な 話 (わ)


01, ワケの判らないヤツの話し

 某サムシングが、最初の場所である環七は龍雲寺交差点の内廻り側にあったある日曜日のこと。

 その日、某サムシングの開店時間より早めに到着したA氏は、一台の地方ナンバーを付けたスポーツ800がオープン状態でお店の隣の駐車場に止まっているのが目に留まりました。

 オーナー(orドライバー)のそれらしき人影が近くに見当たら無いので開店まで何処かで時間を潰しているのでしょう。良くある事なので、置いてある車を一回りして覗いているところ、いつもより早く当の店主が仏頂面してやって来るではありませんか。

 店主と共に店内に入り、外にスポーツ800が止まっていることを伝えると、店主曰く「その持ち主の為にいつもより早くやって来た」とのお答えが帰ってきました。

 しかし、当人が居ない。

 「早く来てみれば誰もいないのでは意味がない、どういうブブン!」と店主はいたく憤慨しておりました。

 前日の閉店時間前にその持ち主らしき人物から電話があり、明日伺うのでと前置きしてお店の場所と詳しい道順、営業時間を尋ねられたそうです。

 更にその人物曰く、「早く到着するから店を開けて待っていてくれ」と伝えてきたそうです。

 遠いところからやって来る方にはありがちな発言と思います。

 それに対して店主は、「いつ何時来るのか判らないのでは、そんなことは出来ない」とお断りを入れたとのこと。

 板橋から世田谷まで電車通勤されている店主にしてみれば当然の答えとA氏も思った。

 A氏が思うに、そのような実体であることとは知ら無い当の相手は、「この手のお店は店舗併用住宅である」と決め込んでいたフシが伺える。

 しかし、そんなことで怯む相手では無いことが「この日の朝になって起きた」と店主の口から告げられました。

 朝方の07:00頃、(A氏が自宅を出発した頃かな?)迷惑にも店主の御自宅に一本の電話が掛かって来たそうな。

 「今、店の前にいるから開けてくれ!」と、その相手が注文を付けて来たのこと。

 何処でどうやって店主の自宅を聞出したのか、今もって不思議なコトで仕方ないのだが・・・・・・

 仕方なく店主はいつもより早くご自宅を発たれて来たそうな。

 果たして、お店に到着してみれば当人はおらず、変わりにA氏がお出ましになっていたので、仏頂面でのご対面とあいなったワケです。

 その話しで店主と二人店の奧で、「困ったもんだね〜」と言って盛り上がっているところに当人が勢い良く現れた。

 それは、小太りと細面のおっさん風情の二人連れだった。

 A氏にはどちらとも「間違いなく!」40代後半の年齢と受け取った。

 「店が開いていないから近所で朝食を取って時間を潰していた」と小太りのおっさんがいきなり切り出し、さも店側に「非」があるようなことを仄めかしながら、挨拶も無く店内の品々を物色し始めた。

 連れの帽子を被った細面の人物も一緒に物色するのかとA氏は思い込んでいたら、さにあらず。

 小太りおっさんと店主とのやりとりを黙って見ていると「時間が掛かるようだから外で時間を潰して待っている」と言い残してさっさと出ていってしまった。

 不思議に思ったA氏はそのことを小太りのおっさんに尋ねると、「彼は友達で、彼に頼んで運転してきて貰った」とのこと。

 「友達?」「頼んで運転?」「外で時間を潰す?」等々「?」マークが3つも4つも浮かんで来ましたが、「おいおい、そりゃあどういうことだい?」とは口には出しませんでした。

 小太りおっさんは、入店してから1時間は掛からず、一通り欲しいものを手に入れることが出来たらしく帰ることになりました。

 このとき、どちらが言い出したのか定かではありませんが、お節介にもA氏が小太りおっさんのスポーツ800の品定めをすることとなりました。

 確かおっさんはA氏に対して「何か変なところがあったら教えて下さい」と言ったように思います。

 この様な場合A氏は「見える部分がオリジナルと相違する点の指摘」と解釈しているので、その観点から、かのおっさんの後について彼のスポーツ800を見て回りました。

 全般的に、地方からここまで来られるなら運転に支障をきたす程の問題は無いし、外観やコクピットの装備品については、「年式がまちまちの部品で構成されているものの、部品の入手状況を考えれば致し方のない云々」とおっさんに伝えました。

 続いてボンネットフードを開いて貰いエンジン周辺を見てみると、アクセルリンクが他車種からの流用品で装着されていたのでこの点を指摘致しました。

 それを聞いたおっさん「そうですか違うんですか、このままで大丈夫ですか?」と問われたので、「リンクが無理に納められているように見えるので、走る分には支障が無いだろうが部品が入手出来次第交換した方が良いでしょう」とおっさんにアドバイスしました。

 そのおっさん、考えるように「違うんですか・・・」と繰り返し呟くと、時間潰しから戻った「お友達」の運転でお帰りになられました。

 店内に戻って事の顛末をかいつまんで店主に伝えA氏はお店を後にしました。

 翌週末の日曜日。

 某サムシングに立ち寄り、店主に挨拶して部品を物色しよう等と思ったA氏を認めた店主は開口一番、「A氏、先週小太りおっさんの車でいろいろ言ったでしょう?」と申されました。

 A氏は頷くと店主は続けて、「そのことでトヨタの某ディーラーの所長から電話があって、A氏が指摘したアクセルリンクが違うから直せとねじ込んできた」と申されるではありませんか!

 事情が飲み込めないA氏に店主が言うには、「かの小太りおっさんのスポーツ800のメンテをその某ディーラーで引き受けているのだが、彼はそこでは頭痛のタネで有名な人物」とのこと。

 そこの所長が言うには、最初「スポーツ800はトヨタ車だから何とかしろ」と言って持ち込んで来て直させるのだが、直しても別な箇所を指摘しては支払いをしない、と言うことを繰り返している札付きのおっさんだそうです。

 そんなひねくれた性格の持ち主とは知らなかったA氏は、請われるままに答えただけなので話しが意外な方に向いてしまい困惑し、「親切を仇で返して貰った」ような「苦虫を噛み潰す」ような気持ちでいっぱいでした。

 まあ、まっとうな人格と常識を備えた人物ならわざわざスポーツ800に乗ろう等とは思わないだろうが、これ程までに常軌を逸する「ワケの判らないヤツ」もまた希有で珍しい事でしょう。

 しかしね、利害関係の無いA氏を「出汁に使うなよっ!」と言いたい。


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