白馬乗鞍岳 HAKUBA-NORIKURADAKE
乗鞍岳 (2469m)

栂 池 高 原

白馬大池 (2379m)
    白馬乗鞍岳 (2469m, 天狗原より)
平成25年10月13日(日), 現地日帰り
   ★ 総所要時間: 4時間 40分
   ★ ハイキング標高差: 627 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 北アルプス (飛騨山脈) 北部に位置する 「後立山連峰」 の中でも、さらに北端部分を占め
る山塊が 「白馬(しろうま)」 (2932m) を盟主とした 「白馬(はくば)連峰」 である。今回のター
ゲット 「乗鞍岳」 は、その中でも 最北側に位置している 2469m の山岳だ。 "北アルプスの乗
鞍岳"
と言えば、殆んどの人が 最南端にある 3000m級の大火山群の 「乗鞍岳」(3026m) を連
想するであろう。 なので、同じアルプスに属している両者を区別するために、北部にある 乗鞍
岳の方を 「白馬乗鞍岳」 と呼称するのが一般的となっている (正式な山名は、あくまでも 「乗
鞍岳」)。
南端の乗鞍岳は、最高峰の 「剣ヶ峰」(3026m) をはじめとした 20座を越える峰々の総称とし
て名付けられているが、北端の乗鞍岳は 単一座の山名とされている点でも、両者は大きく異な
っている。 ちなみに、日本百名山に数えられているのは、むろん南側の乗鞍岳である。

 ところで白馬乗鞍岳の標高は、巷に出回っているガイド本やネット上の記述を見てみると、ほ
とんどが三角点の標高である 2436mの数値を、そのまま "山の高さ" として記載されている。
まあ、確かに通常は[三角点=山頂]の場合が多いが、そうでない山岳もけっこう存在している。
表記方法に どのようなルールがあるのかは知らないが、自分としては 全ての山岳の高さは、
[山頂=最高地点] の標高で 示すべきではないかと思う。 そうでなければ 比較する事ができ
ないのでは…!?

        乗鞍岳・山頂とされるケルン (2456m地点)

 ちょっと話が逸れてしまったが、台形状をした白馬乗鞍岳の山頂部は、広大でなだらかな為
に明確なピークが判らないのも事実で、実際にその三角点は 山頂部東側の 2436m地点
ある。 一般に山頂とされている 山頂標と、立派な 大ケルンが立つピーク地点の標高は、地
形図から考えて 2456m地点であると思われるが、そこにある 山頂標には「2436m」 と三角点
の標高が記されていた (?)。
更にである!! この山には北側にもう一つの ピーク (峰) があって ( ケルンの位置からもすぐ北
側に見えている )、そこの標高は 2469m なので、そっちの方が高いのだ ! (汗)。 ちなみに
土地理院
では、その北峰のピーク(2469m) を白馬乗鞍岳の標高点としており、長野県と新潟
県の県境も そのピークを通過している。

            ケルンから望む 乗鞍岳・北峰 (2469m)

 今季最終となる山旅は、お得意の "インチキ登法" を駆使して白馬乗鞍岳に登頂し、そこか
ら隣の 「小蓮華山」(2769m) との鞍部にたたずむ 「白馬大池」(2379m) を展望する事を目指
した、標高差 627m の往復コースである。

 早朝に出立して、上信越自動車道の長野IC を降りて 長野南バイパスから 「白馬」方面 に向
かう。 「白馬・長野オリンピック道路」 をたどり、日本一美しい村を自負する(?) 小川村を抜け
ると、いよいよ白馬村だ。 この日は朝から上天気なので、きっと アルプスもバッチリ見えている
ハズ!! と期待していたのだが…、めずらしく期待通りに うっすらと雪化粧をした後立山連峰が、
全員集合の状態 (?) でお出迎えしてくれた (笑)。
白馬は、郷里である長野市中心部からそう遠くない距離にあるので、隣の戸隠飯綱高原
同様に度々訪れているのだが、アルプスがスッキリと見えている確率は極めて低い。 正直言っ
て、いつ来ても ガスっている事の方が多い (単に、日頃の行いが悪いだけかもしれないが…!?)
なので、全部見えていると思わず 「おーっ」 と歓声が上がってしまうのだ (笑)。 それにしても、
何度見ても 素晴らしい景観で、感動的だ。 この辺の人達は、いつもこれを見て生活しているの
かと思うと… 羨ましい限りデス!  (笑)。

    
                白馬三山 (左から、鑓ヶ岳, 杓子岳, 白馬岳)

 進行方向の手前から 「鹿島槍ヶ岳」(2889m), 「五龍岳」(2814m), 「唐松岳」(2696m), そして
不帰キレット」 を挟んでさらに続く 白馬三山の 「鑓ヶ岳」(2903m), 「杓子岳」(2812m), 「
馬岳
」(2932m) までの山岳が 道路に沿って一望できる。 やがて、五龍岳に至る「遠見尾根
を通過すると、ひと際大きなボリュウムで迫る 「八方尾根」 に差し掛かる。 1998年の長野五
輪大会
での アルペンコースやジャンプ台 も見える。 それに、ここは 2003年に我ら "インチキ
山屋" が唐松岳を目指して 山小屋デビュー を果たした、記念すべきアルプスの尾根なのだ
(涙)。 八方池から眺めた 白馬三山も、雄大でとても美しかったなあ〜 (回想)。
八方尾根を過ぎると、いよいよ白馬三山が間近に迫り 「白馬大雪渓」 も視界に入る。 目指す
乗鞍岳は、白馬岳から 更に二つ北側に位置しており、登山口は 小谷(おたり)の 「栂池(つ
がいけ)高原」 にある。

 
       八方尾根 と、白馬連峰             栂池パノラマウェイ・栂池高原駅からの眺め

 栂池高原の観光拠点 「栂池パノラマウェイ」 の大駐車場に到着したのは 7:30頃で、決して
遅くはない時間だと思うのだが、さすがに 土曜日を含めた三連休の中日。 既に駐車場は満車
に近い状態だった (汗)。 ここから、ゴンドラとロープウェイを乗り継いで 一気に 990m の標高を
稼ぐ。 駐車場脇の 「栂池高原駅」(839m) から、まず6人乗りの 「栂池ゴンドラリフト・イヴ」 で
約20分間の空中散歩をするが、白馬三山が大パノラマとなってグングン近づいてくる景観は最
高だ。 「栂の森駅」(1560m) で降り、250m ほど歩いて 「栂池ロープウェイ・栂大門駅」 から、
71人乗り大型ロープウェイに乗り換える。 5分ほどで終点の 「自然園駅」(1829m) に到着した。

 
    ゴンドラリフトより、小蓮華山 を望む            栂池自然園・入口と、白馬乗鞍岳

 正面には、白馬岳の右横に薄く雪化粧した小蓮華山が聳えており、その隣に目指す乗鞍岳も
大きな姿を見せている (乗鞍岳に積雪はない)。 それにしても朝からけっこうな人出だが、このう
ち登山目的の人は 1/4位であろうか…?  残りの殆んどは 「栂池自然園」 でトレッキングを楽し
む人達であると思われる。
今回は入園しなかったが、この栂池自然園も なかなかのもので (過去に 2回ほど訪れている)、
ここだけでも 充分にアルプスの絶景を楽しめるし、全コースを歩けば 登山並の運動量に匹敵
する。 中部山岳国立公園第1種特別地域に指定された、標高 2000m 前後に広がる 日
本有数の 高層湿原で、それぞれに特徴がある 4箇所の湿原と、数百種に及ぶ高山植物が咲
き誇る 広大な自然空間だ。 全周は約5.5km, 所要3〜4時間、最奥地の 小高い展望湿原
らは、白馬大雪渓が間近に望める。

                 
                 登山道から望む、栂池自然園 と 白馬三山

 登山道は、その栂池自然園・ビジターセンターの脇から始まる。 笹が茂る道を登ってゆくとす
ぐにダケカンバ等の樹林帯となり、急坂をジグザグに登ってゆく。 昨日、下界は雨模様だった
が、アルプスの山域では 雪となっていたのだろう。  登山道にも雪が残っていて滑りやすいし、
一部では雪解け水のためドロンコ状態の道となっており、少々歩きづらい。 (ひよどり)峰・分
を過ぎると周りの展望が開け、眼下に 栂池自然園を見下ろすと共に、雪をまとったアルプス
の白い山並みも、高度が増すにつれ更に見事な展望へと変わってくる。 やがて 「銀嶺水」と書
かれた水場の標識が現れるが、水は涸れていた。 そこから更に しばらく進むと、岩がゴロゴロ
した平坦地が現れ、登山者達の休憩ポイントとなっていた。

 
       登山道には残雪が…                 天狗原、 乗鞍岳(正面) に続く木道

これを通過すると ふたたび急坂が続き、やがて不意に木道へと変わった所で広大な湿原 「
狗原
(てんぐっぱら)」 に躍り出た。 この湿原も 栂池自然園に負けないくらいの広さがあり、壮観
な眺めだ。 花の時期ならば、さぞ美しいであろう。
そして、正面には 目前に迫った乗鞍岳がドーンと全貌を見せている。 ここから見ると台形状の
山容で、山頂部が広く平らである事がよくわかる。 湿原の木道は、その乗鞍岳に向かって長く
延びているが、積雪しているのでとても滑りやすい。
小休憩して木道を慎重に進み、再び背の低い樹林帯に突入する。「風吹大池」への分岐を過
ぎると 一段と傾斜が増して、いよいよ乗鞍岳本体への登りとなる。

                 
                東側 (北信濃) 方面の展望、下に天狗原を一望

しばらく急登が続いて、灌木帯を抜けると 周囲の展望が開け、振り返ると眼下に広大な天狗原
が俯瞰できる。 そして東方面は、幾重にも広がる 北信濃の壮大な山並みが一望のもとだ。 「
隠連峰」(1904m), 「妙高山」(2454m) をはじめとする北信五岳や、「雨飾山」(1969m), 「一夜山
」(1562m) などの山々。 さらに遠方には 「四阿山」(2354m) , 「浅間山」(2568m) の他に 「八ヶ岳
連峰
」(2899m) も見えている。

        岩場の急坂 "大壁" を登る

そして、前方には本ルートにおける 唯一の難所とも言える "大壁" と呼ばれる 岩場の登りが待
ち受けていた (苦)。 大きな岩が長い距離にわたって、ゴロゴロとまき散らしたかのように積み重
なって広がっている。 赤ペンキの目印を頼りに 岩の頂点を渡り歩くのだが、これは さすがに年
配者や小さな子供たちにはキツイ !  右手には雪田も見える。
ようやく大壁を登り切ったところで、どうやら山頂部の端に出たようだ。 なるほど広い山頂部で、
確かに ハッキリとしたピーク地点は識別できない。  先に進むと 大きなケルンが見えてきて、登
山者達が大勢集まっている。 どうやら、そこが山頂とされる 2456m のピーク地点 らしい。 いつ
の間にか三角点 (2436m) を通り過ぎていた事に、まったく気が付かず見落としてしまった (笑)。

 
        広大な 白馬乗鞍岳 の山頂部  ( 中央に小蓮華山、左: 白馬岳、右: 雪倉岳 )

 ケルンと山頂標が立つ周辺に荷を下ろして、休憩をとる事にした。 ただ、ハイマツ帯の山頂部
には 何も遮る物がなく、超・冷たい風が吹き抜けているので、あまり長くは留まっていられない。
さっきまでは ヤセ我慢していたが、さすがに止まっていると寒いので ジャケットを重ね着して手
袋も着けた (遅い!)。
申し遅れたが (笑)、山頂からの景観は まさしく絶景!!   好天も幸いして、冠雪したアルプスくん
達が全方位に素晴らしい顔を見せてくれている。 特に直近の小蓮華山と、その左側に続く白馬
岳の眺めは迫力満点だ。  右側の大池方面には 「雪倉岳」(2611m) も頭を覗かせており、その
更に右隣には 乗鞍岳の最高地点となる 北峰(2469m) も見えている。

 
     山頂から望む 白馬岳 (2932m)              山頂部から、白馬大池方面に下る

さて、山頂からの景観を楽しみながら休憩したところで、今回の最終目的である 白馬大池 を眺
めに行く事にする。 白馬大池は 乗鞍岳と小蓮華山の 鞍部 2379m の高所に位置する、乗鞍岳
の噴火によってできた 堰き止め湖だ。 青々とした水を湛えた大池は、白馬周辺屈指のビューポ
イントであり、高山植物の大群落地 としても名高い。 また、池畔に建つ「白馬大池山荘」 の赤い
屋根も景観の一部と化しており、北アの人気山小屋のひとつだ。 山頂ケルンから 100mほど北側
に下った辺りから 大池が見えてきた。 池の畔までは 30分ほど 岩場の急坂を下る必要がある。
帰りは当然、その急坂を また登り返さなければならないので、そこからもう少しだけ下って全体が
良く見渡せる場所で 「ヨシ!!」 とした (笑)。

 
             白馬大池 (2379m) を望む ( 中央・奥に 朝日岳, 左側: 雪倉岳 )

 写真でよく見た美しい光景が、いま目の前に広がっている (満)。 小蓮華山へと続く 「雷鳥坂
の奥に、太い縦縞模様に冠雪した 雪倉岳と、その右奥には 「朝日岳」(2418m) も良く見えてい
る。 いつまでも眺めていたいところだが、ここも極寒の風が吹いており 長くは留まれない。 白馬
大池山荘に宿泊するのであろうか…、池に向かう登山者達が 次々と岩場を下ってきているが、
こちらは景色を堪能したところで 早々に引き返す事にした。

 
         小蓮華山 (2769m)                     雪倉岳 (2611m)

山頂ケルンまで登り返して、あとは往路をそのまま下山する。 天候は安定しており、ガスもあがっ
てきていないので、当面は白馬連峰の景観を眺めながらの下山となりそうだ (嬉)。 岩場の下山
では、登ってきた時よりも 岩の表面が乾いていたので、多少はコンディションが良くなっている
ものの 滑りやすい事に変わりはないので、特に慎重に下る。
 随所で見られる景観は、何度も言うが ホントに素晴らしく、実に気持ちの良い 山歩きができた
(幸)。 紅葉の方は 一部で色づきはじめており、ナナカマドの鮮明な紅色が印象的だったが、全
体的には これからが紅葉の本番といったところだ。

 
       天狗原の湿原  (下山時)              天狗原から眺めた白馬連峰  (下山時)

 栂池自然園に戻ったのは 午後1時ぐらいだったが、大勢の人が ウヨウヨ していて大混雑してい
た。 さすがに "行楽の秋" の連休である。 あとで聞いた話だが、この三連休は 隣の八方尾根で
今シーズン最高 "ウニ" でなく "ヒトデ (人出)" となったそうだ !  (寒)。
ビジターセンターの売店で ソフトクリームを頬張り小休止した後、400m ほど下のロープウェイ・自
然園駅に向かうと、ナント!! 渋滞しているではないか! (驚)  ロープウェイの乗車待ちの列が駅舎
外にまで繋がっていた。 30分程おとなしく列に並び、スシ詰め状態のロープウェイに乗り、続いて
ゴンドラリフトへと乗り継いで、栂池高原駅に無事帰還した。 (疲)

             栂池自然園から望む 白馬乗鞍岳

 恒例のお楽しみである下山後の温泉だが、実はゴンドラ駅のすぐ下の駐車場に隣接した所に、
大きな 日帰り温泉施設 「栂池高原・栂の湯」 がある。 車を止めたまま直行できるので 非常に
便が良く、はじめは そこを利用する事に決めていたのだが…、この日はとにかく人が多く、こちら
もカナリ混雑していたので、別の温泉施設に向かう事にした (汗)。  混雑して "イモ洗い" 状態の
温泉ほど気持ちの悪いものは、この世にない!! (笑) 
白馬には 「白馬八方温泉」, 「白馬塩の道温泉」 など泉質の異なる 4つの源泉があり、それぞ
れに 沢山の温泉施設と 共同浴場が点在しているので 選択肢も豊富だ。 今回は 塩の道温泉
人気の、共同浴場 「倉下の湯」 を利用した。 源泉掛け流しの褐色の湯は、奇しくも 塩分を多く
含み、露天風呂からは 白馬鑓ヶ岳を間近に眺めながら入浴できる。 岩場の登坂で疲れた足腰
をよく揉み解し、マッタリとしてから 後立山連峰のアルプスくん達に別れを告げ、帰路についた。

                                                                                           ( 2013.10.24記)

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