フルトヴェングラー資料室

プライヴェート盤に関する考察


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WFのプライヴェート盤

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半世紀を超えた「芸術」は共有財産

フルトヴェングラーの場合、すでに没後48年が経過している。アメリカやイギリス、フランスでは録音著作権が50年となっており、1951年以前の録音に関してはすでに誰でも自由にCD化して発売できることになっている。またつい最近まで、イタリアや日本などでは20(30)年と比較的短期間で録音著作権が切れることもあり、それまでは、駅や露店などで著作権切れで大手メーカーが原盤を所有するポップス系の複製CD(ビートルズやカーペンターズなど)やカラヤン、フルトヴェングラーなどクラシック系の複製CDが売られていたこともあった。

これらのCD/LPについては、かなりシビアな意見をお持ちの方も多い。しかし、すべて公演後30年という発売当時の(97年以前の)日本の法律をクリアしたものであり当時は問題がなかった。現在の著作権法では「我が国で最初に確定した音源は保護される」という規定もあるが、それがWF音源のような経路(特にRRG戦中録音)を辿ったものにどう適用されるかは判例がないので不明だ。
著作権という権利はあくまで「商業上の権利」であり、各国で決められた規定の年数を経た著作物はもはや「公共財産」と呼ぶべきものだ。そして著作権自体はその芸術性とは無関係だと思う。著作権者の死後、その子孫や遺産の継承者の「金銭的」な権利を定めた法律の以上の何物でもなく、著作権切れの著作物を無断で公表したからといって、いささかも「芸術性」が損なわれるとは思わない。ベートーヴェンの曲を演奏するのにいちいち版元に断りを入れたりしないのと同じこと。以前バブル期にゴッホの絵画を購入した、ある日本の大企業のオーナーが「自分が死んだらゴッホの絵とともに火葬してくれ」といって、非難を浴びたことがあったが、この例は逆に芸術を「私有財産」としてしか考えない「商業主義」的発想の弊害だと思う。むしろ、今回DGオリジナルスの一件でわかったことだが、金管が音をはずしている部分を修復したり弦の切れる音をカットしたりする方が、芸術的には問題なのではないだろうか?
そして道義的問題を云々する人々は、ナチスが連合軍に技術力を見せ付けるため、あるいは国民を戦争に協力させるための「アメ」として開発したマグネトフォンで録音した戦前のWFは聴かないのだろうか?そしてこの録音を戦利品として持ち帰り発売したメロディアのCD/LPは持っていないのだろうか?
そういう不幸な経過を経て、いまWFの芸術に私たちが接することができるのであり、その過程すべてがクリーンでなければ「芸術」として認めないとは言えないだろう。
一部では、版権を持つレコード会社、演奏者、著作権者および著作権継承者などの許可ではなく、JASRACなどの著作権管理団体の認証を得て発売しているケースもある。一時、日本でノンオーソライズ輸入盤が多かったイタリアのLP/CDも、現在日本に輸入されているもの大半はイタリアのJASRACに当たるSIAEという著作権管理団体の認証を得ている。これらについても、法的にはまったく問題がない。著作権をクリアするということと「音質がいい」「芸術的だ」という問題とは別次元だということがおわかりだろう。
shin-p自身は、研究目的の実費によるコピー提供を除き、販売という形を取る場合は「版権切れ」であっても、演奏者が現存する場合などはできる限りの「許諾」をとる努力をすべきだと思っている。
しかし、法的、道義的、芸術的にどう解釈するかは、各販売する側の問題であり、その販売側の責任において行われているものである限り、重要なアイテムについてはこの資料室で紹介するつもりだ。

「偽物」を売る行為

フルトヴェングラーのノンオーソライズ盤を作って売ったとしても、それが大変な利益を得るものではないと思う。ノンオーソライズ盤について批判したいのは本当に粗末な音しかしない録音を無理矢理発売した場合と以下に問題提起しているものである。エラボレーションのヴィスバーデンのブラームス4番は、協会盤LPからの板おこしと思われる音質だが、匿名の個人の技術力を感じさせる素晴らしい音質だった。現在ではTAHRAのオーソライズ盤が出てもうこれを買う人はいないだろう。それでもエラボ盤はファンの欲求の隙間を埋めた一つの文化として見ることが出来る。それに嫌悪感を持つか否かは個人の芸術に対するスタンスだと思う。

ノンオーソライズ盤で本当に問題なのは、既存の録音の回転数やバランスを変え、あたかもフルトヴェングラーが指揮、あるいは別録音と称してファンに売る行為である。

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