KUROFUYAMA
黒斑山 (2404m)

浅間山 (2568m)

前掛山 (2524m)
   東面から見た、黒斑山 (2404m)
平成18年10月22日(日), 日帰り
   ★ 総所要時間: 3 時間 10分
   ★ ハイキング標高差: 404 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 日本でも有数の活火山である 「浅間山」 (2568m) は、長野・群馬の県境、上信越高原国立
公園の東南に位置する三重式成層活火山で、活動度分類においては特に危険度の高い
ランクA」に指定されている。 現在、日本で活動している火山の中では、最も内陸側に位置し
ている為、大噴火を起こすと関東一円に甚大な被害をもたらす事が容易に想像される。
危険な存在の山である反面、縦縞の雪(溝)を大きな山肌に刻み噴煙を頭上にたなびかせる
堂々とした山容は、雄大で美しくさえもある。
標高は特筆するほど高くはないが、周辺にそれ以上高い山がない為、どこからでも多くの
人々の目を引き、軽井沢周辺のシンボル的存在となっている。

  黒斑山・山頂から眺める、浅間山 (2568m)

軽井沢側に「小浅間山」 (1655m) 、御代田町側に「石尊山」 (1668m) を衛星峰 (溶岩円頂
丘) として従え、内側の第二外輪山である 「前掛山」 (2524m) が、現在活動中の火口丘
」 (2568m) のすぐ西縁にある。
現在の 浅間山 とは、一般的に 釜山 を指しているが、西側から見ると 前掛山 とほぼ一体と
なっているので、前掛山も含めて 「浅間山」 と総称される事が多い。
更に、最も古い第一外輪山にあたる 「黒斑山」(2404m), 「剣ケ峰」(2288m), 「牙山(ぎっぱや
ま)」, 「蛇骨岳」(2366m) らが、半円形に並んで西脇を囲んでいる。 そして、第一外輪山から
峰高原
を隔てて、「高峯山」(2092m), 「篭ノ登山」(2227m), 「水ノ塔山」(2202m), 「湯ノ丸山
(2101m), 「烏帽子岳」(2066m) などと続く 2000m超級の山々が、「浅間連峰」(烏帽子火山群)
といわれる山である。 我らインチキ山屋は、一昨年この内の 篭ノ登山〜水ノ塔山 に登頂    
したのだが、残念ながらこの時はガスに撒かれて浅間山を望むことはできなかった。(山と高
原・遊歩記, Vol.23 :「篭ノ登山」参照)

     トーミの頭より、牙山周辺と剣ヶ峰(奥の峰)

浅間山への登山は、昭和48年(1973年)から規制され 『火口から半径4km以内立ち入り禁
』 とされた。 この為、第一外輪山の最高峰である黒斑山への登山が イコール(=)浅間山登
山 とされ、多くの登山者が訪れる人気の高い山となった。 実際に、黒斑山の山頂から望む本
体・浅間山の威容は迫力満点で、まさしく最高の展望スポットである。
ただ、長らく続いていた登山規制は、2001年の夏に大幅に緩和され、火口から 500m手前の
第二外輪山・前掛山まで 登れるようになったので、近年は "前掛山=浅間山登山" の図式に
変わってきていた。
ところがである、ご存知のように 浅間山は 2004年9月に中規模の噴火が発生し、再び 『火
口から半径4km以内立ち入り禁止』 の規制が行われたのである。 まさに "生きた山" である
浅間山は、24時間の観測・監視体制下にあるので、登山の際には警報や最新の規制情報に
基づき慎重に行動しなければならない。
その後、昨年の夏頃には再び鎮静化して規制も緩和されたようだ。 今回の山行に際して、直
前に調べた情報によると、『 現在の浅間山火山活動レベルは1:火口から概ね2kmのところま
で (登山者の自己責任において前掛山まで) 登山可能 』 と、されていた。 せっかくであるか
ら、前掛山( =浅間山) に登っておきたいとも思ったのだが、とりあえずは黒斑山に登り、それ
から考えることにした(笑)。

         浅間サンライン・小諸付近から見た、
黒斑山(左側)と剣ヶ峰(右の手前側)、 右奥に頭だけ出ているのが浅間山、この位置からは黒斑山が
大きく見える。中央の突起は牙山

黒斑山とは、浅間山の西側を半円形状に取り囲む 第一外輪山の最高峰(2405m峰)であり、
また、幾つもの峰からなる 第一外輪山の総称 でもある。
主な峰は、北から順に 「鋸岳」(2366m), 「Jバンド」(2254m), 「仙人岳」(2319m), 「蛇骨岳
(2366m), 「黒斑山」, 「トーミの頭」, 「槍ヶ鞘(やりがさや)」 など、大小10にも及ぶ。
西側面のなだらかな緩斜面に較べて、浅間山に面した東側は鋭く切れ落ちた急崖で、極端な
非対称山稜
であり 典型的な外輪山 の姿をしている。 実際に見た東面からの眺めは壮観で、
「スゴイ!!」の一言だった。
浅間山の対面展望と代替登山としてだけでなく、この山に多くの登山者が集まるのには他に
も理由があるようだ。 夏場は豊富に咲き乱れる高山植物が美しく、秋には黄色く色づくカラマ
ツ林などの紅葉と黒い岩肌とのコントラストが神秘的ですらあるという。

     
     トーミの頭から望む、黒斑山(左の大ピーク)と、北に連続する第一外輪山の東側絶壁面

早朝に出立して関越自動車道から上信越自動車道に入る。 険しい山容をした「妙義山」の
はるか後方に浅間山の頭が見えてきた。 群馬と長野の国境、かつて鉄道の難所として知られ
る 「碓氷峠(うすいとうげ)」 に差し掛かると、標高があがり一段と冷え込んできた。 計10個に
も及ぶ高速のトンネル群を抜けると、曇りぎみだった関東側の天気とは一変して朝日が眩しい
くらいの好天となった。浅間山と浅間連峰もスッキリと見渡せる。
小諸ICで降りて、「浅間サンライン」を経由して 「チェリーパークライン」に入る。 ここからは、
浅間山・登山口のある車坂峠まで一本道だ。 途中、浅間山荘から前掛山へ直接向かう 「
山館コース
」 の登山道を右に分け、「黒斑コース」は直進して高峰高原に向かう。
登山口の 「車坂峠P」 は、高台に建つ 高峰高原ホテル のすぐ横にある。 無料駐車場に車
を停め、道路を挟んだ向かい側に見えている登山口前広場に向かう。 すでに標高は2000mに
達しており、この高峰高原からも 浅間連峰 がよく見渡せる。 とりわけ直近の篭ノ登山・水ノ塔
山の眺めが素晴らしい。

              露出した溶岩が点在するカラマツ林を登る

登山口前には、まず浅間山の現在の火山活動と登山規制について記された 案内&警告板
が目につく。 これによると、『現在の活動レベルは1(静穏状態で噴火の可能性は低い)、前
掛山までは登山が出来ます。』 とある。 ただし、朱書にて 『浅間山は爆発的な噴火をする活
火山です。登山は自己責任で! 』 との、注意書きも添えられていた(!!)。
まずは黒斑山を目指すが、はじめに2つの登山ルートの内、どちらかを選択しなければなら
ない。 一般的には、登りが 「表コース」、下りに 「中コース」 を利用するのがベター(!?) との事
なので、迷わず表コースから登ることにした。

露出した黒い溶岩が庭石のように点在する、黄色く色づいたカラマツの林を緩やかに登る。
ほどなく 「車坂山」 (2055m) のピークに達し、これを通過して一旦鞍部まで下り、ふたたび針
葉樹林帯の山腹を登ってゆく。 この辺りから急登が始まるが、途中に樹林帯が途切れるガレ
場(露地) が何箇所か現れるので、西側の展望が開けて気晴らしにちょうどいいタイミングで小
休止しながら進めた。 なるほど! 表コースとはそういう事か…、と思った(笑)。 篭ノ登山をはじ
めとする浅間連峰の山並みが、小休止のたびに小さくなってゆく。

前方に黒斑山の主稜線が見えてくる

やがて前方には、黒斑山に続く主稜線が見えてくる。 もうひと登りして、鉄製の避難シェルタ
ー前を過ぎ、外輪山の南端にあたる 「槍ヶ鞘」に達すると、ようやく浅間山が姿を見せた。
誰もが 「わあーっ」 と歓声をあげたくなるような、迫力と威圧感がビシビシと伝わってくる。
槍ヶ鞘の先端に出ると 「トーミの頭」 が間近に現れ、その断崖の急登を歩く登山者たちの姿
も見えた。 稜線伝いに浅間山を右手に見ながら歩を進めるが、右脇は絶壁となって切れ落ち
ているので、景観に見とれて転落しないように注意が必要だ。 緩やかに鞍部へと下り、噴火痕
壁脇の急登を一気に登りつめてトーミの頭へと出る。

   トーミの頭(左上)へ、断崖脇の急登を登る

トーミの頭とは溶岩堆積のピークで、その東面は数百メートルも切れ込む断崖絶壁である。
真下の 「湯ノ平」 を覗くとチト怖い! 、 落ちたらまず助からないであろう(!!)。
浅間山の右脇 「剣ヶ峰」 と、まるで巨大な牙を逆立てたようにも見える 「牙山(ぎっぱやま)」
周辺を眺めると、大昔の大爆発の凄まじさが想像できる。
左側に目を向ければ、黒斑山を荒れた東面から眺めることができ、そこから弧を描くように続く
第一外輪山も一望の下だ。 トーミの頭から一旦下って外輪山の稜線を北に進むと、浅間山の
監視カメラ塔を過ぎて 間もなく 黒斑山・山頂 (2404m) に到着した。

                  黒斑山・山頂 (2404m)

真正面に位置する浅間山の姿は、既によく見えていたのだが、一番標高が高い山頂からは
噴煙を上げる釜山の火口も見ることができた。
実はこの位置から見えている浅間山は、正確に言うと 9割以上が前掛山である。 よく見ると
山頂付近から左肩にかけて、前掛山との境目を確認することが出来る (写真ではチョッと判り
ずらいが…)。初冬の弱冠雪時や、春の残雪期などに見られる、大きな山肌に幾つもの雪筋が
縦縞模様となった美しい浅間山の姿は特に有名で、多くの写真が公開されている (自分も幼少
の頃から、何度となく実物を遠目に見ている) が、その殆どがこの黒斑山からの撮影である。
ツマリ、あの有名な姿は前掛山がもたらした景観なのだ。今回はまだ、冠雪してなかったので
その姿を間近で見ることはできなかったが、特徴的な縦縞模様の山肌は肉眼でもハッキリと確
認できた。

     
    浅間山と、賽ノ河原(左裾)〜湯ノ平(手前)  縦縞の前掛山と、釜山・火口 (境の稜線が見える)

山頂で早めの昼食をとりながら、正面の 浅間山(前掛山) を眺めノンビリとし、この後の行動
を考える。 せっかくだから、正面の前掛山に登り火口の手前500mまで迫るか…?! それには、
ここから外輪山を北に縦走し 「Jバンド」 から 「賽ノ河原」 に降りて湯ノ平まで歩き、前掛山分
岐から 直線的に前掛山の山肌をひたすら直登して稜線に出る必要がある。 所要時間にして
前掛山頂まで2時間半はかかるだろう。 下山は湯ノ平口まで戻って、トーミの頭に絶壁の東
面を登り返してから 車坂峠の登山口に戻るとなると、ザッと3時間はかかる計算だ。
時に午前10時、時間的には暗くなる前に車坂峠Pまで戻れそうだが…、日曜日だから道路は
混雑しているので、帰宅時刻はかなり遅くなるであろう。 それに、翌日は仕事だし…
後のことを考えると、無念の涙を呑んで前掛山への登頂を断念することにした!!  ッテいうか、
ホントは足腰に自信がなかったのだが…(笑)!!

  トーミの頭と槍ヶ鞘の鞍部より見た、浅間山 

黒斑山からの素晴らしい浅間山の眺めを堪能し、下山することにした。 往路を少し引き返す
と、トーミの頭の手前で 「中コース」 との分岐点に出る。 浅間山を見納めして、中コースへと
下る。 このコースは、樹林帯の尾根の山腹をえぐって登山道を確保したようで、しばらくは掘り
下げられた緩やかな坂道を下ってゆく。 中間地点で薄暗い樹林帯を抜け、広いガレ場に出る
と 正面に篭ノ登山や、遠く 北アルプス方面 も望むことが出来る。
途中、傾斜面の長い急坂を滑り降りるように下る箇所もあったりして、往路とは全く違った経
路は、変化があってなかなか面白かった 。やがて、カラマツ林と草地の平坦な道に変わり、出
口となる中コース登山口に辿り着いた。

     中コース・中間点から、高峰高原と篭ノ登山方面

好天とすごしやすい気候に恵まれ、快適な山登りとなった。 下山後は、車坂峠から篭ノ登山
方面に車で5分ほど未舗装の林道を走り、一軒宿 「高峰温泉」の日帰り入浴を利用した。
ひなびた雰囲気と泉質は良かったのだが、とにかく風呂が狭く3人しか湯船に入れないし、洗
い場には何も置いてない。 湯をかぶって汗を流しただけだった。
最初に駐車した場所のすぐ隣り 「高峰高原ホテル」でも日帰り入浴が可能だったようなので、
そちらにすればよかった(笑)。
( 2006.11.5記 )


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