、勉強になったような気がする !?(笑)。
さらに話は花の名前に限らず、小動物の生態にまつわる話題や、地域での最近のトピックス
など 多岐にわたり、(ほとんど喋りっ放し状態だったが…) 結構楽しめた(笑)。

     六方石より、駒津峰からの往路を振り返る
                            中央が駒津峰、奥に聳えるのは仙丈ケ岳  (登頂時)

 バスを降りて駐車場の車に戻ると、荷を降ろして着替えを持ち、そのまま 「仙流荘」(旅館?)
の日帰り入浴を利用した。
温泉ではないが、山を降りてすぐに汗を流せたし、露天風呂もあったので気持ちよく疲れを癒
せた。 無料の休憩室で少し休んでから現地を離れ、ゆっくりと帰路についた。
                                            (2007.8.22 記)


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