バッテリ研究室


6.驚異!マッチドバッテリ

 「マッチドバッテリ」と聞いて何を連想しますか?
 ラジコンを始めた頃の私は、自分に関係の無いもの、と思ってました。レースで0.1秒を争うような、そのために巨額の投資ができるような一部の人達のためのもの、という風に感じていました。そもそもバッテリなんてたかが電池、それに1万円もの大金を払うなんてバカらしいとさえ思ってました。

 ところが私の周囲の人達の中には、レースに出ないし出たこともないのにマッチドバッテリを使っている人が何人かいました。で、その人達はうまいし速い。マッチドバッテリについて聞くと、「全然違うよ!」と満面の笑みで答えてくれます。
 知りもしないで固定観念を持ち続けるようで悔しいので、とうとうヨコモの2000 FACTORY PACKを新品で手に入れました。そして走らせて見ると、、、うわちゃーはえぇ〜! どこまでも伸びる加速感に心を鷲掴みにされ、そのままストレートエンド先のコーナーを曲がることなく壁に激突。

 レースで勝つためだけでなく、気持ち良くなりたいからマッチドバッテリを使う。「それもアリだな」と思った2000年春の頃の私でした。



【6-1.測定条件】

 バッテリは以下のものを用意しました。というか、私の持っている計測データの中から抽出しました。つまり、このレポートのために改めて測定したものではなく、過去、機会があるごとに測定していたデータをここで紹介することになります。

ノンマッチドマッチド
2000コスモエナジー赤
\2,800
ヨコモ FACTORY PACK
\9,900
2400ATLAS ZAP(EEセル)
\3,500
ヨコモ peak matched plus4(EEセル)
\7,960
3000POWERS (赤パナセル)
\5,230
EAGLE ZAP (サンヨーセル)
\3,980
ヨコモ peak matched plus8 (サンヨーセル)
\7,960
    (価格は買値)

 マッチドバッテリはそれぞれ1回しか測定していません。もし、マッチドバッテリにもバラツキがあるとすれば、もしかしたら平均的なデータではない可能性もあります。例えばplus8は新品時の計測です。もし眠っていたとすれば、実力はこれ以上かもしれません。
 ただ、何分マッチドバッテリは高価で貴重なため、測定するくらいなら走行させたいという気持ちがあります。

 また、ノンマッチドの方は、数あるデータの中から比較的良いデータをピックアップしました。平均以下のデータはないと思います。
 特に3000は、EAGLE(サンヨーセル)のものとPOWERS(パナソニックセル)の両方を示してみました。サンヨーセルは他にもATLAS, KAWADAのデータがありますが、データ的にはこのEAGLEが概ね最も良好といえそうです。



【6-2.データ結果】

200024003000
コスモFACTORYATLAS ZAPヨコモplus4POWERS赤EAGLE ZAPヨコモplus8
内部抵抗(Ω)36.926.835.824.038.040.330.7
容量(mA/H)2,0381,9942,2112,3112,5442,3552,411
容量(mW/H)13,65413,73814,81315,92217,19715,94316,611
平均電圧(V)6.706.896.706.896.766.776.89
@平均電圧(V)7.747.787.627.787.757.817.94

 この表を見ると、、、もう一目瞭然ですね。「個体差があります」とかいう奥歯に物のはさまったような言い方をする必要はなさそうです。マッチドバッテリが非常に優秀なデータを示しているといえます。
 特に内部抵抗の低さが目を引きます。ガンガン電流を取り出せそうですね。電圧も高いです。容量の差があまりないのが意外です。基本的にマッチドバッテリは容量があるものだと思っていたのですが。
 ノンマッチドはあえて良好なデータを引っ張ってきたのですが、マッチドはそれを軽く上回っています。特にplus8は新品でも立派なデータを叩き出してますね。恐るべし、です。

 ただ注意して欲しいことが1つあります。ここで挙げたバッテリのうち、2400と3000のマッチドバッテリはバラセルでした。それをバッテリ博士Tommy氏に接続してもらいました。問題は接続の仕方です。電極同士を密接させ、その周りをハンダで固定するというTommy博士の長年の経験とノウハウが詰まっています。接続の仕方によって悲惨な事態に陥ることもあります。バッテリ本来の性能を引き出すことができるような高い接続技術があってこそといえるかもしれません。
 まぁ、慣れの問題なのかも知れませんが、私は怖くてトライしたことがありません。(^_^;)


 次にグラフを見てみましょう。




 7本もの線が入り乱れて少々見にくいですが、1つ1つ確認してみてください。
 やはりマッチドの素晴らしさが分ると思います。2000(黄),2400(紺),3000(水)いづれも、最後にスパッと落ち込んでいます。これがマッチドの性格を如実に表しています。ギリギリまで精一杯の仕事をして、終わる時にはサクッと終わる。逆にノンマッチドでは徐々に力が無くなってダラダラと続く傾向が読み取れると思います。
 さて、一例として2400に注目してみましょう。端子電圧が6.90Vになるまでに、ノンマッチドでは74秒(1分14秒)です。これがマッチドでは・・・なんと241秒(4分1秒)!です。およそ3.3倍、167秒(2分47秒)違います。凄いですよね。
 さぁ、マッチドバッテリに対するイメージは変わりましたか? 中には「もっと素晴らしいと思ってた」という方もいるかもしれませんね。



【6-3.お勧めマッチドバッテリ】

 もしも私が「マッチドバッテリのお勧めは?」と聞かれたら、迷わずヨコモのplus7をお勧めします。3000です。買値\5,940でした。plus8と比べると若干落ちますが、それでも若干です。コストパフォーマンスが良いです。接続を慎重に丁寧にできれば、十分な性能を示してくれると思います。

 参考までに plus8 と plus7 のデータを載せておきましょう。
 ただし、plus8は新品時のデータ、plus7は何回か使った後のデータです。コンディションが同等でないことを考慮してください。

ヨコモ plus7ヨコモ plus8
内部抵抗(Ω)33.030.7
容量(mA/H)2,3502,411
容量(mW/H)16,16816,611
平均電圧(V)6.886.89
@平均電圧(V)7.897.94






 ここで、恒例の但し書きです。
 ここで示すデータはあくまでも私の機材による私の計測の仕方でのものです。「マッチドが優れてる」というのはどうやら見ての通りですが、例えば同じノンマッチド同士でどれが良い悪いという事について決め付けるようなものではありません。
 第4章の通りバッテリは気分屋です。また、今回のデータは20A放電ですが、放電電流値が変わるとデータの上下関係も変わる可能性があります。上のグラフでは2000→2400→3000の順に優秀なバッテリのように見えますが、放電電流値次第で変わる可能性が大いにあります。それについてはこの章では一切関知していません。具体的なバッテリメーカー名と商品名を載せていますが、同じモノだからといって全てのバッテリが同じ数値を示すとは限りません。あくまでも私の持っているモノに限った話です。また、机上の数字と実際の走行フィーリング(実力)が一致するとも限りません。その辺り、ご理解よろしくお願いします。


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