NISHIHO-DOPPYOU
西穂高岳 (2909m)

独標 (2701m)

上高地
  丸山から眺める、西穂高岳のピーク群
平成16年8月26〜27日, 一泊二日
   ★ 総所要時間: 5 時間 50分
   ★ ハイキング標高差: 558 m
   行程行程・ハイキング
  行程ルートマップ


 穂高連峰といえば ”山屋” であれば誰もが認める、「槍ヶ岳」(3180m)と並ぶ北アルプス
顔である。上高地から見上げるその山容は、日本を代表する山岳景観といっても過言ではな
く、その昔 W.ウエストン氏も絶賛して世界中に紹介した。
 主峰の「奥穂高岳」は標高3190mで、富士山(3776m), 南アルプスの北岳(3192m)に次ぐ日本
第三位の高峰である。ほかに「前穂高岳」(3090m), 「北穂高岳」(3106m),「涸沢岳」(3103m),
西穂高岳」(2909m),「間ノ岳」(2907m) ‥‥と、峻険な岩稜の高峰群がズラリと連なっている。
いわゆる、表銀座と呼ばれるエリアの中心地である。もちろん、ここは “本格山屋” さん達の
聖地であり、我らのような “インチキ山屋” の歯が立つ場所ではない(笑)。
で、あるが‥‥、近くまで行くことは可能だ(!!)。 穂高と名の付く山岳で唯一3000mを切る西穂
高岳は、穂高連峰の中でも最もアプローチしやすい山として知られている。岐阜県側の新穂
高温泉
からロープウェイが利用できるので、穂高連峰の一角に比較的簡単に登ることがで
き、その素晴らしい山岳景観を日帰りで楽しむことも可能なのだ。
‥‥というわけで、今回は穂高岳への入門編として位置付けられる、西穂山荘から独標まで
の一般向けコースに挑戦した。
  西穂高岳(2909m)、右端のピークが「独標」

 夏休み後半として、小淵沢(ママの実家)入りしていた我らインチキ隊一行は、早朝に小淵沢
を出立し、長野自動車道・松本ICへと向かう。
ルートは乗鞍岳・上高地方面と全く同じで、いくつものトンネル群を抜けて上高地分岐を過ぎ、
安房峠へ。難所だった峠も、今ではトンネルの開通で極めてスンナリと通過できるようになっ
た。それから平湯温泉を通り抜けて、新穂高温泉の村営駐車場に着いたのは、出発から2時
間30分後の午前8時であった。ロープウェイの始発が8時30分だったので、ちょうどいい感じ
だ。ここもピーク時は、ロープウェイの順番待ちが物凄いと聞いていたが、まだこの時間は大し
た混雑ではなかった。
 観光客に混じり、2基のゴンドラを乗り継いで、1117mの新穂高温泉から2143mの西穂高口
駅まで一気に上昇する。ゴンドラの車窓からは、すでに360度のマウンテンビューが楽しめ、あ
まりの絶景に大歓声があがっていた。
西側に「笠ヶ岳」(2898m)、東側には鋭く尖った槍ヶ岳と荒々しい岩肌の穂高連峰が姿を現し、
南には噴煙を上げる「焼岳」(2455m)と、その奥に「乗鞍岳」(3026m)も見える。久々に好天にも
恵まれ、雄大な山岳風景がとても美しい。

    
      槍ヶ岳 (3180m)  (新穂高ロープウェイ・最上駅展望台から望む)  笠ヶ岳 (2898m) 

 西穂高口駅から、よく整備された「千石平園地」の遊歩道を進み、しばらくは観光客と共に針
葉樹林帯の平坦な道を進む。ミズバショウの自生する小さな湿地を過ぎると、登山案内所の小
屋が現れ、いよいよ本格的な千石尾根の登山道となる。初めのうちは緩やかな樹林帯のアッ
プダウンを繰り返す。時折、樹林越しに西穂高岳の稜線がのぞき、幾つもの尖ったピークが映
る。振り返れば、後方には笠ヶ岳の雄大な姿がみえる。

           樹林越しに見る穂高連峰

 途中、特にきまった休憩ポイントはないので、適当に休憩を入れながら上へと進む。中間点
あたりで新穂高からの登山道と合わせると徐々に勾配がキツクなり、シラビソやコメツガに代
わってダケカンバが多くなってくる。さらに急登を続け、最後に笹の多い斜面を回り込むと視界
が開けて「西穂山荘」に到着した。
 山荘は、ちょうど森林限界のところに立ち、丸太造りの立派な外観で、アルプスの中では通
年営業している数少ない山小屋だという。 ここからの展望も、すでに素晴らしいものがある。
東の前方には「霞沢岳」(2646m), 「六百山」(2450m)がデンと構え、その眼下に梓川と上高地
が見下ろせる。右側面には、どっしりとした北アルプス唯一の活火山・焼岳が見え、その後方
には雄大な裾野を広げた乗鞍岳と「御嶽山」(3067m)も遠望できた。

      
          次第に勾配がきつくなる            西穂山荘 (2340m)

時間は午前10時。山荘に宿泊する予定なので、時間的にも充分な余裕がある。山の天気は午
後から悪くなるので、さっそく山頂方面に向かうことにした。
が、その前に、山荘の休憩レストランで、人気メニュー(らしい)の「西穂ラーメン」を注文する。
これがまた、実に旨い (山の上で食べると何でも旨い‥、のカナ!? 笑)。
ここから、西穂高岳の「独標」(2701m)までは、約1時間30分の ”一般向けコース” とされてい
る。その先の「山頂」(2909m)へは、+2時間弱の “上級者向けコース”。更にその先、縦走して
奥穂高岳に至るコースは、”ウルトラスーパープロ級” (!!) との事なので、当然インチキさんに
は無理である(笑)。
という訳で、まずは身分相応に「西穂独標」を目指して出発した。

       ハイマツ帯を進む、後方に焼岳(2455m)

 西穂山荘からは直接、穂高連峰を見ることはできない (近すぎて見えない‥という訳だ)、山
荘の脇から伸びるハイマツ帯の登山道を登ってゆく。いきなり、大きな岩と岩の間を縫うように
進むと、10分程でケルンの積まれた小高い丘状の「丸山」(2452m) に到達した。
ここでも360度の景観が充分に楽しめる。丸山を過ぎると前方が開けて、いよいよ北アルプス
ならではのアルペンムードたっぷりの稜線歩きとなる。目標とする独標と、その先にひときわ尖
ったピラミッドピーク、西穂高岳山頂を含む複数のピークが一望できる。360度の景観を常に伴
いながら歩く、アルプスの稜線歩きは本当に気持ちがいい。

     
      丸山を過ぎ、岩礫の斜面に変わる         独標と ピラミッドピークに近づく

岩礫のゴロゴロした斜面を登りつめると、いよいよ独標の真下に出る。 ルートはヤセ尾根に
変わり、岩場が連続する。 何ヶ所かクサリ場もあり、三点支持を守って慎重に登ると、台形
状になった西穂独標の頂上に出た。

     
           岩場を急登する                 西穂高独標 (2701m)

 景観は一段と良好になり、西穂高岳の先に続く間ノ岳、奥穂高岳、前穂高岳も間近に望むこ
とができる。 
奥穂高に向かって右側には、霞沢岳とその下に上高地を見下ろす贅沢な展望だ。左手には笠
ヶ岳が全貌を現しており、後方には焼岳と乗鞍岳がクッキリと見渡せ、更に遠く「白山」(2702m)
も雲海の上に遠望できた。
この日の天候は薄曇であったのだが、雲が高かったので山岳展望には恵まれた。独標の頂
上で昼食をとり、しばしのんびりと休憩をとった。

    
  独標から、目前に迫るピーク群 (右端が奥穂高岳)   奥穂高岳(左)と前穂高岳に続く吊り尾根

    
   独標から、上高地と六百山・霞沢岳を見下ろす      遠方の雲海に浮かぶ 白山(2702m) 

 目前に鋭く聳えるピラミッドピークと西穂山頂方向を眺めて、この先に進むかどうかを思案
する。西穂高より先の奥穂高方面については、当然、我らには無理なので論外だが、西穂高
岳山頂までなら時間と体力が許せば可能かもしれない。
しかし、大小13ものピークの登下降を繰り返し、急峻のヤセ尾根が続くので危険度も高い。上
級者の標準タイムで片道1時間30分の所要時間だという。それを往復して、更に独標から山荘
へ帰る事まで考えると、やはり無理は禁物だと判断した。
それでも、ちょっと残念な気持ちもあったので、独標から先の行けるところまで少しだけ進んで
みることにした (^_^; 。
いきなり、独標からの下りに緊張する。ほとんど垂直に岩場を降りる形だ。ヤセ尾根を更に進
んで、次のピークに登る。ママとマユは、ここまでにするという。自分はもうちょっと欲を出し、さ
らに2つ先のピークまで進むが、ピラミッドピークに大接近したところで、やめる事にした。
これだけでも充分に堪能したと思う。この辺りで、コケないうちに引き返すのが無難だ(笑)。

    
     独標を越えた次のピークから振り返る         更に2つ先のピークから眺める

 三人とも独標へと戻り、またしばらく休憩する。暖かい陽射しと、心地良い涼風のため昼寝し
たいくらいだったが、適当なところで出発した。
やはり、独標からの下りに注意が必要だが、後は快調に歩いて1時間程度で山荘に戻った。
 西穂山荘は、あらかじめ予約して個室を取っておいた。ここも設備は充実しており、さすがに
風呂はないが、部屋や布団、食事など、いずれも山小屋にしては快適だった。夜は、写真家の
講師を招いて、「日本の山岳の成り立ち」に関する講演会まで行われた(!!)。

 二日目の予定は上高地に向かい、逆に下からこの地を見上げるという作戦だ(笑)。山荘  
から焼岳方面に向かい、分岐して上高地へ直接下る「中尾根」登山道も整備されている。
長い急斜面を3時間弱歩いて「田代池」に至るコースだが、我らはインチキ山屋 !! (車の都合
もあるのだが)、ロープウェイを駆使して下山し、反対側から車で回り込む事にした。

    独標から丸山方面、奥に焼岳と乗鞍岳、下は大正池

 朝食後すぐに山荘を出立。6時30分に出たが、それでも我らが最後発に近かった (本格山屋
さん達の早さには、ホント驚かされる!!)。
山荘で作ってもらったお弁当を背負って、登って来た道をそのまま戻る。
下りロープウェイの始発に乗って、駐車場へと向かう。さすがに朝一の下りゴンドラは、貸しき
り状態。朝の山岳風景を充分に堪能できた。

 上高地へは車で平湯温泉まで戻り、アカンダナ駐車場から「上高地行きバス」に乗り換えて
入った。天気も良好だったので、上高地から見上げる穂高連峰の眺めも最高に美しかった。
「ついさっきまで、あんな高い所にいたんだね‥」と、感慨深げなインチキ山屋の面々であった
(笑)。
上高地では、梓川沿いに河童橋から明神池まで歩き、「嘉門次小屋」にて美味しい岩魚の塩
焼きをたいらげる。そこから川の反対側を通って引き返し、途中の河原で山荘から持ち帰った
お弁当を食べた。更に、大正池まで川沿いを歩いたのだが、さすがに足の疲れを隠しきれな
い(笑)。 大正池からバスに乗り、上高地を離れる。

    上高地から望む穂高連峰 

 すでに夕刻、平湯バスターミナルからはシャトルバスに乗り換えて、アカンダナ駐車場へと戻
った。あとは、マイカーにて宿泊先の平湯温泉宿に入り、ゆったりと天然温泉に浸かって至福
の時を過ごした(笑)。

 今回も二日間にわたり、大自然の中で心地良いひと時を過ごせたと思う。いつかは、穂高岳
の一座に登頂する日が来るのだろうか‥‥。
 翌朝、温泉宿を後にして、小淵沢の家へと向った。
                                            (2004.9.5 記)



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