苗 場 山 NAEBASAN
苗場山 (2145m)

坪場 (山頂湿原)

秋 山 郷
  苗場山 (2145m), 屋敷地区・秋山林道より
平成23年 8月18日(木), 現地日帰り
   ★ 総所要時間: 8時間 15分
   ★ ハイキング標高差: 855 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


  北信州の最北端・栄村と、越後・津南町にかかる細長い山峡の地 「秋山郷」 は、中津川沿い
に点在する12集落の総称である。 なかでも秋山郷最奥部に位置する 「小赤沢,屋敷,上野原,和
山,切明」 地区は、東の 「苗場山」 (2145m) と、西の 「鳥甲(とりかぶと)」 (2038m) に挟まれた
山峡の集落で、まさに "秘境の里" そのものだ。 今回、苗場山の登頂を目指した我ら "インチキ
山屋" 一行は、その最短コースの起点となる秋山郷に観光を兼ねて訪れた。
登山前日に秋山郷に入り、周辺を観光して苗場山登山口に最も近い 「小赤沢地区」 の民宿に
1泊、翌早朝から日帰り登山を敢行。 下山後は 「上野原地区」 に移動してもう1泊し、翌日に
帰宅するという計画だ。

 信越国境に位置する苗場山の魅力は、何と言っても山頂部に広がる広大な湿原の存在であろ
う。 山頂南西側 4km四方、周囲 10km にも及ぶオオシラビソの原生林に囲まれた平坦な山頂
台地に、大小1000以上もの 「池塘(ちとう)」 を抱えた巨大な湿原 (約600ha) が広がっているの
だ (驚!)。 むろん他の山には見られない苗場山の大きな特徴の一つで、周囲の山々からもその
平坦な山頂部が一目でわかるほどだ。
元々は 那須火山帯に属する 円錐状成層火山であったが、溶岩の堆積と浸食を受けて山頂部
が平坦になったものと考えられている。 そこに雨水などが溜まり、枯植物が泥炭となって堆積し、
現在の高層湿原となったらしい。  湿原だけに夏の植物や花、秋の草紅葉は勿論のこと、晴天
時には周囲の山岳展望も素晴らしく "山上の楽園" と呼ぶにふさわしい絶景が楽しめる、日本百
名山
の一員である。

             
                      果てしなく広がる、壮大な山頂湿原

 登山コースは西の長野県 (秋山郷) 側から3本、東の新潟県側から2本あるが、いずれも中級ク
ラス以上のレベルであり、決して 楽チンに登れる山ではない。 つまり、インチキは通用しないとい
う事だ (笑)。 その中でも最短路 (日帰り可能) で山頂に立てるのが、「小赤沢コース」である。
とは言っても、標高差は 855m, 標準的な所要時間は6時間を超える為、我ら インチキ隊にとって
は "難易度:高" の ハイレベルマウンテンである (笑)。
ちなみに、苗場山と言えば冬のスキー場も有名だが、これらはいずれも新潟県側の斜面に数多く
展開されている。

 秋山郷・小赤沢地区の民宿 「苗場荘」 を6:30頃に出立し、三合目にある駐車場 & 「小赤沢・
登山口
」 に向かう。 途中の 一合目 (940m) には 「大瀬(おぜ)の滝」 という観光スポットがあり、
なかなか素晴らしく気持ちの良い滝なので、下山後にでも立ち寄ってみることをオススメする (我
らは前日に訪れた)。 狭い林道をクネクネと走り、約20分で三合目の広い駐車場に到着。 かなり
大きなスペースで、キチンと並べて停めれば相当な数の車が収容できるだろう (ガイド本では 30
台程度とあったが、かるく倍以上は停められる)。 ここにはトイレも設置されており、登山口はその
広いスペースの一番奥にある (広すぎて、すぐには見つけられなかったくらいだ)。

        
              大瀬(おぜ)の滝                 三合目 小赤沢・登山口

 身支度を整えて登山口に入り、樹林帯の小尾根を登ってゆく。 このコースでは各合目ごとに標
識が立てられており、標高と次の合目までの距離, 時間が表示してあるので目安となって良いの
だが、年季が入っているせいか…?  文字が擦れてきており、場所によっては殆んど判読できな
い所もあった (困)。
湿原を抱く山岳らしく登山道は常にぬかるんでいるようで、特に最近は連日のように夕立が続い
ているので、登山道にも雨水が流れ込み "沢" と化していた (昨夜も10時から深夜2時頃まで激し
い雨が降り…、ちょっと心配した)。 水溜まり、泥沼化した箇所、濡れて滑りやすい尾根や岩など、
足元の注意には気を抜く暇がないほどだ。 それからもうひとつ、時季にもよると思うが五合目あ
たりまでは虫が多く、アブやブヨ などもブンブン飛んでいるので、虫対策も ムシ(?)できない (寒)。

             ぬかるんだ階段状の尾根道 

ムシ暑さ(!?) と虫に悩まされながらも、ようやく 四合目(1470m) に到着。 体がまだ慣れてなかった
せいもあり、長い道のりに感じた。 ここには少しだけ右脇に下った所に水場がある。 「水飲場」 の
札が付けられているので飲めるとは思うが、昨夜の豪雨で この水の 8割は雨水だろうと思ったの
で飲水は遠慮しておいた (笑)。 ちなみに、水の豊富な苗場山ではあるがこの山頂には "湧き水"
は存在しないとの事だ。

                五合目 (1580m)

樹林帯の虫をかき分けて(?) さらに進むと、五合目を過ぎたあたりから急な登りとなってくる。 一
部崩落した箇所や、鎖場、大きな石がゴロゴロした箇所も断続的に現れ、少々難儀する場面に
も出くわすが、足場を確かめながら慎重に進めばさほど危険ではない。  六合目に近づくと虫の
数は次第に減って気にならなくなる。 途中に 「風穴」と思われる風の通り道が登山道と並行して
いる箇所があり、冷気が心地良かった。また、この辺りにも「天狗の水」と呼ばれる水場が現れ、
冷たい水がこれまた気持ち良い。 空いたペットボトルに水を汲み "山頂でのお楽しみ…" とする
事にした(微笑)。
六合目(1750m) を過ぎ、依然として急坂が続く。 ひたすら登り詰め、七合目 (1810m) あたりか
らは高木が減って、風もさわやかになってきた。 時おり周囲の景色も見えるようになるが、この日
も雲が多くて 視界はあまり良くない。 八合目 (1940m) を過ぎるとようやく傾斜が緩み始め、周囲
の草木はクマザサが主体となり、山頂部の稜線が望めるようになってきた。

               
                    山頂台地の湿原入口(坪場)に躍り出る

さらに上へと進んでゆくと、突然前方の視界がパッと明るくなって開け、広い台地状の湿原地
帯に躍り出た。 これは 感激ものだ!! 素晴らしい光景である。  果てしなく続くかのような木道と
共に出現した山上の大湿原は、まるで "ミニ尾瀬" のようだ。 湿原の入口に当たるこの場所が
坪場」 であるらしい。 上信越高原国立公園の案内標識と休憩スペースがあったので、湿原
に出てイキナリではあるが、ここで民宿から調達してきた おにぎり弁当 を食べながら心地良い
景観を楽しむことにした。

                           
                                前方の頂上(最高地点)方面に向かって伸びる木道

整備された木道を辿って、ほぼ平坦な湿原を快適に進む。 前方に小高くなったところが頂
上 (最高地点) 方面だ。 何しろ広大な台地なので 距離的にはまだかなり先であるが、そんな
事は全く気にならないくらいに気持ちの良い空間だ。 ついさっきまでの厳しい急登がウソのよ
うで、ここが山頂台地である事も忘れてしまいそうである。 花のピークは過ぎているようだが、
若干の高山植物も散見され、大小無数に点在する湿原の象徴 「池塘」 も美しい。 やがて右側
から 「和山コース」 の木道と合流した先が、九合目 (2020m) に相当する地点だ。 これを過ぎ
ると 一旦、湿原と木道が途切れて大きな石がゴロゴロとした低木主体の山道へと変わる。 だが
傾斜の緩い登りで、それも僅かな距離で終わって 再び湿原に戻る。

一段と高くなった地点から、見下ろすように眺める湿原も 雄大な眺めだ。 再び現れた木道を
更に山頂方面へと進むと 「龍ノ峰」 (2037m) への分岐を過ぎたあたりで、前方に 「苗場山頂
ヒュッテ
」 らしき屋根が見えてきた。 頂上地点はもう、すぐそこだ。 山頂ヒュッテの玄関前を通
過して、若干の樹木が林立する小高い場所に 「苗場山・山頂」 の大きな標柱が立てられてい
た。 ここが 2145mの最高地点 (頂上) であるが、この場所からの展望は樹木に遮られて何も見
えない。 標柱のすぐ隣には、現在営業休止中の もう一つの山小屋 「遊仙閣」 があり、登山道
(木道) はその先 (新潟県側からの登山道) へと更に続いていた。

               苗場山・頂上(最高地点)  

頂上地点では写真撮影だけを済ませて、サッサと山頂ヒュッテ側の湿原へと引き返した。 ヒュッ
テにはトイレがあり、軽食や飲料などの調達も可能だ。 我らはヒュッテの下に、湿原に面した少し
広い休憩スペースがあったので、そこに荷を下ろして長めの休憩を取る事にした。 六合目手前
の水場から汲んできた天然水を沸かして、熱いコーヒーをいれる。 山頂でのお楽しみ…とは こ
の事だが (笑)、水が良いのか? 場所が良いのか? …、とにかく こういう所で飲むコーヒーは格別
に美味しいものなのだ!! (断言)。

        
                     広大な山頂台地に広がる高層湿原

 さて、いつまでも 留まっていたいのは山々(!?) だが、帰路にも相当な時間がかかりそうなので、
早めに下山に取り掛かる事にした。 往路をそのまま戻る 往復ルートである。 しばらくは平坦で
快適な湿原の木道歩きが続くので、雄大な自然を充分に堪能しながら 坪場へと戻る。
木道は所々で腐敗したり 損壊している箇所があるので、必ずしも安全ではない。 整備されてい
るとはいえ、尾瀬の木道のように 頻回な修繕までは出来ていないようだ。 そんな折、ママは踏み
込んだ木道が 不運にも突然割れて窪み、足首に軽い捻挫をしてしまった。 なんとか歩く事が出
来る程度で済んだので 不幸中の幸いだったが、たとえ木道の上でも足元の注意は怠れない。
坪場からは通常の山道に戻り、長い道程をひたすら下ってゆく事になる。 八合目までは順調に
戻るが、その先は滑りやすい急坂や岩場が連続する為、登り以上に神経を使って降りる。 足首
を庇いながら歩く軽傷者と、例によって 膝と腰にバクダンを抱える者がいる為 (汗)、いつも以上
に時間を要した下山となったが、何とか全員が無事に三合目の登山口へと辿り着いた。

              帰路、九合目付近 

 ところで、山頂台地では 広大な湿原以外の 周辺山岳展望については、厚い雲に覆われて殆
んど見る事が出来なかった。 この日は曇りがちで 元々天候は良くなかったのだから、雨に降ら
れず湿原が見渡せただけでも ラッキーだった と思うべきであろうが…、いつもの事ながら 少々残
念であった (悲)。 山頂からは間近に迫る 「鳥甲山」 (2038m) の展望が特に素晴らしく、「谷川連
」 (1977m) や 「八海山」 (1778m) をはじめとする 越後三山、「岩菅山」 (2295m) などの上信越
国境の山々が一望できる他、「浅間山」 (2568m) や 「草津白根山」 (2171m)、北八ヶ岳の山並な
ども湿原の彼方に遠望できるとの事だ。

 三合目・P で身支度を解き、秋山郷・上野原地区 にある本日の宿泊施設 のよさの里・牧之(
ぼくし)の宿へと向かって車を走らせた。

                                                                                                         (2011.8.25記)

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