バッテリ研究室


4.バッテリは気分屋

 余程のスペシャリストが高価な機材と膨大な時間を費やして計測する場合を除き、放電データ計測により得られるデータは毎回違ってきます。

 細々と実験するような私のようなレベルでは、極端な話、計測するたびに数値が上昇したり下降したりします。ですから、1度や2度のデータ計測で得られた数値を絶対視しないほうが良いです。あくまでも、「その時」示した数値であり、次もまた同じ数値を示すとは思わない方が良いと思います。
 もちろん、とてつもなく大きく上下するというものではなく、大体、ある一定の範囲の中で上下します。その幅が小さい場合もあれば大きい場合もあります。何回か計測して大体の範囲を見極めた上で、そのバッテリの傾向を把握するようにした方が良いでしょう。

 以下に、私の計測データの中から無作為にピックアップしたものをここで紹介します。とりあえず見易いように3本のバッテリそれぞれについて3回分のデータに留めておきます。


NiCD2000 コスモエナジー
10日後2日後14日後
内部抵抗(Ω)36.237.437.4
容量(mA/H)1,9941,9662,011
容量(mW/H)13,39913,31913,353
平均電圧(V)6.726.686.69
@平均電圧(V)7.727.647.63







NiMH3000 サンヨーセル EAGLE ZAP
10日後2日後14日後
内部抵抗(Ω)40.338.542.5
容量(mA/H)2,3552,3772,350
容量(mW/H)15.94315.792
平均電圧(V)6.776.72
@平均電圧(V)7.817.77







NiMH3000 赤パナセル POWERS
10日後2日後4日後
内部抵抗(Ω)37.441.138.0
容量(mA/H)2,5222,5272,544
容量(mW/H)17.04816,95617,197
平均電圧(V)6.766.716.76
@平均電圧(V)7.727.687.75






 上記のデータはあくまでも一例に過ぎません。「NiCD2000の傾向は皆同じだ」、とか、「NiMHパナセルの傾向は皆同じだ」、という風には読み取らないで下さい。あくまでも、「データが毎回同じとは限らない」という事しか言えません。
 逆にいえば、「このバッテリの平均電圧は〇〇Vだ」と聞いたとしても、それを絶対的なものだと思わない、ということでもあります。そのデータは何度も測ったうちの最高のデータで、そのデータを下回る方が多いかもしれません。あるいは、そのデータは最低のデータで、普通はそれ以上のデータを示すものなのかも知れません。とにかく我々一般人のレベルでは、1つのデータはあくまでも1つのデータでしかありません。たった1つのデータを絶対視しないようにすることが大切です。(もちろん、プロが行う大メーカーの計測データは話が別かも知れません) 



 さて、上のように計測毎にデータが変わることの原因は何なのでしょうか。
 私は、大きく分けて2種類あると思っています。1つはバッテリそのもののコンディションの違い。バッテリ毎の個体差もあれば、前回の使用状況や保管状況、さらには寿命による劣化などが影響してくると思います。もしかしたら”ならし”の性格付けも関わっているのかもしれません。(わかりませんが)
 ちなみに上記例の3本のバッテリは、全て半年以上前に入手したものです。使用頻度は、連日使用したり、数ヶ月空いたりとマチマチです。
 2つ目は計測環境や条件の違いです。これは温度や湿度、機材、計測手順などの違いによって変わってくるのだと思います。充電段階での条件の違いが影響することもあるのかもしれません。

 こういった要因を毎回全て同じく整えるというのは事実上不可能です。が、2つ目の計測環境や条件は、人間の側が注意すればある程度は等しく揃えることができます。私の場合、室内温度(もちろんバッテリ温度も)を一定にするとか、充電方法を同じにするとか、充電終了後120秒後に放電開始する、といったように計測条件を等しくするように心掛けています。1度決めてしまえば、あとは流れ作業で進めるだけなので、特に負担という負担にはなりません。


 さてさて、最後になってしまいましたが、上記データについてちょっと感じいることがあります。それは「内部抵抗」値のバラツキです。まだ感触に過ぎず、断言できないものなのですが、何となく僅かですがNiCDよりもNiMHの方がバラツキが多いように感じています。「内部抵抗」だけに着目したところで話にならないかもしれませんが、何らかのNiMHの特性上と関係するような事はないのでしょうかね。


←PREV      NEXT→



バッテリ研究室目次に戻る
ホームに戻る