荒 船 山 ARAFUNEYAMA
経塚山 (1423m)

艫 岩 (1330m)

内山峠 (1080m)
  荒船山 (1423m), 内山峠 (国道254号線) より
平成23年 7月12日(火), 日帰り
   ★ 総所要時間: 4時間 50分
   ★ ハイキング標高差: 343 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


  見たものに強烈な印象を残す山容が特徴の 「荒船山」 (1423m)。 その名の由来どおり、まる
で荒海を航行する航空母艦のような形をした巨大な岩が山頂部に横たわっている。 その頂稜
部は南北約2km, 東西約400m の安山岩が台地状をなしており、北端は 「艫 (とも) 岩」 と呼ば
れる 200m の絶壁が切れ落ちている。 最高点は頂上台地の南側にある 「経塚山 (行塚山)
で、弘法大師がそこに経典を埋めたという伝説があるそうだ。

 上信国境に極めて強い存在感で頓挫する荒船山は、太平洋と日本海の分水嶺でもある。 岩
の塊のような山稜に保水力があること自体不思議な感じもするが、山頂台地には湧水があり沢と
なって流れている。 となりの 「妙義山」 (1104m) と共に、元々人気の山であったが、近年は某人
気ギャグアニメの原作漫画家が艫岩から墜落死したことで注目され、週末などには慰霊登山者
が急増していたという。

 幾つかある登山ルートはいずれもマイカー登山向きで、今回は内山峠から艫岩に登る最も一
般的な山頂往復コースを選択した。 関越自動車道から上信越道に分岐して長野方面に向かう。
朝から天気は上々だが、猛暑のせいか遠方の見通しは良くない。途中で見られる 「赤城山」 (
1828m) や 「榛名山」 (1411m) は望めなかった。 藤岡分岐を過ぎても妙義山はかろうじて見えた
が、その先にあるはずの 「浅間山」 (2568m) も厚い雲の中だ。

                   
                      樹林帯の起伏を繰り返し、緩やかに登る

 群馬県の下仁田ICで高速を降りて、国道254号線を長野県の佐久方面に向かって走る。 県境
の内山トンネルから林道に入り 「内山峠」 (1080m) の頂点付近にある長野県側の登山口 (駐
車場) に到着した。 すでに5台ほどの先客がいたが、全体では 20台程度の車が停められそう
な広さだ。 さっそく身支度を整えて、駐車場の奥にある登山口に向かった。

 入口から少し下った後、よく整備された山腹道を回りこむようにしてアップダウンを繰り返しな
がら登ってゆく。 今季初で、既に夏バテ気味!? の足腰でも 難なく登れるレベルの 初級コースだ
(笑)。 しかし、この日も強烈な日差しの猛暑日で、気温のほうも ウナギ登り (!?)である。
この登山道は全域が樹林帯に覆われているため、天然の日傘をさして登っているようなものなの
で多少は良かったのだが…、それにしても この暑さは鈍った身体にはとっても辛い (笑)。

                   
                      涼風が吹き抜ける樹林越しに艫岩を見上げる

ヤセ尾根の稜線に出ると、樹間から時おり涼風が吹き込んできたので気持ちが良かった。 更に
進むと左手からは、やはり樹間から涼風と共に艫岩も望めるようになり、ふたたび山腹道へと続
いてゆく。 連日の夕立 (雷雨) のせいか、登山道は全般に湿っており尾根や岩の上は非常に
滑りやすい。日差しが直接届かないので乾きにくいのかもしれない。
やがて覆いかぶさるような巨大岩壁に突き当たった所が 「鋏岩修験場跡」 とされる、山頂台地
の根元にあたる場所だ。 ここから右側に回り込みながら登ってゆくと 20分ほどで 「一杯水」 に
出る。 古くから登山者に親しまれた水場で、皆が必ずここで一杯口にしたことから名付けられた
との事だ。 現在でも水量は豊富だが、近年の台風で周辺が崩落しており、ここで水汲みするの
は危険を伴うのでヤメておいた (苦)。 涼しい場所なので、小休止だけして先へと進む。

      
             鋏岩修験場跡                      一杯水

  一杯水を過ぎると岩場の急登が続くようになる。 ハシゴやロープの架かった箇所もあり、濡れ
ている岩場は特に注意しながら慎重に進む。 やがて笹と雑木林の稜線に出ると緩やかな道とな
り、まもなく 東屋を兼ねた避難小屋が現れる。 広大な頂稜台地の一角に到達したのだ (!!)。
平坦となった登山道を、そこから少し左側に行くと 唯一の大展望が広がる 「艫岩・展望台
(1330m) に躍り出た。
中央に 展望案内盤が設置されており、北面の景観が素晴らしい。 眼下には内山峠と国道254
号線を走る車が手に取るように見え、「神津牧場」 の広がりも一望の下だ。 しかし、それらを見
ていると 吸い込まれそうな位の高度感で 足がすくむ。 あまり先端に近づきすぎると、非常に危
険だ。 足下はスッパリと垂直に切れ落ちた 200m の断崖絶壁なのだ (!!)。 落ちたら間違いなく
生きて帰れないであろう。 (某漫画家氏の御冥福を、謹んでお祈り申し上げます。)

      
            艫岩・展望台 (1330m )            艫岩の眼下に広がる山並みと内山峠

  さて、正面には浅間山が大きく見えているはずだが…、残念ながら僅かに広い裾野の一部
が見えるだけで、この日は山体がスッポリと厚い雲に覆われていた。 右裾にある 衛星峰の一つ
小浅間山」 (1655m) は視認できた。 その右側には 「草津白根山」 (2171m) と 「鼻曲山
(1655m) を挟んで 「谷川岳」 (1977m) も望めるが、それらも視認できなかった。 更に右側の東
方面では、榛名山と妙義山の 奇岩影が展望できた。 反対側の北西方面では、北アルプス
部 の山並みが見えるはずだが、これも残念ながら……である (悲)。

      
        正面にスッポリと隠れた浅間山            艫岩から北東方面、妙義山を望む

 展望の少ない展望台 (!?) を跡にして 避難小屋の前まで戻り、そこから南端の最高地点に向
けて笹と雑木林で覆われた熔岩台地の頂稜部を歩く。 展望は全くないが、平坦で穏やかな森
林をハイキングしているような感覚で心地良い。 ここが山頂部であることを忘れてしまいそうだ。
もちろん若干の起伏はあるが、湧水の小沢を渡って 1.5km ほどで南端の 経塚入口に至る。
そこから左側へわずかな急登で、石祠の祭られた 荒船山の最高点 「経塚山」 (1423m) に到
着した。 ここも展望は殆んどできないが、落葉した晩秋以降ならば南西方向の樹間から 「
ヶ岳
」 (2899m) や「兜岩山」 (1368m) を見渡せるそうだ。 せまい山頂の一角に荷を下して昼食
休憩をとる事にした。

       
       山頂とは思えない平坦な雑木林の道が続く       最高地点の経塚山 (1423m)

 山頂からは往路をそのまま戻る。 艫岩展望台にもう一度立ち寄ってみるが、状況は同じでむ
しろ入道雲の厚みは増していた (呆)。 一杯水の手前ぐらいまで戻ると 遠雷が鳴り、しばらくする
と晴天なのに 雨音が聞こえてきた。 樹林帯の天然日傘 (?) のおかげで、大きめの雨粒は殆ん
ど下まで届かないため、濡れなくて済んだ (笑)。 天気雨は短時間で収まり、岩壁下までは快調
に下ってきたが、いよいよ膝に負担がかかり始めていたので 若干のペースダウンをする (困)。
そんな訳で (笑)、下り時間が多めにかかる以外は 順調に進み、無事に内山峠・登山口に戻っ
た。

  荒船山は外観の奇抜さも含め、登ってみてもかなり魅力的な山だと思う。 今回は期待した展
望には恵まれなかったが、良く考えてみたら… この山の登山適期は 紅葉の始まる晩秋から冬
枯れの頃だという事に気付いた (笑)。 夏真っ盛りのこの時期は、頂稜部の見事な樹林帯が か
えって爽快感を妨げてしまっている気がする。 また、遠方の大気も澄んでくるので 艫岩からの
展望も大いに期待できるはずだ (笑)。
      
                   国道254号線から見上げる 荒船山

  お楽しみの 温泉へは内山峠から国道254号線を戻るが、途中の 「峠の茶屋」 付近からは
荒船山 (艫岩) が大きく豪快に見える。 下から見上げる姿は、まさに圧巻の眺めだ。 この裏側
(群馬県側) から見た姿が、正しく航空母艦のように見えるらしい。 資料写真で見ると、経塚山
の突起が艦橋の舳先、平らな長い稜線が甲板、切れ落ちた艫岩が船尾に相当する…、という
事で、ナルホド と納得してしまった (笑)。
下仁田町まで下ったところで、国道沿いにある 「西下仁田温泉・荒船の湯」 に立ち寄った。
今回の登山ルートでは "定番" のコースらしく…、山で見かけた人たちがここにも出没していた
(笑)。

                                        ( 2011.7.19 記 )

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