バッテリ研究室


5.”ならし”と”カツ入れ”を考える

 ラジコンをやっていて”ならし”という言葉を聞いたことの無い人はほとんどいないと思います。メカ的なパーツならば部品と部品との擦り合わせを行うことで、”しっくり”くるようにすることです。当然お互いを削りあいながら、ピッタリくるようにさせることだから、例えば自動車のエンジンなどでは最初の数千Kmまでは細かい(目に見えない)金属性物質がエンジンオイル中に含まれてくるという話を聞きますね。だから1ヶ月もしくは1000Km走行時の初回点検時にオイル交換などを無料でやってくれたりするのだと思います。
 では、ラジコンで使うバッテリの”ならし”とはどういうものなのでしょうか。バッテリにパーツの擦り合わせなんて事があるのでしょうか?

 難しい理屈はちょっと置いておきましょう。実際に、どういう結果を得られるのか試してみました。
 バッテリは2400ストレートパックを使いました。NiCDです。それぞれ以下のようなものです。

@ABC
ATLASATLASコスモエナジー
MAXPOWER
ABC
スーパーモンスター
容 量
2400
2400
2400
2400
定 価
 
 
\7,200
\6,800
買 値
\3,500
\3,500
\3,500
\3,500
セル番号
EE
EI
EG
EI
ならし
×
(実走行のみ)
測 定
1ヶ月程使用後
新品時から
新品時から
新品時から

 @はならし無しなので、新品当初のデータは測定していません。(測定したら”ならし”になってしまうから…)
 買ってすぐから、他のバッテリと同じ使い方で普通に走行してきたものです。


【5-1.測定結果】

 では早速結果を見てみます。
 で、ここで1つ。同時に、”カツ入れ”についても実験してみました。30Aという大電流で放電してやって、その後、データが変わるか否かを試してみたものです。表中、赤色で仕切られた部分で30A放電を行い、その後20A放電で計測したデータを載せています。30A放電でのデータは記載していません。
 また、見やすくするためグラフがちょっと大きくなっています。(重くなってすいません)


@ATLAS
前回使用から4日後4日後12日後4日後
内部抵抗(Ω)35.835.8 35.7
容量(mA/H)2,2222,211 2,227
容量(mW/H)14,84214,813 14,943
平均電圧(V)6.686.70 6.71
@平均電圧(V)7.567.62 7.63





AATLAS
前回使用から新品2日後4日後12日後4日後
内部抵抗(Ω)35.234.034.7 35.2
容量(mA/H)2,3162,2882,216 2,261
容量(mW/H)15,37815,21514,758 15,080
平均電圧(V)6.646.65未記録 6.67
@平均電圧(V)7.547.56未記録 7.61





Bコスモエナジー
MAXPOWER
前回使用から新品3日後9日後12日後11日後4日後
内部抵抗(Ω)34.634.1 34.6 36.2
容量(mA/H)2,2552,211 2,222 2,222
容量(mW/H)14,99514,703 14,842 14,865
平均電圧(V)6.656.65 6.68 6.69
@平均電圧(V)7.527.51 7.58 7.60





CABC
スーパーモンスター
前回使用から新品3日後9日後12日後11日後4日後
内部抵抗(Ω)37.535.8 35.2 35.8
容量(mA/H)2,2052,205 2,172 2,211
容量(mW/H)14.55314,619 13,777 14,747
平均電圧(V)6.606.63 6.66 6.67
@平均電圧(V)7.477.43 7.58 7.61






【5-2.結果考察】

 例のごとく予めお断りしておきますが、これらのデータはあくまでも限られたデータでしかありません。全てのバッテリで同じ事がいえるようなものではありません。くれぐれも勘違いしないようにしてください。


 さて、まだ余りにサンプルが少ないので断言することは一切できませんが、しかし、得られた結果を受け止めて、その範囲に絞った上で何が言えるか考察してみましょう。

 まず、ならしありのデータA〜Cから、特に中盤域に着目してみるとならしを重ねるごとにデータが上昇していく、ということが読み取れます。これから、買ってすぐのバッテリは本来の性能を示さない(”寝ている”)という可能性があります。ただAでは、後半域では3回目のデータが最も低いことから、単純に全領域でデータが上昇していく、と言い切れるほどのものではなさそうです。

 ではならし無しのデータ@ではどうでしょう。1回目のデータが最も低いですが、2回目データが一番高いですし、単なる偶然というかバラツキの可能性もあります。
 あと、@は終盤の落ち込み方が揃っていますね。A〜Cは毎回バラバラです。これらから、1ヶ月程使ったバッテリは、ならしをしていなくても、コンディションが揃っている(性格も決まっている?)という風に言えるかもしれません。新品時はコンディションが揃わないようです。


 次に”パンチ”について見てみましょう。まず、平均電圧ですが、A〜Cとも3回目位で、1ヶ月程使った@の電圧と同等近くまで高まってきますが、それを上回ってはいません。同じくグラフの曲線を比較してみても、例えば@では300sec後に6.50Vを上回っていますが、A〜Cではそれを下回る事が多いです。
 もともと@のバッテリがA〜Cのものよりも優秀なバッテリである、という可能性もあります。が、もしも同等のポテンシャルであるとしたならば、A〜Cのバッテリは今後もデータ値が上がっていく予想できます。逆にいえば、数回のならし程度ではまだ本来のポテンシャルを示さない(”目覚めない”)といえるかもしれません。さらに、上記数字だけから考えると、放電器を使った特別な”ならし”をしなくても、そこそこ十分なパフォーマンスを発揮する、ともいえるかもしれません。ただし、実際の走行フィーリングや寿命などがどう変わるかは分りません。


 ところで”カツ入れ”30A放電の効果はどうでしょうか。
 さぁ、この結果をどう判断しましょうか。
 A〜Cでは、とびきり高いデータとはなりませんが、少なくとも上限と同等であり低くなることはないようです。もしかしたら30Aという”カツ入れ”の効果ではなく、単純に回を重ねたから、ともいえる可能性もありますが、でも、ならし期間?を終えたと思われる@を見てみても、特別ズバ抜けた結果ではないが上限と同等であり、悪くはない値となっています。
 これらだけから想像してみると、”カツ入れ”することによって、そのバッテリの上限に近いデータを示すことができる、という可能性があるかもしれません
 もしかしたら他の何らかの要因と関連していたり、計測を重ねていくうちに違った傾向となるかもしれませんが、少なくとも現状のデータを見てみると、そんな風に思えてきます。

 また、NiHMはNiCDと違うとも聞きます。ならしやカツ入れに関してNiMHでどのような傾向があるのか、機会があれば試してみたいと思います。



 繰り返しますが、これらは限られた少ないデータを深読みした個人的な独断考察です。あくまでも、私の場合の話で一般的なものだという訳ではありません。単に数字を読み取ってみただけものです。くれぐれも思い込みしないようにお願いします。


←PREV      NEXT→



バッテリ研究室目次に戻る
ホームに戻る