バッテリ研究室


7.マッチドバッテリあれこれ

 パナソニックのNiMH3000第2(3?)世代セル、通称「銀パナ」が今年初めに出回り出しました。NiCDでサンヨーにコテンパにやられたパナソニックの意地なのかどうなのか、サンヨーを軽く凌駕するとの噂は瞬く間に広がり、JMRCA全日本選手権予選シーズンの突入もあり、しばらく品薄状態、争奪合戦が繰り広げられてきました。特に全日本ツーリングスポーツマンクラスは今年2001年から8分間走行。燃費の面から容量も重視される年です。案の定、全日本1次予選は銀パナの多かったこと多かったこと...
 そんな銀パナ一色状態をサンヨーが黙って見過ごすわけにはいきません。起死回生を狙うべく、新セルが投入され始めているところです。ただデザインは従来どおりなので一目でその違いが分からないのがもったいないのですが。

 今回は、サンヨー新セルは未入手なのでデータがないのですが、前章の続編というか、どちらかと言えば「改訂版」と言ってしまって良いと思いますが、前章のデータを流用しつつ、現在の手持ちの代表的なマッチドバッテリのデータを紹介しようと思います。本当はいろいろな面から深く考察したいところなのですが、まずは、今回はご紹介ということで。どうかご自分で考察してみて下さい。

 ただその前に。これ以降に進む前に第2章〜第4章を読んでください。バッテリデータの比較は単純で絶対的で普遍的なものでは決してありません。さまざまな不確定要因が存在し、様々な評価基準が存在します。あくまでも「1つのデータ」に過ぎないということを十分に理解した上で読み進んでください。


【6-1.測定したもの】

 バッテリは以下のものを用意しました。というか、私の持っている計測データの中から抽出しました。つまり、このレポートのために改めて測定したものではなく、過去、機会があるごとに測定していたデータをここで紹介することになります。

ノンマッチドマッチド
2000コスモエナジー赤
\2,800
ヨコモ FACTORY PACK
\9,900
2400ATLAS ZAP(EEセル)
\3,500
ORIONレーサー(EEセル)
\4,100
ヨコモ peak matched plus4(EEセル)
\7,960
3000ATLAS ZAP
\4,300
カワダGT3000R
\5,440
カワダGT3000R rank A
\11,040
ATLAS桧(サンヨーセル)
借用(1万2千円程度?)
TRINITYレーサー(銀パナ)
\12,150
ヨコモ peak matched plus8 (サンヨーセル)
\7,960
    (価格は買値)
    (太字はバラセルを自分で接続しストレート仕立て)

 ノンマッチド、マッチド共、充電方法、管理方法検討のために何度もデータ計測を行ってきました。数あるデータの中から比較的良いデータをピックアップしました。
 今回はノンマッチドとマッチドとの比較だけでなく、

  ・NiCDとNiMHの比較
  ・バラセルとメーカー製ストレートパックの比較

 にも注目してみるのも面白いと思います。

 ちなみにマッチドでカワダのrank Aは最上級、ATLASの桧も最上級、ヨコモのplus4(NiCD)もplus8(NiMH)も最上級、ORIONのレーサーは2番目、TRINITYレーサーも2番目のグレードです。
 ORIONレーサーは年末バーゲンで買ったモノです。もうこの値段では市場に出回ってないかもしれません。


【6-2.データ結果】

200024003000
コスモヨコモ
FACTORY
ATLAS
ZAP
ORION
レーサー
ヨコモ
plus4
ATLAS
ZAP
カワダ
GT3000R
カワダ
GT3000R A
ATLAS
TRINITY
レーサー
ヨコモ
plus8
マッチド
×
×
×
×
メーカー製ストレートパック
×
×
×
×
内部抵抗(Ω)36.926.835.825.724.039.132.937.535.733.5 30.7
容量(mA/H)2,0381,9942,2112,0942,3112,5382,9942,9722,6052,944 2,411
容量(mW/H)13,65413,73814,81314,40615,92217,02919,99919,58519,84217,583 16,611
平均電圧(V)6.706.896.706.886.896.716.686.516.746.75 6.89
@平均電圧(V)7.747.787.627.777.787.807.737.697.867.91 7.94


 バラセルバッテリ、いや、正しく言えば「自分で直接接続」の圧倒的内部抵抗の低さがわかります。ただその中でも、巷で言われる「NiCDに比べてNiMH3000は内部抵抗が高い」という噂はどうやら当たってるようです。内部抵抗が高いと電流の量もそれだけ多く取り出せません。NiCDに比べて「パンチ感」がないのはこういった事から説明できそうです。
 2000FACTORYはメーカー製ストレートパックですが、普通のメーカー製と異なり、バッテリの+極と−極が直接ハンダで接続されてます。つまり、自分で直接接続するのと同じような形態となってますので、内部抵抗値が低くなっています。他のメーカー製ストレートモノは薄い金属片で+極と−極を結んでます。その分、抵抗値が上がっているものと思われます。
 このことから、例えバラセルを買ってきても、キチンと上手に接続しないと本来の実力を引き出せない可能性があるということが分かります。

 ちょっと脇道に逸れますが、「パンチ感」について考えてみます。一般に、電圧が高くなくては多くの電流を流せない。が、もし、同じ電圧値の場合には、抵抗が低い方が、それだけ多くの電流を取り出せる。「パンチ感」とは少なくとも電圧と抵抗の相関関係で現れてくるもので、どちらか一方だけで言い切れるものではないと思ってます。

 話を戻しますが、銀パナが素晴らしいといっても、メーカー製ストレートパックでは他のバラセルマッチドを上回るのは難しいです。比較するならメーカー製ストレートパック同士、あるいは、バラセル同士でなくてはいけません。
 そういう意味では、今回のデータは完璧な比較になってないと言えます。本当ならばキチンと比較したいのですが、そこまでできる財力は持ち合わせてないため、今回はこのデータを読む側が頭の中で補正する必要があります。

 また、メーカー製ストレートパックの場合、電池本体の性能以外に、メーカーの接続技術が左右してきます。バラセルで素晴らしいものでも、メーカー製ストレートパックとなると期待はずれとなる可能性もあるということです。この辺りを見極めるためには、いろいろ経験とデータを持って、モノを見る目を養う必要がありますね。



 次にグラフを見てみましょう。





 11本もの線が入り乱れて少々見にくいですが、1つ1つ確認してみてください。

 plus4(NiCD)が電圧で1つ抜けていますが、しかしもうほとんどNiMHでもNiCDマッチドと同等のデータとなってますね。その上で容量が確実に増えている。時代は進んでいます。
 また、同じカワダ製のGT3000Rを比較してみてください。ちょっとショッキングですが、マッチドを全域で上回ってます。直接接続とメーカー製接続の違いでしょうか。もしかしたらGT3000Rという特殊性が影響しているのかもしれませんが。

 話題の銀パナですが、放電時間(容量)は驚異的です。GT3000Rと同等ですが、しかし全域で電圧は上。ATLAS桧を完全に上回っています。グラフではバラセルのデータと混在してるため、素晴らしいという印象が薄いかもしれませんが、メーカー製ストレートパックでこの結果は十分満足できるものと思います。更に見づらいのですが、前半60秒までの電圧は2000FACTRORYと1番を争うほどとなってます。これがバラセルなら凄いことになりそうです。また、私の財力の無さから今回の銀パナはレーサー(2番目グレード)ですから、トップグレードのチームだとどうなるのか、そういう期待も抱かせます。
ただバラセルものになると、有力なバッテリが多く存在します。仲間がとったデータですが、例えば前の型のパナセル(赤色)ものでも、REEDYのR3Kは圧倒的なデータを叩き出していたようです。メーカーによる差異(バラツキ、当たり外れ・・・)も無視できないため一概に言えませんが、いろいろ興味が尽きないところです。

 ただ身近な話だと、やはり話題のサンヨーNiMH新セルがどうなのか気になりますね。


 さぁ、いろいろ比較してみました。ただ、今一度考え直してみてください。マッチドが素晴らしいのは分かったけど、それいくら? となった時、ちょっと手は出ない金額ですよね。
 もしもこの中から選ぶとするならば、ランタイム重視で練習を重ねるためのものならば、コストパフォーマンス的にはGT3000Rのバラセル・ノンマッチドものが良さそうです。
 怒涛のパワー感にシビレたいというならば、plus8は非常に割安感があります。ただコストパフォーマンスという点で見ると、前章でも紹介しましたが、やはりplus7(買値\5,940)の方がお買い得感が高いです。この値段でこのパフォーマンスは他メーカーの追随を許しません・・・かもしれないです。





 ここで、恒例の但し書きです。
 ここで示すデータはあくまでも私の機材による私の計測の仕方でのものです。私の取ったデータについて比較検討しただけに過ぎません。私の感想は述べていますが、何が優秀かどうかを決めるものではありません。
 第4章の通りバッテリは気分屋です。また、今回のデータは20A放電ですが、放電電流値が変わるとデータの上下関係も変わる可能性がありますが、それについてはこの章では一切関知していません。具体的なバッテリメーカー名と商品名を載せていますが、同じモノだからといって全てのバッテリが同じ数値を示すとは限りません。あくまでも私の持っているモノに限った話です。また、机上の数字と実際の走行フィーリング(実力)が一致するとも限りません。その辺り、ご理解よろしくお願いします。


←PREV      NEXT→



バッテリ研究室目次に戻る
ホームに戻る