WF資料室−研究報告(1)

WF問題CD/LP研究報告(1)


about資料室

このページでとり上げるディスク&演奏

1948年10月のブラームス4番
1952年1月のモーツアルト/ピアノ協奏曲22番
戦中のRRG録音について
Preiser90251英雄(rec.44)の「編集」について
1952年2月8日のブラームス第1(ウェネティアディスクV1001)
ベートーベン第1番の1952.11.29表示の伊Nuova Era盤
1953年4月14日のDG盤と協会盤は同じ物か?
1954年4月10日ブルックナー8番EMBLEM盤の正体
1954年のマタイについて
Voxフランクについて
DGの編集版について
EMIの編集版について

以下の演奏&ディスクのついての皆さんのご意見をお待ちしております。
●1952年12月7日or8日のウェーバー/魔弾の射手序曲
(本当にチェトラFE50が7日の演奏か?)
●1944年6月(M&Aは49年2月と表示)のK550は本当にWFか?
●1947年8月ザルツブルクでのブラームス第1は本物か?


1948年10月のブラームス4番
ディスクルフラン DR910004-2(1991) /ToshibaEMI CC35-3170(1984)他
96年11月のST氏のメール−
>DISQUE REFRAINから出ている48年10月22日録音とされる
>CDが、HUNTのディスコグラフィでは24日録音と同じとされていますが、
私には別物と思われます。演奏自体はそっくりなのですが、DR盤には
>聴衆ノイズが殆どありません。アンサンブルの微妙なずれや、テンポの
>変動も少し違います。(原文のまま)
以来、多くの方々からこの問題についてご意見を頂きました。
代表的な意見としては、
SK氏の「同じ演奏のようだ」とするもの、
そして、I氏の「DR盤の元になったとされるゴールデンコンサートライウLPを含め、何度も聴き比べたが、似てるような、違うような。結論はまだ出せない。」というもので、
ST氏の見解を積極的に支持する意見は未だにあらわれていませんでした。
そこで、今回shin-pがSK氏とともにこの問題に終止符を打つべく、検討会を行いました。

まず、shin-pは現在までDR盤を聴いたことがありません。石丸電気や松山のレコード店でも見かけたのですが、結局買わなかったのです。なぜかというと−お金がもったいないから−以前ウェネチアディスクV1001(52/02/08のブラ1というふれこみ)のときもそうでしたが、おそらく録音状態も悪く、演奏もCOPYに違いないようなCDに2000円以上も払う気が起こらなかったからです。今回、SK氏のご協力でDR盤の元になったと思われるGCL(ゴールデンコンサートライウ)のLPやEMIの海外LPなどを含めて、特にST氏が主張される2楽章を中心に聞き比べてみました。

結論から言うと、やはり別の演奏のようです。DR盤はダーレムゲマインデの放送録音という通り聴衆ノイズは全く聞き取れません。EMI盤はみんな盛大にセキをしているのに−。演奏も微妙なニュアンスが違うような気がします。SK氏もこの2楽章に関しては「別物」のようだ−とされています。
さらに、shin-pが詳細にこの2楽章を検討した結果、DR盤には2分20秒から3分にかけて当時のベルリンの状況を伝える「時の音」とされる米進駐軍の輸送機(と思われる)の音が入っていました。もちろんEMI盤には日本盤海外盤CDLPともそんな音は入っていません。そして、終楽章の巨匠のグイグイとオーケストラを引っ張っていく感じが放送録音のDR盤では希薄になっています。ただ、部分的には「そっくり」なところもあり、その部分は同じ演奏でテープをつないでいるのかもしれません。しかし、試聴後の感想は「またもう一つ巨匠のブラ4が聴けた感動でいっぱい」です。DR盤の違いを何度もご指摘していただいたST氏に感謝いたします。ありがとうございます。またLP・CDの試聴にご協力いただいたSK氏にも感謝いたします。

9月16日追記
さらにI氏より
旧フォーラムにご意見をいただきました。確かに、EMI盤にも2楽章1分5秒あたりから1分53秒付近まで「輸送機」の音が入っており特に1分21秒と1分38秒付近は比較的大きな音になっています。しかしDR盤とは場所的に違います(DRは2分20秒以降)し、EMI盤ではその間にも1分29秒など大きなセキが入っています。また2楽章冒頭から1分の間に10ヵ所以上の「セキ」が聞き取れます。これを取るのは至難の業だと思います。現在のデジタル技術を持ってすれば、ノイズは取れる−という意見もあります。DR盤は1991年頃の発売ですが、GCLのLPは80年代のものでまだそこまでの技術があったかどうか疑問です。またノイズを取るのには相当な手間と時間とお金がかかります。GCL盤は通常の2倍程度の高額で売られていたようですが、そんな手間をかけて元が取れるかどうか。特にEMI盤2楽章52秒付近の「ゴホゴホキャイン」という大きな音はそう取れるとは思えません。(本当はEMI盤が22日のダーレム盤で聴衆のノイズや輸送機の音を後からつけたのなら話は別ですが−)輸送機の音にしても、DR盤の方は会場の楽器と一体になってに共鳴しており、(この共鳴のしかたが、ティタニアの乾いた響きでなく残響の多いものである−これもエコーをかけたという反論が成り立つが−)これも取り除くのは無理ではないでしょうか。またEMI盤4分06秒の「ドン」というステージノイズとそれに続くスコアをめくる音もDRにはありません。
以上のように少なくとも2楽章においては「別物」と考えた方が自然でしょう。

また1楽章はEMI盤で冒頭部にテープがたるんだような音像の乱れがあります。これはかなり以前のEMIのLPから最新の全集盤まで確認できますが、DR・GCLはともに正常です。少なくともEMIとは別のテープを使っているということになります。
そして3楽章はEMI盤1分17秒のトライアングルの「チン」という音が一回しかなっていないのにDR盤では1分20秒の同じ個所で2回(以上?)聞こえます。
また神奈川のHS氏からも−

私も1996年11月のST氏とまったく同じ理由で違う演奏の様に思います。

>基本的に1948年10月22日の演奏はDGから出ているバッハを含めオーディエンスノイズ

>がまったく有りません。一番分かり易いのは第2楽章冒頭で東芝盤では大きな咳が

>数箇所に入っていますが、GCLにはありません。また飛行機の音についても確認済

>です。また第1楽章冒頭は東芝盤は音揺れ(ワウ)が目立ちますがGCLはほとんどあり

>ません。但し部分的に同一の演奏が使われているかどうかについては確認出来て

>いません。

というご意見を頂きました。

以上shin-pHPでさまざまな意見がでましたが、結局TAHRAから正規盤(FURT1025)が98/05発売されてGCL盤DR盤ともホンモノだと証明されました。貴重な情報をくださったみなさんに感謝いたします!

EMIの編集版について
[S.T.氏のメール・DR盤について]


1952年1月のモーツアルト/ピアノ協奏曲22番
ディスココープAudax765('75)/コロンビア OW7826('78)/キング K20C77('81)/M&A CD895('95)
桧山氏がとり上げ、問題になったシェーンブルン宮殿(モーツアルト協会主催誕生記念日演奏会)での協奏曲。
パドゥラ=スコダやエリザベト夫人およびVPOのオーソライズをとった米ディスココープ盤(Audax765=現M&A)とその国内盤であるワルター協会盤さらにはキング(加キャビア原)盤とが別の演奏が混じっているとされる問題は有名。初版のディスココープ盤とその国内盤であるワルター協会盤、さらにM&AのCDにはこのピアニストのオーソライズの言葉が記されている。そこではウェストミンスターのスタジオ録音のパドゥラ=スコダ盤と同じ物ではないかというHUNT4版の指摘を明確に否定しているが、どう聴いても1楽章の冒頭から2分23秒までのピアノが入るまでの部分が音質が大きく違い、別の録音のように思えてならない。(これ以降はジーというノイズが全編で確認でき、また他の音楽がかすかに混入していることからエアチェック・テープと思われるが、2分23秒以前にはそれが全くなく、ピアノの透明度も高い。桧山氏はその後3分50秒頃からの聴衆ノイズの違いも問題にされていたがM&AのCDは160小節前後2小節の他演奏の挿入のみとなっている。)
現在は廃盤のキング(加キャビア原盤)は、1楽章冒頭からの音質とテンポが桧山氏の指摘するように一貫した演奏に聞こえ、こちらの冒頭部の和音が2回目以降の和音とコンセプションが一致する。キャビア原盤のLPはピッチが低く音質は全体として劣るものの1楽章冒頭部に録音や演奏に決定的なミスはなく、どうしても編集が必要だとは思えない。(キングはその後、M&A原盤でCDを発売している。)さらに、3楽章にもテープの継ぎ目と思われるノイズや音質の変化が各所に見られる。パドゥラ=スコダ氏が「絶対に本物だ」というのだから信用するほかないが、そうなるとキャビア原盤は「丁寧にテープをつなぎあわせた”シロモノ”」となってしまう。演奏そのものについては、54年ルガノでの20番の聴いてしまった耳には全く物足りない演奏としか思えない。

shin-pHPでの結論。
この演奏のエアチェックテープは2本あり、もちろん同じ演奏だが録音した人物の違いで(1)(2)とする。ディスココープ系のLPとM&Aは(1)のテープでほとんど作られ、キング(キャビア原盤K20C77)は全部(2)のテープで作られている。また、HUNTが指摘するウェストミンスターのスタジオ盤ではないかと思われるテープを(3)とする。それでM&ACD895の演奏を分析すると−


   1楽章                   2楽章                   3楽章

TIME                    TIME                    TIME

0-2'23"      (3)        0-1'29"      (2)        0-5'13"      (1)*

2'24"-3'48"  (1)        1'30"-2'59"  (1)        5'14"-5'14"  (2)

3'49"-3'52"  (3)        3'00"-4'16"  (2)        5'42"-6'09"  (1)

3'53"-8'05"  (1)        4'17"-5'25"  (1)        6'10"-6'48"  (2)

8'06"-8'13"  (3)        5'26"-6'27"  (2)        6'49"-7'05"  (3)

8'14"-END    (1)        6'28"-6'32"  (1)        7'06"-13'01" (1)

                        6'33"-6'37"  (2)        13'02"-END   (2)拍手

                        6'38"-6'53"  (1)

                        6'54"-6'59"  (2)      ( 0'00"-0'21"  (3)の可能性)
                        7'00"-7'03"  (1)

                        7'04"-7'35"  (2)

                        7'36"-8'10"  (1)

                        8'11"-8'35"  (2)

                        8'36"-END    (1)

−とかなり込み入った編集がされている。(1)のテープは音質的には高域が比較的よく入っていて聞きやすいが、時々受信状態が悪くなり全体にジーという持続音が聴かれる。 また(2)のテープは全体に高域がほとんど伸びず音質が悪いが、悪いながら安定している。そして、非常に澄んだ響きの(3)。初版のディスココープ盤は1楽章3'53"-8'05"も(3)のテープを使っていると思われる。
おそらく、ディスココープ(現M&A)はこの日の録音として(2)に比べると音質的に良好な(1)のテープをベースにして、エアチェックの受信状態不良の部分を(2)、それも駄目な場合は次善の策として(3)のテープで埋めていると思われる。


戦中のRRG録音について
戦中の録音は一部を除いて録音日の確定はされていない。桧山氏によると、RRGの収録のテープには曲名と演奏者が明記されているだけで録音日については明記されていない場合がほとんどのようだ。録音日についてはグラズノフのテープの蓋に2月2日11時という記載があるとメロディアの最近のCDの解説にあるが、巨匠はこの日スイスへ移動中ということで「収録日」でないことは明らかである。ロシアにもRRGのテープそのものは存在しても「録音データ」の類はないということなのだろう。そろそろ、旧西側(特にドイツ)と共同で研究できるような環境は生まれないものなのか。

さらに、戦中の録音を詳細に聴いていればテープをつなぎあわせているようなノイズに遭遇する場合も多い。42年3月録音とされる「合唱」にしても、桧山氏は映画の存在する4月のヒトラー誕生前夜祭との合致点を指摘しているが、メロディアの初期盤(最初期盤ではない)でも独唱の入る直前にテープの継ぎ跡があり、マグネトフォンの録音時間を考慮したテープのかけ替えなのかもしれないが二つ以上の録音を「編集」している可能性も大きい。

さらに英雄に関していえば69年に旧英協会のPミンチン氏がWF&BPOであるとした「アレグロのエロイカ(米Allegro3113/英AllegroALL701=50年代前半)」をカラヤン指揮ベルリン国立歌劇場管(44/06録音)とする資料が存在するが、実際これが指す録音と思われるKOCHから出たCD(SFBへの返還テープを使用したと思われる)を1楽章のみ試聴した(DR盤でも「スタジオ録音」としてこれと同じと思われる録音が出ている=未聴)が、冒頭からまるで別物だとわかる。たしかにアレグロ盤は実況録音で聴衆ノイズがあり、しかもレンジの狭さから「マグネトフォン」録音であるような気もするが、どう聴いても「カラヤン」ではないだろう。但し、最近発売時期によってはアーベントロート指揮ゲヴァントハウス管の演奏を流用しているケースもあるといい、真相は薮の中だ。
アレグロの英盤の方は発売元がPickwickというレーベルで、これはデッカ盤の古い録音をライセンスを得て発売しているメーカーで、さらにその傘下にあるイノベーティヴ・ミュージック・プロダクションが94年に出しHMVなどで750円で売られていた廉価盤「マルケヴィチ指揮のフランス国立o」のラヴェル名曲集がEMIのマルティノン盤のコピーだったのは有名。(94年秋頃のレコ芸・輸入盤情報参照のこと=輸入元のキングレコードでは「現在問い合わせ中」とあったがいまだに音沙汰なし−)

話が多少脱線してしまったが、DGのバーンスタイン指揮VPOの実況盤CDが、3日程度の同じプログラムの実況録音のテープから実際に売られる市販用のマスターを作って発売している−のと同じようなことが戦前の録音にも行われていた可能性は大きい。その良い例として、1月28日録音とされるブラ2は桧山氏の解説では公開総練習を含めて3日間(27/28/29)録音が録られ、28日付けのものが放送用に選ばれたとしている。これも特定されている録音日(28日)とは別の日の録音が「編集」で使用されている可能性が大きい。

<shin-p現時点での結論> 以上のように、あまり戦中の録音の「録音日」に固執するのは止めにしたい。おそらく、これからも未発見の資料が出てくる可能性はあるが、録音日が完全に確定されることはないだろうから−。


1944年12月18日収録とされる英雄(Preiser90251)
まず、編集されている部分を列挙しよう−

1)1楽章冒頭の「ジャン」2回が同じ音が2度使われている。(旧フォーラム13番のTI氏の見解)
2)実況録音の聴衆ノイズが確認できる部分がある。
3)2楽章のみ音質が異なり、ギャップ部分に針音(?)がある。
4)3楽章1'13"から針音(?)が聞き取れ、1'34"ではテープ編集ミスがある。さらに4楽章後半部でも針音(?)が聞き取れる。

2)についてはshin-pが−

◎shin-p97/10/04:Preiser盤の1楽章の聴衆ノイズは13分32秒で聞き取れます。

実は13分17秒付近から40秒まで音質が急に鮮明になる部分があるのですが、

これは52/12/07のBPOとの実況録音が使用されています。

DR盤では同じノイズが13分42秒に確認できます。
と報告し、SFBに返還されたマグネトフォンのオリジナルテープからリストアする際にメロディア盤でも確認できるこの部分の音質低下を同じSFB録音の52/12/07BPO録音で修復したと思われる。
また3)についてはウラニア盤と同じ頃の録音と思われる2楽章が欠落しているSFBに返還された実況盤のテープがある−というメロディアの日本語解説につけられた日フ協会K氏のコメントがあり、仏フ協会でも「別録音の実況盤」としているが、桧山レポート(レコ芸92/11)やトレマン本などでは同じ演奏と分類されており、このプライザー盤の状況からして99%実況ではない。

またST氏がPreiser盤の板おこし説をUPしておられます。がshin-pは、同じ頃のVPOとのマグネトフォンコンサートである「ブルックナー8番」や「レオノーレ3番」や戦前最後のVPOとのコンサート「ブラームス2番」のDG盤にも問題の2楽章のギャップ部分のノイズと同じような針音に似たテープの切れ目が確認できることから「板おこし」ではないと思う。
TI氏はshin-pへの私信で「独プライザーのCDは板おこしなのか否か?について。 第2楽章切れ目の部分のノイズが針音である!の指摘にはうなづく。」また「独preiserはウラニア(&仏パテ)=VOX(&独インターコード)=UNICORN(&東芝EMI)=フィリップスのLP系の音です。」とされています。

<shin-pの最終結論>プライザー盤は欠落している2楽章のみ最初期のテープの状態のよいときにディスクに復刻したウラニア盤を板おこしした可能性はあるが、他はSFB返還テープからリストアしたCDだと思われる。


1952年2月8日のブラームス第1
ヴェネチアディスクV1001
旧フォーラム12番のTI氏の見解では、このヴェネチア盤は「Furtwaengler on the air」という私家盤LPと同じ演奏(板おこしではない)、そして日本DGから出たオリジナルスの52/02/10録音とも同じ演奏−とされ、さらにこの私家盤LPは1959年1月5日にNHKで放送されたこの曲(1953/05/18)のエアチェック盤かもしれない−とされています。
またST氏から「BPO1952(DG)のCD旧盤(POCG2356)の第3楽章において、137小節と138小節の間に(4'06)テープ編集らしき感じはあります。」とメールをいただきました。
またTI氏からは「LP面をみると、ジャケットとは違うW-29なる番号が印字されてました。(実体はW-XX私家盤シリーズなのかな?)さらに、もう一度レーベルをみると、memorial broadcasting 1952performanceと書いてある。つまり on the air LP製作者は1952年の演奏だ、と言い切ってるわけです。」という私信をいただいています。さらにTI氏は、演奏については今回発売されたオリジナルスはこれらのプライウェート盤と全く同じ編集なしヴァージョンである−とされています。
残る問題は、このW29というLPの「NHK風アナウンス」が昭和34年のものであるのか?
そして、もしそうなら演奏もその時のものなのか−
そして、それならこの時の演奏は本当に53年のものだったのか−
という3点に絞られます。

読者の皆さんのご指摘の結果、現在shin-pHPではon the air(W29)というLPとヴェネティアディスクV1001は同じNHK-FMのエアチェックによるもので、DGのソースとなっている1952年2月10日の演奏と同じ物であることは間違いない。但しVenezia盤の発売元では昭和34年正月放送分と謳っており、桧山氏の指摘とは異なっている。またDG盤は初出LPからオリジナルス以前までのすべてのLP/CDで演奏上のキズを編集したものだったが、今回のオリジナルスのCDでよりオリジナルテープに近い音になり、各所で聴かれるノイズも上記エアチェック盤と同じとなったと結論づけます。
DGの編集版について


ベートーベン1番1952.11.29表示の伊Nuova Era盤
神奈川のHS氏から「各種ディスコグラフィーで同一録音とされる伊Nuova Era盤がノイズの比較から別録音に聴こえます」というメールをいただきました。 上記演奏については
[新会議室]へ皆さんのご意見を!

Voxフランクについて
52年に発売されたVox盤フランクは、以降発売/頒布された協会盤を含むどのアイテムよりも音の状態が良く、中古市場でも高価で取り引きされている。このVox盤の板おこしとテープを編集し最良の44年フランクを作ろうとしたと思われるキング盤(KICC2118)は、1,2楽章は音質良好なものの3楽章は、ワウは少ないがノイズリダクションのせいかやせて貧弱な音になっている。アルレッキーノ盤やダンテ盤も同様の編集が施されている。「有名な2楽章の音飛び」と記され最良な状態でのVox板おこしを感じさせるVenezia盤(V-1018)が、ノンオーソライズながら現時点では最良の音質と思われる。2002年ドイツから初めてのDG盤が発売された。91年発売のDGは日本でしか出ていなかった。Q氏によれば 新DG盤はノイズリダクションが少なく明瞭なSWFCDに近い音という。なお、ほぼ同時期に出たSWFLPと日本協会盤LPではSWFLPの方が明瞭な音でSWFCDよりも1,3楽章冒頭部のワウが少ない。またDiscocropRR盤は、この両者よりも音が悪いが、上記2種を含む3枚のLPは同じソースからのものと思われる。
  Label     LP/CD No. Release   souce              Quality

1)Vox       PL7230    1952      RRGWien-RWR?       2楽章欠落有も最良の音
2)SWF       SWF7302   1973      RRGWien-ORF+Vox    ワウは少な目音質はカサカサ気味
3)WFSJ      JP1128-9  1973      RRGWien-ORF+Vox    SWFLPよりも落ちる
4)Discocrop RR403     1975?     RRGWien-ORF+Vox    WFSJLPよりも落ちる
5)SWF       SWF902    1990      RRGWien-ORF        現在のORIGINALを感じさせる音
6)DG(JP)    POCG2340  1991/09   RRGWien-ORF&SWFLP  SWFCDにNRを多用した音
7)King(JP)  KICC2118  1992      VOXLP&SWFCD/LPcopy?比較的良好なLPおこし+α
8)Arlechino ARL140    1996      SWFLPcopy?&ORFcopy Danteよりは若干ましな音質
9)Dante     LYS124    1997      SWFLPcopy?&ORFcopy NR多用で音色変化LPおこし+α
X)Venezia   V1018     2002/03   VOXLPcopy          VOXLPおこしで現時点最良音質盤
Y)DG(G)     474030    2002/12   RRGWien-ORF&SWFLP  SWFCDと同等の音質+α


1)2楽章冒頭の欠落も伝説になるほどの最良音質盤。Voxが使用したテープの存在は不明。
2)3)4)ORF所蔵マスターからのLPと思われたがVoxも使用か? ワウは少なく聞き易いがVoxには劣る。
5)90年当時のORFテープをそのままCDにした感がある。約15年間の音質の劣化は歴然。
6)5)とマスターは同じだがワウをNRで修正し、明瞭度に劣る。2楽章は1)より上。
7)Vox板おこしと4)で使ったと思われるテープを駆使し高音質に仕上げたが、3楽章は平凡。
8)板おこしと何らかの形で入手したORFのテープを使ったようだが音質は7)より劣る。
9)全体的には8)と同様の音質だが、ほとんどは板おこしで作られていると思われる。
X)良好盤質で保存されたVox盤板おこしと思われ、CDでは盤面ノイズを除けば最高音質。
Y)5)の音質に近いがSWFLPを板おこしした部分がある。DG日本盤よりNR少なく明瞭音質。
* 7)のVoxおこし説には疑問も。X)に比べ盤質が極端に悪く或いは幻のMelodiaおこしかも。

メロディアが53年盤を45年録音としたことから偽物も登場したVoxフランクだが、この新・独DG盤とwebで聞けるandanteに触発されて、shin-pは再びVoxフランクの調査に乗り出した・・・


1953年4月14日のDG盤と協会盤は同じ物か?
今週のshin-p9/21に掲載しているようにキング(日フ協会盤?)とDGの演奏の違いについてHS氏が金管が音をはずしていることについて−
「金管楽器をバランス的に故意に弱めて不明瞭にしている様な気がします。」
という見解のメールをいただきました。またDGの1楽章4分12秒付近のテープ編集らしきものはオリジナルスでは確認できないと述べておられます。

shin-pHPでは52年2月のブラ1と同じくキング盤、DG盤、協会盤とも同じ演奏ながら過去のDG盤は演奏上のキズを編集で修正しており、オリジナルスでもなお4楽章に編集が見られるもののよりオリジナルテープの音に近づいたと結論づけます。
DGの編集版について


1954年4月10日ブルックナー8番EMBLEM盤の正体
これについてもHS氏から−

>確かにLPより良い音で何と言っても楽章の途中で面が変わらないのが
>最大のメリットですが、LPでも入っている弱音部分で聞こえる
>別の音楽(放送の混信?オペラの様な音)がそのままと言うより
>ノイズが少ない分より明瞭に聞こえ、
>ヘッドホンでは気になって聴いていられない程です。
>と言う事でエンブレム盤もORFの正規録音ではなく、
>やはり放送(1979年?)のエアチェックで
>元はチェトラと同じ音源ではないでしょうか?

というメールをいただきました。また最近アメリカ在住の収集家からさらにオリジナルに近いと思われる音源を聞かせていただいた。EMBLEMやCetraからくすみを取った感じの音源で、よりオリジナルに近いが、混信と受信状態不良のような「プチプチ」は存在している。shin-pはVPOに所蔵しているというこの原テープは実は当時占領軍の放送局だったロトヴァイザーラジオの中継回線を経由したコピーテープで、そのため放送の混信があるのだと思います。オペラのような混信音は53年フィガロの実況盤などでも聞けます。チェトラと同じような経由のテープかどうかはわかりませんが−。


1954年のマタイ
神奈川のHS氏から以下のメールをいただきました−−−−

私の手元には1954年4月14〜17日の録音と称する3つのマタイ受難曲の盤があります。 残念ながらFV12013-5そのものは持っていませんが恐らくW-31〜32が同一の録音と思 われ ますので、その比較で気付いた事を報告します。
1)EMI CHS 5655092
この録音唯一のオーソライズ盤。但し解説によると全録音の内2曲を技術的なトラブ ルによりカットしたとある。また「郷 多郎」氏が「独エレクトローラには何とこの 日付の3つのテープが存在する」と雑誌に書いているが、真偽は不明。
2)伊Movimento Musica 03.008
キングやコロムビアから出た物と同一音源と思われる。基本的には1)と同一。 便宜上Cetraと称する。
3)プライヴェート盤 W-31〜32
全部を比較した訳ではないが、ノイズマーカーの比較から1)と別録音の部分が多い。


ここで問題は64〜66番のレシタティーボなのですが

        1)EMI 2)Cetra 3)W  ポイント

64番      有    無    有   1)と3)は別録音

65番      無    有    有   2)と3)は同一録音

66番      無    有    有   2)と3)は同一録音

と言う事で1つ言える事はCetra系はオリジナルテープの66番そして多分65番のレシタ ティーボの録音がトラブルで使えない為、その部分はプライヴェート盤と同じ録音を 使って穴埋めをしているものと想像出来ます。但し64番についてはなぜ録音が存在し ているのにCetra系でカットしたのかは不明です。−−−−
それにしてもEMI盤に、 時間的にも相当長くブラベッツの甘いチェロが堪能出来る66番のアリア が入っていないのはかえすがえすも残念です。

<現時点のshin-p>shin-pもImamura氏のご協力でFV12013-5を聴かせいただきましたが、64/65/66番においてはHS氏と同じ意見です。ただ、チェトラ盤は未聴で、もう少し時間をいただきたいと思います。 [EMIの編集版について]


[F資料室について]