浅 間 山 ASAMAYAMA
釜 山 (2568m)

前掛山 (2524m)

高 峰 高 原
      浅 間 山  ( 2568m )
平成23年 10月26日(水), 日帰り
   ★ 総所要時間: 8時間 35分
   ★ ハイキング標高差: 549 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 日本でも有数の活火山である 「浅間山」 (2568m) は、長野・群馬の県境、上信越高原国立
公園
の東南に位置する三重式成層活火山で、活動度分類においては 「ランクA」指定 の、
特に危険度の高い山である。 現在、日本で活動している火山の中では、最も内陸側に位置し
ている為、大噴火を起こすと 関東一円に甚大な被害をもたらす事が容易に想像される。
危険な存在の山である反面、縦縞の溝を大きな山肌に刻み 噴煙を頭上にたなびかせる堂々
とした姿は、雄大で美しくさえもある。
標高は 特筆するほどではないが、不毛の地と化した山肌をむき出して ドッシリと構えた山容
は、標高以上の大きさと 壮大なスケールを感じさせる 名峰だ。  独立峰であり、かつ周辺にそ
れ以上高い山がない事もあって、 どこからでも多くの人々の目を引き、軽井沢周辺のシンボル
的存在となっている。

            トーミの頭より、浅間山(前掛山)と 湯ノ平

 軽井沢側に 「小浅間山」(1655m)、御代田町側に 「石尊山」(1668m) を 衛星峰(溶岩円頂
丘) として従え、内側の第二外輪山である 「前掛山」(2524m) が、現在活動中の火口丘 (浅間
山・本峰) 「釜山」(2568m) のすぐ西縁にある。
現在の 浅間山 とは、一般的に 釜山を指しているが、西側から見ると 前掛山と一体となって見
える (標高もほぼ同じ) ので、前掛山も含めて 「浅間山」 と総称される事が多い。
更に、最も古い第一外輪山にあたる 「黒斑山」 (2404m) をはじめとした、大小10 もの峰々が半
円形に並んで西脇をとり囲んでいる。 そして、第一外輪山から 高峰高原を隔てて、「高峯山
(2092m), 「篭ノ登山」 (2227m), 「水ノ塔山」 (2202m), 「湯ノ丸山」 (2101m), 「烏帽子岳」(2066
m) などと続く 2000m超級の山々が、「浅間連峰」 (烏帽子火山群) といわれる山である。
我ら "インチキ山屋" では、これまでに 篭ノ登山〜水ノ塔山、および 黒斑山に登頂している。

      車坂山より望む、篭ノ登山〜水ノ登山

 浅間山への登山は、火山活動の状況に応じて規制され 「レベル3」では 『火口から半径4km
以内立ち入り禁止』  ( 「レベル2」 では2km以内,第一外輪山まで) とされている。
この為、レベル3 では入山不可であるが、レベル2 の時には 第一外輪山の最高峰である 黒
斑山への登山が  イコール(=) 浅間山登山 とされ、多くの登山者が訪れる人気の山となった。
実際に、黒斑山の山頂から望む 本体・浅間山の威容は迫力満点で、まさしく 最高の展望スポ
ットである。
ただ、長らく続いていた登山規制は、2001年の夏に大幅に緩和され、「レベル1」 の火口から
500m 手前の 第二外輪山・前掛山まで 登れるようになったので、近年は "前掛山 = 浅間山
登山"
の図式に変わってきていた。 ところがである、2004年9月に 中規模の噴火が発生し、
再び 『火口から半径4km以内立入禁止』 の規制が行われたのである。 その翌年の夏頃には
再び鎮静化して規制緩和されたが、その後も 小規模の規制と緩和を繰り返して現在に至って
ている。
まさに "生きた山" である浅間山 の状況は、24時間の観測・監視体制下にあるので、登山の
際には 警報や最新の規制情報に基づき慎重に行動しなければならない。
今回の山行に際し 『浅間山登山情報』によると、『現在の火山活動レベルは1 (静穏状態),
火口から概ね 500mのところまで (登山者の自己責任において前掛山まで) 登山可能』 と、
されていた。
浅間山・本峰へは依然として立入禁止 であるので、現在では 前掛山の山頂が = 浅間山・
山頂 として扱われている。

             登山口に掲示された、噴火警戒レベル


  浅間山(前掛山) への登山コースは、主に2本。 いずれも 6時間超の、中級レベル以上
のロングコースだ。 浅間山荘・登山口(1410m) を起点とする 「火山館コース」は、標高差
1110mで 距離:約6.3km , 車坂峠(黒斑山)・登山口を起点とする 「黒斑山縦走コース」は
標高差550m, 距離7.5km となっているが、このうち我らは、標高差の少ない後者のコースを少
しショートカットして (距離を約4.5kmとして)、挑戦する事にした。
本コースの前半部分は、ちょうど 5年前に登頂した 黒斑山への登山ルートと全く同一なの
で、登山道の様子がわかっている。 それも、このコースを選択した理由の一つだ (笑)。

      槍ヶ鞘の手前、姿を見せた浅間山 


 上信越自動車道の小諸ICで降り、「浅間サンライン」を経由して 「チェリーパークライン
に入る。 そこからは、黒斑山・登山口のある 車坂峠まで一本道だ。  途中、浅間山荘から前
掛山へ直接向かう 火山館コースの登山道入口 を右に分け、黒斑山コースは 直進して高峰
高原に向かう。 目指す「車坂峠P」は、高台に建つ高峰高原ホテルのすぐ横にある。
無料駐車場に車を停め、道路を挟んだ向かい側に見えている 登山口に向かう。 すでに標高
は 2000mに及ぶ高さで、この高峰高原からも 浅間連峰がよく見渡せる。 とりわけ直近の篭ノ
登山・水ノ塔山 の眺めが素晴らしい。
だが、ここへの到着時刻が遅くなってしまい、すでに昼前である。 長い行程と自分たちの脚
力を考えると 一抹の不安がよぎったが、絶好の天候と 浅間山の魅力に誘われて 登山口に
立っていた (笑)。

 登山口前には、まず 浅間山の現在の火山活動と登山規制について記された 案内&警告
が目につく。 これによると、『現在の活動レベルは1 (静穏状態で噴火の可能性は低い)、
前掛山までは登山が出来ます。』 とある。 ただし、朱書にて 『浅間山は爆発的な噴火をす
る活火山です。登山は自己責任で!
』 との、注意書きも添えられていた (!!)。
まずは黒斑山を目指すが、はじめに 2つの登山コース から どちらかを選択しなければなら
ない。 ここでは、前回同様の 「表コース」 で登ることにした。

        縞枯れ現象がみられる、黒斑山の西面

 露出した黒い溶岩が庭石のように点在する、黄色く色づいた カラマツ林を緩やかに登る。
ほどなく 「車坂山」(2055m) のピークに達し、これを通過して 一旦鞍部まで下り、 ふたたび
針葉樹林帯の山腹を登ってゆく。 この辺りから急登が始まるが、途中に樹林帯が途切れた
露岩地が 何箇所か現れるので、西側 (後方) の展望が開けて気持ちがいい。 ちょうどいい
 タイミングで小休止しながら進め、篭ノ登山 をはじめとする 浅間連峰の山並みが、そのたび
に小さくなってゆく。
やがて前方には、縞枯れ現象がみられる 黒斑山の西面 が見えてきた。 鉄製の避難シェ
ルター
前 を過ぎ、外輪山の南端にあたる 「槍ヶ鞘(やりがさや)」 に達すると、ようやく浅間
山の一部が姿を見せた。  誰もが 「わあーっ」 と歓声をあげたくなるような、迫力と威圧感が
ビシビシと伝わってくる。 その先の展望ピーク 「赤ゾレの頭」 で休憩をとる事にした。

                 
                      赤ゾレの頭 より望む、トーミの頭 と 浅間山

浅間山の全景と 「トーミの頭」 が間近で丸見えとなり、断崖の急登 を歩く登山者たちの姿も
見える。 ここからでも、すでに圧巻の眺めだ !!  
更に 稜線伝いに浅間山を右手に見ながら 先へと歩を進めるが、右脇は絶壁となって切れ
落ちているので、景観に見とれて転落しないように注意が必要だ。 緩やかに鞍部へと下り、
噴火痕壁脇の急登を 一気に登りつめてトーミの頭へと出る。

    
      トーミの頭より、黒斑山 (左端)から連なる 第一外輪山 の火口壁 (東面)と 湯ノ平高原

 トーミの頭とは溶岩堆積のピークで、その東面は数百メートルも切れ込む断崖絶壁である。
真下の 「湯ノ平」 を覗くと チト怖い!  落ちたらまず助からないであろう。
浅間山の右脇 「剣ヶ峰」 (2281m) と、まるで巨大な牙を逆立てたようにも見える 「牙山(ぎっ
ぱやま)」 周辺を眺めると、大昔の大爆発の凄まじさが想像できる。 左側に目を向ければ、
黒斑山の 荒れた東壁面を眺めることができ、そこから 弧を描くように浅間山の西側を三日月
状にとり囲む 第一外輪山も一望の下だ。
第一外輪山は、すぐ横の 黒斑山を最高峰(2405m峰) として、北端から順に 「鋸岳」(2366m),
Jバンド」(2254m), 「仙人岳」(2319m), 「蛇骨岳」(2366m) など、大小 10 にも及ぶ ピークの
連続だ。 西側山面の なだらかな緩斜に較べて、浅間山に面した東側は 鋭く切れ落ちた急
崖で、その極端な非対称山稜は 典型的な外輪山の姿をしている。 実際に見た東側面から
の眺めは壮観で、「スゴイ !!」 の一言だ。

   草すべり 分岐より、トーミの頭と 剣ヶ峰(奥) 

 トーミの頭から 一旦下って外輪山の稜線に出ると、下の 湯ノ平 に降りる分岐が現れ、これ
を直進すれば 間もなく黒斑山の山頂に到達する。 ここまでが、5年前に訪れた山登り [ Vol.
32 : 「黒斑山」 ] と全く同一のルートだ。
この先、本コース後半戦 の前掛山へは、直進して黒斑山から第一外輪山を縦走し、北端の
Jバンド」 と呼ばれる岩場から 「賽ノ河原」 に降り、そこから前掛山・分岐に向かうのが基本
コース (?) となっているが、ここで我らは時間と体力を稼ぐため (笑)、 縦走せずに 分岐から
草すべり」 を通って直接、湯ノ平 に出る事にした。
ただし、草すべり と呼ばれるルートも 難所の一つだ。  急坂の岩場を下ってから、急斜面の
草地に刻まれた 狭い登坂路 (片側は崩れやすい路肩で、滑りやすい) をつづら折りに降り
てゆく。
     
           湯ノ平口・分岐               湯ノ平から、前掛山(浅間山) に向かう

やがて 最低部の草原帯に達し、「湯ノ平口」 の分岐に出た。 ここで、浅間山荘からの 火山
館コースと合流する。 湯ノ平 は広々とした草原で、夏場は花の名所としても知られる人気の
スポットだ。 一休みした後、秋の草原を 前掛山へと足早に向かう。
緩やかな登り勾配を歩き 「賽ノ河原 (前掛山)・分岐」 に至る。 先の 第一外輪山縦走ルー
トとは、ここで合流する。 分岐には小さなゲートが置かれ、この先の登山ルートに対する注意
書き (警告) があった。 第2段階の規制 (活動レベル2) 時は、ここからの立入が禁止となるの
であろう。

    
          いよいよ不毛の地へ             中腹から見下ろす、第一外輪山と 賽ノ河原

分岐を過ぎると 勾配は徐々にきつくなり、火山らしい砂礫の荒涼とした 不毛の道となる。 風
を遮るものが何もないので砂が舞い、おまけに この日は冷たい北風が吹きつけていたので、
防寒服を重ね着した。 高度は一気に上昇し、みるみる 湯ノ平と第一外輪山が小さくなってゆ
く。 何度か 小休止を挟みながら着々と登り切って、ようやく 前掛山の 「稜線出会い」 に辿り
着いた。
    稜線出会い, この先、釜山 へは立入禁止 

ここで初めて 浅間山本峰・釜山 の頂部がはっきりと視界に入る。 その釜山へのルートには
ロープが張られ、立入禁止の警告板が付けられている。 風向きによっては、この辺りは既に
噴煙 (毒性のある火山性ガス) の影響を受けるのであろうが、この日は 幸か不幸か (?) 北
風が強く吹き抜けており、ガスの臭いは全くない。  その代わり、ハンパ じゃない極寒の強風
で、ボヤボヤ していたら 吹き飛ばされそうな勢いだ!! (苦)。
ここから右側の 旧火口に入る。 ここで初めて、前掛山が 第二外輪山であることを実証する
旧火口壁の内側が見られるのだ。 そして、前掛山が 浅間本峰とは別もの として、確かに存
在しているという事も、改めて実感した (笑) !?

               前掛山の 旧火口壁(内側)

 内側から見る 前掛山の火口壁も凄い迫力で、そこから稜線の先に 最高地点を示す山頂
が立てられているのが見える。 旧火口内にも カマボコみたいな 鉄製の避難ごう が2棟
並んで建てられていた。 ここまで来たら 山頂を踏まずに帰る事は出来まい!  稜線上はカナ
リの強風と極寒ではあるが、マユと意を決して 山頂を目指し、稜線 (火口壁) に上がる。

         
            前掛山の稜線上を進む、前方のピークに「 浅間山 」の山頂標が立つ

まるで 月面のような荒涼とした砂礫の原を、約20分 強風と格闘 (?) して、ようやく 前掛山・
山頂
(2524m) に到着した。 山頂標には 堂々と 「浅間山」 と表記されている (笑)。
極寒である事を除けば、山頂からの 360度の大展望 は最高に素晴らしく、まさに圧巻だ。
富士山をはじめ、全てのアルプス八ヶ岳などの高峰群が、雲の上に頭を出して勢揃い
している。 そして、何よりも 直近 (500m以内) に横たわる、浅間本峰の 釜山 (2568m) が大
迫力で目前にある。 まるで 大きな砂山のような盛り上り が静かに存在しているかのようにも
見えるが、その内部では 熱いマグマが常に胎動しているのであろう (怖)。

    
      強風と極寒の前掛山・山頂(2524m)        目前に迫る 釜山、(手前は前掛山の影)

それはともかく、この日の山頂部の強風と極寒は物凄くて ( 写真ではそれが全く伝わらず、
"ごく平穏で良い天気" にしか見えないのが、とても悔しい…!? )、もう1秒でも そこに留まって
はいられない状態なので、最高の展望を堪能する間もなく 早々に山頂を後にして、旧火口
内の 稜線出会いに戻る。 マユは手が凍りそうに冷たくなっていた。 ちなみに後で知った事
だが、この日は 今年初の冬型気圧配置となり、下界(関東甲信地方) では "木枯らし1号"
が吹き荒れたとの事だ (寒) !!

    
       前掛山・山頂 より、八ヶ岳方面            〜富士山 と 南アルプス方面

    
          雲海に日没が迫る                前掛山・山頂より、北アルプス 方面


 出発時間の遅れが響いて、すでに日暮れの時刻が迫っている。 前掛山の荒涼とした山腹
を足早に下り、賽ノ河原・分岐 まで戻る。 帰路は、例の "草すべりルート" の登りが 相当キ
ツイため、ここから Jバンド に向かい、第一外輪山を縦走 (黒斑山を経由) してトーミの頭に
戻るつもりでいた。 しかし、途中で陽が落ちて薄暗くなる事は充分に予想できる為、ならば…
初めて通る登山道を行くより、少しでも 様子のわかっている往路を そのまま戻る方が安全だ
ろう…、との マユの判断 により 直進して湯ノ平口に向かった。

      賽ノ河原・分岐、第一外輪山方面 

湯ノ平口では、夕焼けでオレンジ色に染まる 前掛山の山肌を見ながら 小休止した後、難所
の 草すべり へと急いだ。 陽が落ちて薄暗くなってきたが、まだ何とか 足下が視認出来たの
で、そのまま慎重に足を運び トーミの頭 まで戻った。 難所のうえ薄暗かったが、つい先ほど
通ったばかりの道なので、危険な個所や 間違い易い場所 の予備知識があったのは、とって
も心強い味方となってくれた。 マユの好判断である (拍手)。

 だが、まだ後半戦の長い距離が残っている。 この後は樹林帯に入るので、懐中電灯が必
須のアイテムだ。 そして、やはり通路の状況がわかっている 往路と同じ 「表コース」 をその
まま辿って戻るのだが、 今度は自分の膝に限界が迫っていたのだ  (情↓)。 前掛山の下り
をハイペースで下ったツケが、草すべり の急登で更に負荷となって、破錠をきたしたのだろ
う (困)。
下り基調であるにも関わらず、カメ並 の超スローペース歩行 となった為、極端に時間がか
かってしまったが、なんとか無事に 登山口の 車坂峠 に辿り着いた。 当然ながら 広い駐車
場に残っている車は 1台ぐらいで、辺りは真っ暗なので 探すのに苦労した (笑)。 下山後に
予定していた 日帰り温泉も…、当然! 営業終了 である (悲)。
ただ一つの救いは、満天にきらめく 大粒の星 の美しさだった (汗)。 今回はとにかく、出足
の遅れが 最大の誤算だったと言える。 次はもっと早起きしなけりゃ… !?

             西日に染まる 前掛山を下山


 いずれにせよ、浅間山を取り巻く この山域のハイキングは 初級者には勧められないが、
多くの魅力に溢れており、季節を変えて また訪れてみたくなると思うのは 我らだけではない
と思う。 前掛山への登頂については、標高差と距離 (標準歩行時間) が多くても 浅間山荘
から入る 「火山館コース」 の方が、今回我らが辿ったコース よりも 体力的には楽だったのか
もしれない…、と思った。
それから、黒斑山・登山 と第一外輪山の縦走 については、前掛山・登山 とは切り離して
別の日に改めて来訪することを、色々な意味からも… (笑) 、お勧めする。
一日で全部…という欲張りは、本格山屋さん にお任せした方がいいだろう (笑)

                                            ( 2011.11.6記)

         ※ 本稿では、当HP 「山と高原・遊歩記, Vol.32 : 黒斑山」 より、一部文章を引用しました。

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