“ウソツキ”市長と“居座り”市長 処分は重い?軽い? 政治資金パーティー事件 『東京新聞』神奈川(2006.9.13)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20060913/lcl_____kgw_____001.shtml

 

関連資料

“市民派”中田市長のダーティーな素顔 

中田さん あなたは市民を猿だと思っているのですか 大貫ジャーナル(2006.9.11)

横浜市の政治資金パーティ事件 (1)《側近が全員知っている中でトップだけが知らなかったというのは素朴な疑問が残る》 『公僕』の意識とは、(2)横浜市長減給3ヵ月 88人処分へ 前室長は停職9ヵ月 『東京新聞』(2006.8.31)

密室のメール(上) 町田市長パーティー事件 横浜市長側近2人暗転 石阪市長「起訴なら争う」 『東京新聞』社会面(2006.7.26)

密室のメール(下) 町田市長パーティー事件 「トップの意向くんだ?」「横浜改革」に影 幹部軒並み名連ねる 『東京新聞』社会面(2006.7.27)

パーティ問題 《(中田)市長は違うといっておられるようですけれど、(北薗)室長はうなずいて、自分が全部しょっかぶって行くつもりですとはっきりといったんです》 大貫のり夫ジャーナル(2006.7.8)

 

処分は重い?軽い?

政治資金パーティー事件

 東京都町田市の石阪丈一市長(59)=前横浜市港北区長=の政治資金パーティーをめぐり、大量の処分者を出した横浜市と町田市。政治資金規正法違反(公務員の地位利用)の罪でともに罰金刑を受けた石阪市長は市長の座にとどまり、横浜市の北薗義広・前市長室長(54)は停職処分のその日に退職し、「トカゲのしっぽ切り」の声も市政関係者から漏れる。市政トップの職責から中田宏市長が自身に課した処分は三カ月間減給50%。当事者でもある石阪市長の場合は六カ月間減給30%、二人の処分は重いのか軽いのか−。 (木村留美、近藤晶)

 ■横浜市

 「(事件に)直接的に関与していればとっくに辞職している」。中田市長は身の潔白を主張したいとの思いからか、語気を強めた。先月三十一日の処分発表に先立ち、局長ら幹部を集めて開いた臨時会議でのことだ。

 パーティーを計画したのは、右腕的存在だった元側近の石阪市長と側近の北薗前室長。しかも中田市長は自らパーティーで来賓としてあいさつし、町田市長選の出陣式にも駆けつけるなど親交の深さを見せつけていた。

 しかし、中田市長はこれまで自身の責任について「指導監督し市政を運営する最高責任者である市長として」とあくまで監督責任の範囲内であると強調。自身の処分内容については、外部の有識者の意見を参考に、「厳しく行った」と自負する。

 一方で、北薗前室長については「(同僚だった石阪市長を)応援したいという心から始まったこと」と擁護するかのような発言もあった。ある市議は「市長の名を利用し幹部が名を連ねたパーティー。自分が市長なら前室長のことを許せない。市長は本当に知らなかったのか」といぶかる。

 市長を筆頭に、副市長ら幹部が連なる八十八人もの大量処分。十一日には市議会の調査特別委員会も終了し、事件は終息に向かう気配が漂う。だが処分だけでは市民の理解を得られるはずもない。事件を教訓に公僕としての意識改革をどう図っていくか。試されるのは、これからだ。

 ■町田市

 「事例として参考になるものがない」。先月二十九日、自身の処分案を発表した石阪市長は、減給期間について「比較的長い」と説明した。処分の条例案は今月一日の市議会で、与党の賛成多数で可決された。

 野党側が、共犯とされた北薗前室長が退職した点を指摘したのに対し、石阪市長は「比較して決めるものではない」と辞職する考えがないことを強調。自身の処分は妥当との認識を示した。

 だが、“居座り市長”に対する市民の批判は増え続けている。市によると、十一日までに事件に関して市役所に寄せられた意見は二百四十二件。ほとんどは「辞職すべきだ」「真相を明らかに」「再選挙で信を問うべきだ」という批判的な内容。市職員からも「処分は甘すぎる」といった声が漏れ聞こえてくる。

 市議会では十一日まで一般質問が行われたが、辞職を求める野党との議論はかみ合わず、辞職決議を求める請願も十二日、不採択とされた。石阪市長を告発した市民は「これで幕引きでは市民は納得できない。真相は明らかになっておらず、石阪市長は説明責任を果たしていない」と憤る。

 市長のリコール(解職請求)は、地方自治法の規定で就任から一年間は請求できないこともあり、まだ動きはない。ただ、石阪市長が市民の批判に真摯(しんし)に向き合わなければ、今後、辞職を求める動きは広がる可能性がある。

■『同種事件の悪い前例に』

 日本大学法学部教授の岩井奉信氏は、両市長の処分について「他の職員の不祥事と比べ、ワンランク厳しくしており、数字だけ見れば重い処分。道義的責任は感じているのだろう」と話すなど一定の評価をする。

 一方で、石阪市長らが略式起訴され、結果的に公民権停止を伴わない罰金刑で決着したことに、「法的責任があいまいになってしまい、今後増えていく可能性のある同種事件の悪い前例になった」と指摘する。