バッテリ研究室


3.データ比較の仕方

 ここでは、まだデータ比較の仕方の説明です。どのバッテリが良いとか悪いという話ではありません。注意してください。

【その1】

 前項2のデータの中で、まず、同じ20A放電した場合のコスモ2000とPOWERS3000のデータ比較をしてみましょう。

 放電器によるデータは以下の表のとおりです。

#17 コスモ2000 20A
#29 POWERS3000 20A
内部抵抗(Ω)36.237.4
容量(mA/H)1,9942,522
容量(mW/H)13,39917,048
平均電圧(V)6.726.76
@平均電圧(V)7.727.72


 この表から、
ということが分ります。

 では実際の放電曲線(グラフ)はどうなっているでしょうか。

  

 予測に反して、全域で明らかにPOWERSの方が電圧が上回っているのが分ります。でも表のデータではこれほど大きな差は無かったです。なぜでしょうか?
 表のデータは平均値です。コスモは確かにPOWERSに電圧で負けていますが、360秒でさっさと放電しきってしまっています。それに比べ、逆にPOWERSは、後半低い電圧のまま長く450秒くらいまで伸びています。そのため、計算結果は表の通りになったというわけです。

 こういった事から分ることは、例えば、数値上同じ容量であっても、低い電圧でダラダラと流すか、高い電圧でドッと流すかのどちらの特性であるかは、グラフを描いてみないとわからないということです。

 ダラダラでもいいから、走行時間を長くしたいのであれば、とにかく放電時間が長いバッテリを選べば良いです。逆に、高い電圧を保って、終わるときにはサッと終わるバッテリの方が、パンチ力が強く、走行中の電圧変化(徐々にパンチがなくなる)による特性変化も少なくてすむため、競技用に向いています。
 理想的な放電カーブは中盤の平らな部分ができるだけなだらかで、かつ、高い電圧を示し、終わるときはさっさと終わる(急激に落ちる)ものだと私は思ってます。ダラダラと走行しても楽しくないですから、ギリギリまで勢い良く走っていてもらいたいです。


【その2】

 次に、同じく30A放電のグラフ比較をしてみましょう。

 放電器によるデータは以下の表のとおりです。

#17 コスモ2000 30A
#29 POWERS3000 30A
内部抵抗(Ω)37.239.0
容量(mA/H)2,0752,616
容量(mW/H)12,09316,454
平均電圧(V)6.316.29
@平均電圧(V)7.477.24


 この表から、
ということが分ります。

 では実際の放電曲線(グラフ)はどうなっているでしょうか。

  


 電圧はコスモの方が上回ると思ったのですが、実際にグラフにしてみるとPOWERSと同等か低いです。これも前述したような「平均」という数字のマジックですね。

 また、20Aでは全域でPOWERSの方が電圧が上回ってましたが、今回は序盤はほとんど同等というグラフになりました。6.5V、70秒辺りまで同等です。それ以後はPOWERSの方が上回ります。

 このように、同じバッテリの比較なのに、放電電流の違いによって結果が変わることが分ります。これはその電池の特性の違いが大きく影響していると思われています。例えば30A放電を行うと、バッテリは50℃を超えるほど加熱します。電池は低温でも高温でもパワーが落ちてくるものなのですが、特にNiMHはその傾向が強いと言われています。さらに、NiMHは大電流放電がNiCDに比べて劣る、とも言われています。30Aで流し続けるような状況では基本性能的にNiMHはNiCDよりも低くなってしまうのかも知れません。


 参考までに、14A放電したもののグラフは以下のようになっています。

  



 これらのデータを読む時には注意が必要です。これらはあくまでも机の上の計測器で測ったデータに過ぎません。実際の走行状態とは似ても似つきません。実際には、スロットル操作が絶えず行われ、時には100Aという大電流が要求されたりするし、まったくゼロな場合もあります。
 特に、人間がパンチを感じるのは、スロットルをグイッと開けた時の立ち上がり方の勢いで判断しますが、計測器での測定は常に一定のものでしかないのです。

 実際の判断はあくまでも実走行させてのフィーリングが一番です。我々凡人レベルで測定することの出来る範囲では、こういったデータを丸ごと信じるのではなく、判断材料程度とか裏付け資料、または傾向の把握とかコンディションの確認として使う方が良いでしょう。



 最後にもう一度繰り返しますが、くれぐれも、「〇〇AではNiCDの方が上」とか、「POWERSの性能はこうだ」といったようなランク付けはしないでください。
 ここでは、あくまでも、「計測の仕方(放電電流値)により、結果が変わってくる」という事の説明をしているだけです。
 具体的な考察については、次章以降のレポートを参照してください。


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