横浜市の政治資金パーティ事件 (1)《側近が全員知っている中でトップだけが知らなかったというのは素朴な疑問が残る》 『公僕』の意識とは、(2)横浜市長減給3ヵ月 88人処分へ 前室長は停職9ヵ月 『東京新聞』(2006.8.31)

 

関連資料

“市民派”中田市長のダーティーな素顔 

町田市長政治資金パーティー事件 横浜市長が陳謝 『自身の鈍さ、恥じる』 「東京新聞」神奈川(2006.8.29)

密室のメール(上) 町田市長パーティー事件 横浜市長側近2人暗転 石阪市長「起訴なら争う」 『東京新聞』社会面(2006.7.26)

密室のメール(下) 町田市長パーティー事件 「トップの意向くんだ?」「横浜改革」に影 幹部軒並み名連ねる 『東京新聞』社会面(2006.7.27)

パーティ問題 《(中田)市長は違うといっておられるようですけれど、(北薗)室長はうなずいて、自分が全部しょっかぶって行くつもりですとはっきりといったです》 大貫のり夫ジャーナル(2006.7.8)

 

 

(1)『公僕』の意識とは 「東京新聞」記者の眼 金杉貴雄(2006.8.31)

 

 東京都町田市の石阪丈一市長(五九)=前横浜市港北区長=と元同僚だった横浜市幹部職員たちによる政治資金パーティー事件は、石阪市長と北薗義広・横浜市前市長室長(五四)に罰金三十万円の略式命令が確定し、刑事事件としては決善した。検察側が求めた石阪市長への公民権停止には横浜簡裁が踏み込まなかったものの、現職市長や全国最大の政令市・横浜市で改革派首長として有名な中田宏市長の側近が有罪となった事実は重い。

 東京新聞は三月に初めて報じて以来、事実が明らかになるたび報道してきた。中には「最高で禁固六月の軽微な罪でなぜそんなに騒ぐのか」との声も聞いた。だが事件が重大なのは、行政組織や公務員の根本的問題を内包しているからだ。

 二十八日の横浜市議会で中田市長は、「市始まって以来の不祥事」などと謝罪する一方、「仲間を思ってしたことが法律違反に問われた」などともした。いまだそうした文脈で問題をとらえているとすれば、市が本質を十分理解していないと言わざるを得ない。

 石阪市長や北薗前室長、発起人となった副市長ら横浜市の幹部職員たちは今、「公選法には違反しないと考え、政治資金規正法には思い至らなかった」と釈明する。しかし、問題は「法に抵触することに気付いたかどうか」ではない。パーティーが公務員を対象とした資金集めでもあることを十分知っていながら、職員に参加や献金を求めたその「意識」だ。

 言うまでもなく公務員組織はわれわれの税金で成り立っている。機能すれば大きな力を発揮するが、それは唯一市民のためでなければならない。まして特定個人や身内のために利用されることは決して許されない。

 北薗前室長や副市長らは法律以前に「公僕」としての基本的な意識がなかったのではないか。もちろん、石阪市長も同様だ。なぜ、何のためにその職にいるのか、ということだ。

 もう一つ、別の問題を指摘したい。両市長は報道されるまで事件を公表しなかった。町田、横浜市長選と続く中で対立陣営に利用されることを懸念したのかもしれない。だが本来、マイナス情報を含め市民に示し、審判を受けるべきではないのか。「徹底した情報公開」を掲げる両市長が、事実を伏せていたと言われても仕方がない。

 また、中田市長は「パーティーに出席したが、中身は知らなかった」としているが、側近が全員知っている中でトップだけが知らなかったというのは素朴な疑問が残る。

 両市は自治体改革を進めていることを自負している。しかし、「公僕」としての認識が欠如したままの改革だとしたら、それはどこへ向かうのか。私は多くの職員が真剣に職務に取り組んでいることも知っている。両市は信頼回復に全力を挙げてほしい。(社会部)

 

 

(2)町田市長の政治資金事件 横浜市長減給3ヵ月 88人処分へ 前室長は停職9ヵ月 『東京新聞』一面(2006.8.31)

 

 東京都町田市の石阪丈一市長(五九)=前横浜市港北区長=の政治資金パーティー事件で、横浜市が監督責任者として中田宏市長を三カ月間減給50%とするほか、政治資金規正法違反(公務員の地位利用)罪で罰金三十万円の略式命令を受けた北薗義広・前市長室長(五四)=現・経済観光局担当部長=を停職九カ月の懲戒処分とするなど計八十八人を処分することが三十日、分かった。三十一日に発表される。

 特別職では、中田市長のほか、石阪市長のパーティーの発起人として名を連ねた本多常高副市長と金田孝之副市長が三カ月問の減給30%、前田正子副市長と大沢正之収入役がニカ月問の減給30%。市長には懲戒処分の規定がなく、副市長ら特別職も地方公務員法上の懲戒処分の対象ではないため、給料の特例に関する条例案を九月議会に提案したうえで、給与を返納させる見通し。

 一般職員では、発起人だった局長二人がそれぞれ三カ月と四カ月間の減給10%。石阪市長から参加者の取りまとめを依頼するメールを受信して他の職員に情報提供した局長と二人の副局長のほか、選挙管理委員会事務局長の計四人が戒告とされ、北薗前室長を含め懲戒処分は計七人。また、発起人となっていた課長や係長らが文書訓戒などの処分を受ける。