密室のメール(下) 町田市長パーティー事件 「トップの意向くんだ?」「横浜改革」に影 幹部軒並み名連ねる 『東京新聞』社会面(2006.7.27)

 

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密室のメール(下) 町田市長パーティー事件 「トップの意向くんだ?」 「横浜改革」に影 幹部軒並み名連ねる 『東京新聞』社会面(2006.7.27)

 

 石阪丈一・東京都町田市長(五九)=政治資金規正法違反容疑で書類送検=の政治資金パーティーは市長選三カ月前の昨年十一月二十九日、横浜市内で開かれた。

 その一カ月前の同十月下旬ごろ。同市の北薗義広前市長室長(五四)=同=は市庁舎で、ある市職員からこう警告された。「市職員に呼びかけて広く政治資金を集めることは、法に触れる恐れがある」

 同市港北区長だった石阪市長は同年九月に退職し、今年二月の町田市長選への出馬を準備していた。

 「政治資金を石阪さんに渡したい」。北薗前室長は警告に耳を傾ける様子もなく答えたという。間もなくパーティーへの参加や献金を呼び掛ける電子メールが市のほぼ全局区長・副局区長に送られた。

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 北薗前室長は問題発覚後、「送別会で記念品のようなものを贈ろうと思ったが、不明朗ではいけないと思い、政治資金パーティーにした」と釈明。中田宏横浜市長も「送別会の延長線でやった軽率な行為だった」と強調した。

 しかし、市政関係者は「石阪市長と北薗前室長が当初から、送別会を名目とすることで市の組織を積極的に利用し、政治資金を集めようと考えていたのでは」と指摘する。

 「北薗前室長は町田市長選のために横浜市の職員から金を集めても政資法違反には問われないと思い込んでいたようだ」という関係者もいる。しかし、市の組織を使って確信犯的に資金集めをしようとした規範意識の低さが、道を踏み外す原因となった。

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 全国最大の人口を誇る巨大政令市であり、自治体改革のトップランナーとして注目される横浜市。事件は、その改革の旗印に暗い影を落としている。

 元区長と現職幹部が立件されただけではない。三人の副市長など幹部職員がパーティー発起人に名を連ね、局区長らが軒並み市職員への呼びかけ役になるなど「組織ぐるみ」で事件に関係した。

 中田市長もパーティーに出席したほか、二度も町田市入りするなど石阪市長を支援。「パーティーは参加しただけで、内容の相談は全くなかった」と釈明するが、庁内では「常識では考えられない。本当なら逆に政治家として不用意極まりない」との声も上がっている。

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 横浜市では四年前、前市長時代の市長室長二人が、公選法違反で逮捕された苦い経験がある。

 北薗前室長は石阪市長のために奔走した理由を「尊敬する先輩を送り出したかった」としているが、多くの関係者は「それだけでここまでするか」と首をかしげる。

 「右腕だった石阪市長を支援するトップの意向をくんだのでは。市長や副市長が名を連ねるパーティーだからこそ協力した幹部や職員もいた。中田市長の責任は最も重いと憤る職員もいる。

 石阪市長は容疑を否認し、争う構えをみせている。しかし、関係者によると、石阪市長と北薗前室長は電子メールや電話などで二十回以上、詳細に打ち合わせていたという。

 横浜地検は二人を在宅起訴する方針だ。トップや幹部がかかわった事件で混乱が続く横浜市と町田市。両市政が負ったダメージは計り知れない。(この企画は横浜支局・金杉貴雄、町田通信部・近藤晶が担当しました)

 

 

「全体の行為は地位利用に該当」 関与は重ねて否定

 

 東京都町田市の石阪丈一市長は二十六日の定例会見で、政治資金パーティーへの参加や献金を呼び掛ける電子メールが横浜市幹部に送信された事件について「全体の行為は(公務員の)地位利用に当たる」と述べ、横浜市職員側の行為は違法との認識を初めて示した。一方で、自身の法的責任については「(パーティーへの参加や献金の)取りまとめを依頼する文章のメールを送っていた、という事実を知ったのは(市長選後の)三月末。実態として地位利用が行われているとは思わなかった」と関与を重ねて否定した。

 さらに石阪市長は「横浜市の北薗義広・前市長室長から「送別会で後援会の資金づくりもできる」と持ちかけられた」と説明。発起人に名を連ねた横浜市副市長ら幹部のかかわりについては「(地位利用に抵触するかどうかは)横浜市の方で議論していると思った」などと述べた。

 また、パーティー参加の声掛けを念押しする二通目のメールは「前室長に言われて、娘が文案をつくったと思う」と説明した。

 

(写真説明) 1月に開かれた決起集会の応援に駆け付けた中田宏・横浜市長堰B「横浜改革の『始発』電車に乗ったのが石阪さん」と中田改革の旗振り役だったことを強調した=東京都町田市で