強制捜査 『神奈川新聞』社説 2006年3月17日付 「カナロコ ローカルニュース」(2006.3.22)

 

http://www.kanalog.jp/column/editorial/entry_20013.html

 

資料

「脳卒中から助かる会」ホームページ

医療事故で横浜市立脳血管センター家宅捜索 カナロコローカルニュース(2006.3.9)

《みんな失望して辞める》 脳血管センター常勤医、4人が退職へ 「カナロコ ローカルニュース」(2006.2.28)

脳血管センターでの手術 夫の手術の真実を! 未亡人が訴え tvk Web News(2006.2.3)

「ひでーなあ、こんな事をやっているのか」 市長は全部知っていた!! ――“青戸病院と同じ”・“マズイ。何があっても削れ” 醜悪!!「横浜市立脳血管センター」医療ミス“市長ぐるみ”隠蔽工作の全貌(2006.2.2)
横浜市立脳血管センター 夫の死亡の説明求め未亡人が来日 tvk Web News 2006年1月31日付(2006.2.2)

 

 

2006/03/17 12:11:19

強制捜査

 横浜市立脳血管医療センター(磯子区)で、二〇〇三年七月に内視鏡手術を受けた女性患者が重度障害を負った医療事故で、県警が同センターと市病院経営局を家宅捜索した。業務上過失傷害の容疑。同事故に関連して、市側は医療者らの外部調査委、行政調査委の結果を基に医師、職員ら二十五人を処分し、行政上の一定のけじめをつけたように映る。しかし、刑事責任を問う視点からは甘いけじめだったようだ。
 関係資料の任意提出への協力を要請するだけでなく、あえて強制捜査に踏み切ったことは、県警側が市の病院経営行政を信用できず、「悪質」との見方を強めた結果だろう。
 同事故をめぐっては、内容を薄めた意図的な隠ぺいを疑わせる事案が次々に発覚。市側は執刀医らの手術方法が未経験だったにもかかわらず、「経験豊富」と繕い、手術をした横浜市大脳外科出身の医師らと同門の医師に鑑定を依頼した。当時のセンター長は、医療過誤を強くにおわせる報告書を出した鑑定医に記述の一部削除を求めたり、事故の問題点を指摘するリポートを書いたセンター医師を異動させようと画策している。
 外部調査委には事故と同じ手術経験のある医師は誰もおらず、同手術の専門医らは「公正な調査意思がない」と批判していた。結局、外部調査委は「総体的にみれば医療過誤」との報告書を出し、市側も過誤を認めて関係医師らが患者の家族に謝罪した。
 しかし、家族側から民事訴訟を起こされると、市側は一転して「執刀医らの技量の問題ではない」と見解を翻した。医療ミスと医療過誤は同義だが、県警の家宅捜索を受けての会見で、岩崎栄・病院経営局長は「医療ミスはあるが、医療過誤はなかった」と意味不明な見解を示すようになった。
 女性の事故の十日後にも、米国人男性が手術を受け死亡する事故が起きたが、センター側は手術の未熟さ、院内規則を無視した行為を指摘した医師のリポートを伏せ、「医療過誤はない」と断じる手紙を遺族に送っていたことが発覚した。女性患者の事故を教訓にできず、不都合なことは隠した。
 一方、センター幹部らは改善を求める「協調性のない医師」らの排除姿勢を強め、そうした医師四人が三月末までに辞める。その結果、常勤医は定数三十二人に対し十八人に減る見通しだ。四月以降、入院患者約二百四十人に適切な医療対応ができるか危ぶまれているが、幹部らには危機意識が乏しいようで、転院などの緊急対応を講じようとしない。
 「患者中心の医療」があまりにも軽視されていないか。県警の本格捜査が、事故に遭った患者や家族の無念さを晴らすだけでなく、市の医療行政の姿勢をただすきっかけになることを期待したい。