「年次改革要望書」の指示どおり米国に隷従する小泉売国政治 森田実政治日誌(2006.3.13)

 

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資料

竹中総務相とサンデープロジェクト(テレビ朝日)キャスターの恥ずべき暴言 『文藝春秋』1月号の関岡英之論文「TVで暴言を吐いた竹中大臣へ――私の論文を『妄想』呼ばわりする根拠は何なのか」は、全国民必読の文献である 「森田実政治日誌」(2005.12.14)

関岡英之論文(『文藝春秋』12月号)が全国で広く話題になっている 森田実政治日誌(2005.11.23)

アメリカが進める日本改造 関岡英之(2005.8.24)

05/8/2メディアが完全無視した竹中郵政民営化担当大臣の「ウソ答弁」とゼーリック米通商代表の手紙――郵政民営化特別委員会 桜井議員の質疑より(2005.8.11)

関岡英之氏の偉大な発見 「年次改革要望書」 森田実 (2005.5.8)

 

 

2006年森田実政治日誌[134]

社会新報2006年3月8日号「この人にインタビュー」より
「年次改革要望書」の指示どおり米国に隷従する小泉売国政治
《「従属・独裁・対立」の日本をつくろうとしている戦後最悪の小泉政治を厳しく批判し、日本の歩むべき進路は「自立・民主・調和」の道であると、政治評論家の森田実さんは語りました(インタビュー記事の前文)》

「悪は一旦の事なり」(『曽我物語』)
[悪が栄えるのは一時のこと。悪は必ず滅びる]


 ―― 森田さんは、日米両国が毎年交換している「年次改革要望書」に大きな問題が隠されていると指摘していますね。
 森田 この問題に初めて気づいて暴露したのは『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書、04年)の著者・関岡英之さんです。小泉政治批判を展開する数少ない私の同志でもあります。
 関岡さんは、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に十数年間勤務した後、建築家をめざして99年に早稲田大学大学院理工学研究科に入学し、同年、教師に連れられて北京で開かれた世界建築家協会の大会に出席しました。そこで米国の建築基準を世界基準にするという決議が可決されてしまったことに疑問を抱き、そこから日本の建築基準の問題について調べていくうちに建築基準の改変などが、ことごとく米国のコントロール下にあるという事実を米公文書などから突きとめました。
 宮沢喜一内閣末期の93年7月、東京サミットの場でクリントン米大統領が宮沢首相に対し、日米の経済政策要求を交換しようと提案。日米の力関係を考慮すると、そんなことをすれば日本の独立が失われることは明らかです。宮沢首相は最初断ったのですが、結局、のまされてしまう。要望書といっても日本側の提案は“陳情”みたいなもので、聞くか聞かないかは米国の勝手です。


 郵政民営化も指示

 一方、米国側の要望は、形式上は“要望書”だが、日米の力関係では米国が圧倒的に優位ですから事実上の“指示書”ですよ。94年秋に第1回の年次改革要望書が出され、95年の2回目には「郵政民営化」までもが盛り込まれているのです。
 この十数年間、日本政府が着手してきた規制緩和の諸政策や独占禁止法改正、談合禁止法、司法改革など、何から何までこの要望書に書かれています。小泉構造改革−金融改革、財政改革、その一環としての「三位一体」と称して地方交付税をカットし、地方をめちゃくちゃにした抜本改正も要望書の趣旨に従って実施されたのです。最新の年次改革要望書「日米規制改革及び競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府要望書」は、05年12月7日に出されています。
 この十数年間の要望書の中では最大のテーマが「郵政民営化」でした。ですから先の郵政国会において関岡さんの著書が隠れた主役になったのです。「米国のための郵政民営化」であることが要望書を見れば一目瞭然です。
 関岡さんの本を読んだ与野党議員は、この問題の国会での追及に立ち上がりました。ところが、追及に対して小泉純一郎首相は話をはぐらかし竹中平蔵財政・郵政民営化大臣に至っては最後には読んでいないと言う始末です。さらにマスコミのほとんどが「年次改革要望書問題」隠しの動きに加担してしまいました。
 それが真実なのです。
 ―― いま注目を集めている森田さんの著書『小泉政治全面批判』で指摘している小泉政治の本質的な問題点とは。
 森田 小泉政治がつくろうとしているのは「従属・独裁・対立」の日本です。これは破滅への道です。
 まず問題の第一に、小泉政権というのは米国の植民地の傀儡(かいらい)政権に等しく、安保・外交政策だけでなく、経済政策まですべてにわたって米国の言うとおりの従属・隷属の政権だということです。日本の自立・独立をまったく欠いてしまった、米国の国益のためにのみ奉仕する政治をしています。
 日本政府は、国民が営々として築いてきた土地から金融資産まですべての富を米国に隷従し“ご自由にお使いください”と差し出しているようなものです。差し出している相手はブッシュ米大統領が率いるネオコン(ネオコンサーバティブ、新保守主義)です。他国を平然として侵略する帝国主義者です。


 ネオコンに捧げる

 第二の問題点は、米国の戦争に加担した点です。政治の根本目的は何かというと、ひと言で言えば、戦争をやらずに平和を守るということです。他国を平然として侵略するブッシュ大統領に対して、わが国は同調しないというのがこれまでの日本の生き方でしたし、憲法も戦後の国民がめざしたのも平和です。
 ところが小泉首相は、わが国の平和主義の国家原理を踏みじって米国の戦争に加担し、憲法が禁ずる自衛隊の海外派遣を平然と強行してしまったのです。
 第三の問題点は、日本国民の富を米国に差し上げてしまっている結果として極端な不平等政策を国内に持ち込んでいることです。日本国民の既得権を踏みにじり、米国的な市場原理主義によって日本を少数の金持ちと大多数の富のない貧困層に変え、そこに生み出される富を米国に差し上げてしまうというめちゃくちゃな政治を進めているのです。
 第四は、小泉政治の独裁的な政治手法です。しかもマスコミを動員しての独裁です。国民をマインドコントロールして、とてつもない強大な独裁政権をつくってしまった。 人間社会における最も基本的価値は、自立・独立であり、平和で、民主的で、調和がとれたシステムをつくることです。できる限り多くの人が幸せに生きられる「最大多数の最大幸福」を追求するのが政治の責任です。日本の生きる道は「自立・民主・調和」の道なのです。
 ところが小泉政権は、これらすべてに反しているのです。


 借金率計算のウソ

 ―― 財務省が算出する借金率に大きなウソがあると指摘していますが。
 森田 小泉政治を批判しているもう1人の同志である菊池英博・文京大学教授が著書『増税が日本を破壊する』(ダイヤモンド社、05年)の中で財務省の大ウソを暴露しています。財務省は、日本には795兆円の借金があり、その借金率が欧米の3倍に達し、アルゼンチン並みでむちゃくちゃ高いと言い、その赤字財政を良くすることがすべての政策に優先すると主張しています。ところが、その根拠となる借金率の計算の仕方に大変なペテンが隠されていると菊池さんは暴露しました。
 どういうことかというと、日本の財務省の計算の仕方は、分子に総債務、つまり、粗債務をもってきて、分母にGDPをもってきて割っている。分母にGDPをもってくるのは他国と同じですが、他の国は分子に粗債務ではなくて純債務をもってきています。純債務と粗債務の違いは、粗債務から政府が保有している金融資産を引いたものが純債務です。
 政府は、年金や健康保険関連の運用資金の中にさまざまな金融資産を保有しています。その金融資産は外貨準備、米国国債などを含めると480兆円にも上ります。つまり借金795兆円マイナス480兆円=315兆円が純債務です。それをGDP500兆円で割れば63%です。この数字は他の先進国と比べてもあまり変わらないのです。
 日本は金融資産の割合が大きいので、それを引くか引かないかでものすごい差が出てしまう。引けば63%ですが、引かなければ159%にもなる。その159%という数字を使って、財務官僚や小泉政権の政治家と大新聞が「日本はおしまいだ」と大騒ぎをしているだけなのです。
 小泉内閣と財務省は、こうした大デマで国民の不安を煽り、マスコミもこれに追随し、そのウソを拡大再生産してきた。赤字財政を変えるためには公共事業投資も何もかもダメだとの大ウソをついて国民をおびえさせ、正常な批判精神が出てこない状況に追いやり、「消費税大増税もやむなし」という方向にマインドコントロールしようとしているのです。これは大間違いです。(聞き手=社会新報編集部・田中みのる)
【以上は3月8日付社会新報(社民党機関紙)に掲載されたインタビュー記事です】