密室のメール(上) 町田市長パーティー事件 横浜市長側近2人暗転 石阪市長「起訴なら争う」 『東京新聞』社会面(2006.7.26)
関連資料
■パーティ問題 《(中田)市長は違うといっておられるようですけれど、(北薗)室長はうなずいて、自分が全部しょっかぶって行くつもりですとはっきりといったんです》 大貫のり夫ジャーナル(2006.7.8)
■パーティ問題 横浜市長側近 立件へ 政治資金規正法違反容疑 町田市長、近く聴取 『東京新聞』(2006.7.8)
■バーティー問題 町田市長を任意聴取 メール作成関与の可能性 『東京新聞』夕刊(2006.7.8)
■パーティー問題 町田市長、進退に波及も 市政への信頼揺らぐ 『東京新聞』東京版(2006.7.11)
■パーティー問題 『メールと原文は別物」任意聴取の町田市長 献金とりまとめ否定 『東京新聞』社会面(2006.7.11)
■政治資金パーティー問題 二転三転の町田市長 『東京新聞』神奈川版(2006.7.15)
■町田市長パーティー 「市長と長女2人で準備」 後援会幹部、把握せず メール、長女が送信か 『東京新聞』夕刊(2006.7.15)
■町田市役所など家宅捜索 石阪市長を書類送検へ 『東京新聞』(2006.7.16)
■政治資金パーティー問題で家宅捜索 横浜市職員に動揺 『東京新聞』神奈川版(2006.7.17)
■町田市長を刑事告発 政治資金パーティー問題 市民3人 「しんぶん赤旗」(2006.7.19)
■パーティー事件で町田市長 午後にも書類送検 『東京新聞』夕刊(2006.7.25)
■町田市長パーティー 資金集め 当初から意図 関係者証言 副市長らも了解か『東京新聞』夕刊(2006.7.26)
密室のメール(上) 町田市長パーティー事件 横浜市長側近2人暗転 石阪市長「起訴なら争う」 『東京新聞』社会面(2006.7.26)
「道義的責任は感じているが、法律上の責任や容疑は認めていない」。自らの政治資金パーティーをめぐり、横浜市幹部らに参加や献金取りまとめを呼びかける電子メールを送った疑いが持たれていた石阪丈一・東京都町田市長が二十五日、神奈川県警から政治資金規正法違反容疑で書類送検された。疑惑発覚から四カ月半。捜査の節目を迎えたこの日も硬い表情で弁明を繰り返す市長の姿に、刑事告発した町田市民は「市長を続ける資格はない」とあきれた。(1面参照)
「市民のみなさんに本当にご心配をおかけし、申し訳ない」。会見の冒頭、石阪市長が陳謝した。しかし、出処進退については「今のところ考えていない」。起訴されたら「裁判で争う可能性はある」とも。長女の関与に質問が及ぶと、笑みを見せ「長女にも違法性の認識はなかったと思う」と述べ、父子そろっての"無実"を強調した。
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二〇〇二年、全国最年少の三十七歳で政令市の市長に就任した中田宏横浜市長。石阪市長は、その右腕的存在だった。
市政改革を掲げる中田市長肝いりの行革組織・緊急改革推進本部(通称・エンジンルーム)の初代責任者に任命される。〇四年には区長の庁内公募に真っ先に手を挙げ、港北区長に就任した。
「やり手。やっかみもあったが性格も明るく周囲に人気があった」。かつての同僚は振り返る。
区長になって約二年。政令市の行政マンとしての実績が評価され、出身地だった町田市の市長選に担ぎ出される。町田駅前での告示第一声の場には、中田市長の姿があった。その支援と自民、公明両党の推薦を受けて、過去最多の六人が乱立した激戦を制した。
しかし、その手腕を発揮する間もない初登庁の翌日、本紙の報道で問題が発覚。石阪市長は「政治資金規正法について、しっかり認識していなかった」と釈明したが、その後の会見や議会での説明は、二転三転した。
神奈川県警から事情聴取を受けるなど、捜査が進展すると、発言を軌道修正し、政治資金パーティーへの参加などを呼びかけたメールへの関与を否定しはじめた。「私は実際のメールを読んでいない」「横浜市の北薗・前市長室長の指示で娘が送信した。私は報告を受けていない」
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ともに書類送検された横浜市の北薗義広・前市長室長は、中田市長就任直後に同室長に抜てきされた。トップダウンで改革の方向性を打ち出す中田市長の「懐刀」として庁内調整や議会各会派への根回し、市内経済界との窓口役をこなした。
石阪市長と親密になったのは、ともに中田市長の側近になってから。「表と裏」の立場で中田市政を支えてきた。
北薗前室長は本紙の取材に、石阪市長と話し合ってパーティーを開催したことを認め、動機をこう話していた。
「尊敬する先輩を送別したかった。餞別(せんべつ)を贈ろうと思ったが、町田市長選への立候補を控えていたので不明朗なお金であってはいけないと思い、政治資金パーティーにした」
しかし、その実態は送別の寸志を大きく踏み越える。副市長らを発起人に、上司から部下に参加を呼び掛けるという上意下達の公務員組織の"習性"を利用した資金集めにほかならなかった。
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「市政への信頼を確立することを大きなテーマとしたい。それが市役所の存在価値でもある」。今年三月九日の町田市庁舎での就任会見で石阪市長は、自信にあふれた表情であいさつした。だが皮肉にも行政トップとなった自らが、その信頼を裏切る事態を招いた。
石阪市長を刑事告発した町田市民の一人は、厳しく批判する。「市長本人が市民の信頼を失った。実の娘に罪をかぶせようとする人物に、市長を続ける資格はない」
(写真説明) 記者会見する東京都町田市の石阪丈一市長=25日夜、東京都町田市役所で
「責任を痛感」 中田市長謝罪
横浜市の中田市長は二十五日、記者会見し、「責任を痛感している」と謝罪。今後自らを処分する方針を明らかにした。しかし、同市の内部調査については、横浜地検が捜査の結論を出すまで結果の公表を控えるとした。
中田市長は「市民に不安感、不信感を抱かせるような事態となり、深くおわびします」と延べ、「早急に全容を解明し、関係者を厳正に処分したい」とした。
問題とされた政治資金パーティーへの自身の関与は「(パーティーに)参加しただけ」と強調。東京都町田市長選で石阪氏を応援した点については「応援するのにふさわしいと思ったが、今となっては町田市政に混乱を引き起こし、責任を感じる」と述べた。石阪市長の進退については「政治家として本人が判断しなければならない」とした。
この日、市役所内は重苦しい空気に包まれ、ある市職員は「警察は一部の人だけを送検したが、実際にはほかの幹部も大きな責任があるのではないか」と疑問を投げかけていた。
(写真説明) 中田横浜市長
町田市長パーティー事件の経過
05年9月30日 横浜市港北区長だった石阪丈一・町田市長が、町田市長選立候補を目指し、横浜市を退職
11月5日 横浜市のほぼ全局区長、副局区長らに石阪市長の政治資金パーティーへの参加と献金を呼び掛けるメールが送信される
14日 石阪市長の名前で再度パーティーへの参加を市職員に「声かけ」するように依頼する念押しメールが同様に送信される
29日 石阪市長の政治資金パーティーが横浜市内で開催される
06年2月 政治資金規正法違反に抵触する疑いが横浜市内部から指摘される
19日 町田市長選告示
21日 パーティー参加者や献金者に寄付金が返金される
26日 町田市長選で石阪市長が初当選
3月10日 東京新聞が政治資金パーティー問題を報道
27日 横浜市長選で中田宏市長が2期目当選。神奈川県警が北薗義広・横浜市長室長(当時)を事情聴取
7月25日 同県警が石阪市長と私設秘書だった長女、北薗・前市長室長を政治資金規正法違反容疑で書類送検