中田市長の手法に「違法」判決、横浜市・保育園「民営化」問題(2006.5.23):(1)早急な保育園民営化 違法 横浜市に賠償命令、『東京新聞』第一面トップ、(2)横浜市立保育園民営化「違法」認定 「人を扱ってる認識を」 『東京新聞』神奈川版、(3)横浜・保育園民営化「違法」判決 「中田手法」に警鐘 保護者へ「説明不足」 『朝日新聞』神奈川版

 

 

資料

柿の木台.com  http://kakinokidai.com/cgi-bin/topics.cgi? 

ぼくたちの岸根保育園 http://www.geocities.jp/madokakamen/ 

佐藤真彦:『岸根保育園の民営化問題』(2003.6.11)

平 智之:保育所「民営化」の新動向−市長・市当局の「各個撃破作戦」?に対抗する若い保護者たち−(2003.6.23)

このままでいいのか中田市政『改革』―3年間で12園の市立保育所の廃止,民営化,横浜市立大学の「改革」,市バス民営化― 『横浜市政新聞』(2004.1.25)

横浜市立保育園民間移管に対する抗告訴原告団:プレスリリース(2004.2.11)

保育園民営化「中止を」 横浜市相手取り保護者ら提訴 『朝日新聞』 (2004.2.13)

民間移管一週間を経て、本日4園の保護者会は以下の声明を出しました。2004.4.8 報道機関の皆様へ 『柿の木台.com』 (2004.4.8)

“市民派”中田市長の“官僚的”不誠実回答――市立保育園民営化問題(2004.6.7)

『横浜市、市立保育園の譲渡価格を公表』 《千丸台保育園は1千万円以上ですが、他の3園は数百万円台でした。なんか違和感あります。》 (2004.6.19)
自治労横浜『声明』:市立保育所民営化問題で,中田市長が歪曲発言(2004.7.13)

 

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060523/mng_____sya_____008.shtml 

(1)早急な保育園民営化 違法 横浜市に賠償命令 『東京新聞』(第一面トップ)(2006.5.23)

 

早急な保育園民営化 違法 横浜市に賠償命令

 横浜市の四つの市立保育園の民営化をめぐり、保護者と園児ら六十七人が「性急な民営化は園児の発育に悪影響を与える」として、市に民営化取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が二十二日、横浜地裁であった。河村吉晃裁判長は、「早急な民営化は裁量の範囲を逸脱し、乱用したもので違法」と指摘し、在園園児の保護者二十八世帯に一世帯当たり十万円、計二百八十万円の支払いを命じた。 

 原告側代理人によると、公立保育園の民営化をめぐり、行政手続きを違法と認定したのは全国で初めて。損害賠償を認めたのは今年四月の大阪高裁判決に次ぎ二例目。

 判決は、民営化取り消し請求については、四園が廃止されて既に二年以上が経過していることなどから、「取り消すのが原則だが、無益な混乱を引き起こしかねない」として請求を退けた。また卒園児の保護者らの訴えは却下した。

 判決によると、市は二〇〇三年四月、港南区などの四保育園の民営化を発表。同年十二月、民営化に向けた条例改正案が市議会で可決され、市は〇四年四月一日から民営化を実施した。

 河村裁判長は、民営化自体は「行政の一つの選択肢で、違法とまでは言えない」とした。しかし、市が一年後の民営化を突然公表したため、保護者らが反発し、四園とも協議の場を設置できなかったことや、民営化への引き継ぎ期間を三カ月間しか設けなかったことについて「特別に民営化を急ぐべき事情があったとは言えず、保護者の利益を尊重したものとは到底言えない」と述べ、違法性を指摘した。

 保護者らは「拙速な民営化で保育士らの人件費が削減され、保育の質が低下した。園に行きたがらなかったり、体調を崩す園児が出た」と主張していた。

 だが判決は「児童の年齢を考えると、精神的な苦痛を園児共通のものと把握することは困難」として園児らの賠償請求は退けた。

 判決後、同市役所で会見した原告側の海渡雄一弁護士は「違法と認定したことは画期的だ。横浜市は保育園民営化政策を根本的に見直すべきだ」と述べた。

 横浜市こども青少年局の比江島勝秀・子育て支援部長の話 違法とされ賠償が命じられたことは厳しい判決と受け止めている。判決を詳細に検討し、控訴するか否かも含め慎重に検討したい。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20060523/lcl_____kgw_____001.shtml 

(2)横浜市立保育園民営化『違法』認定 『人を扱ってる認識を』 『東京新聞』神奈川版(2006.5.23)

 

横浜市立保育園民営化『違法』認定 『人を扱ってる認識を』

 横浜市立保育園の民営化をめぐり、同市の対応を違法とする判決が二十二日に横浜地裁で言い渡されたことに、市はショックを隠せない。判決を受けても「十分な説明を行った」とするが、発表から一年弱で保護者に理解されないまま民営化に踏み切った背後には、「一年でできないものは五年たってもできない」と語り、行政見直しでスピードを重視する中田宏市長の意向が反映している。市は控訴するとみられ、決着は上級審に委ねられそうだが、地裁判決が市の行政運営の進め方に与える影響は大きい。 (金杉貴雄、佐藤大)

 「民営化に反対したのではなく、説明を聞こうとしたのに、市は最初から『来年四月から民営化する』と決定を突きつけてきた」。会見した原告団の代表、金道敏樹さん(46)は、市の対応をあらためて批判した。

 市立丸山台(港南区)、鶴ケ峰(旭区)、岸根(港北区)、柿の木台(青葉区)の四園の民営化を市が発表したのは、二〇〇三年四月二十三日。入園前なら他の保育園を希望する選択肢もあったのに、その四月から入園した児童の保護者にとっては「なぜもっと事前に知らせてくれないのか」との不満が噴出。他の保護者も、環境が大きく変わることに不安を募らせた。

 零歳から六歳までの保育園児たちは、環境の変化にデリケートだ。民営化では、担当の保育士が変わるだけではなく、園の保育士が全員変わる。

 しかも、四園の引き継ぎのために設けられた民営団体との共同保育期間はわずか三カ月。民営化前後で統計の取り方が違い一概に比較できないが、四園でけがをする園児の数は民営化後に倍近くに増えたとの報告もある。実際、民営化初日に柿の木台保育園では、遊んでいた女児が鼻の骨を折る事故も起きた。

 当時の市の対応は、保護者への説明でも言葉尻をとらえられないように意識したのか、言葉を尽くしているようには受け止められず、翌年四月の民営化は決定事項として「ご理解を」と言うばかりだった。

 民営化の目的について市は、三歳児以上の主食提供や一時保育、延長保育など「多様化する保育ニーズに対応するため」とする。「各園のサービスを公平に提供する必要がある市立園では、そうした施設や保育士を一度に準備しなければならないが、財政難で難しいため、徐々に民営化して民間の責任で柔軟に対応してもらう」と説明する。

 しかし、民営化初年度に保護者や児童が不安を持ち、理解されないままなのに、何が何でも翌年四月に実施しなければならないとする、説得力のある理由は示されなかった。

 市は他の自治体での事例を検討したとしているが、果たして十分だったのか。実際、民営化二年目からは、対象保育園の発表から実施までの期間を一年半に延ばし、共同保育の期間も五カ月にしている。

 金道さんは「公立か民営かということではなく、園児という『人』を扱っていることを認識して、市は判決を重く受け止めてほしい」と訴えていた。

<横浜地裁判決の骨子>

 ▽児童福祉法は、保育所選択について保護者の法的な利益を保障している

 ▽民営化自体は多様な保育ニーズに応える目的で、違法とまでは言えない

 ▽市の突然の民営化発表や3カ月間だけの引き継ぎ期間は、保護者の利益を尊重していない

 ▽4保育園の早急な民営化は、市の裁量の範囲を逸脱し、乱用したもので違法だ

 ▽ただ、民営化から2年が経過しており、無用な混乱を避けるため、取り消し請求は棄却する

 ▽保護者の慰謝料は、1世帯10万円が相当

 

(3)横浜・保育園民営化「違法」判決 「中田手法」に警鐘 保護者へ「説明不足」 『朝日新聞』神奈川版(2006.5.23)

 

横浜・保育園民営化「違法」判決 「中田手法」に警鐘 保護者へ「説明不足」 『朝日新聞』神奈川版(2006.5.23)

 

横浜市が進める市立保育園の民営化について、横浜地裁が「違法」との判断を示した。保護者に対し十分な説明を行わずに実施したことを批判しており、中田宏市長が進める民営化路線に、手続き面で警鐘を鳴らした形だ。(太田泉生)

 

 判決後、記者会見した原告の金道敏樹さん(46)は「『保育はハコではなく人』という主張が届いたことは本当にうれしい。民営化が子どもの心と体を傷つけた。市は判決を重く受け止めてほしい」。海渡雄一弁護士は「事実上の全面勝訴。これ以上の判決は無い」と評価した。

 横浜市立保育園の民営化の方針は、03年4月23日に中田市長が発表した。「利用者の求めに応じたきめの細かいサービスを提供するためには民営化すべきだ」という理由で、04年4月に港南区の丸山台保育園や旭区の鶴ヶ峰保育園など4園を民営化するとした。

 移管先は保育所運営の実績がある社会福祉法人などから選ぶ。市は「保育の質は下がらない」としてきたが、子どもたちが日々接する保育園の先生は全員が入れ替わることになる。保護者らは「保育方針が変わり、環境が激変することになる」と強く反発した。

 この日の判決が重視したのは、民営化政策そのものの是非ではなく、子どもを通わせる保護者との議論の過程だった。

 4園の保護者らには、方針発表直後から計11回の説明会が行われた。保護者らは「保護者の意見を聴いてから決めるべきではないか」「時期を先延ばしするべきだ」と主張したが、市側は「決定事項であり実施時期の変更は考えていない」とし、話し合いは平行線をたどった。

 こうした市の姿勢について判決は「04年4月で民営化するとの方針を変更しない前提で、建設的な議論ができていない」と指摘。さらに「民営化は保護者にとって突然の話で、市との間で感情的な対立に至ったことも一概に保護者を非難することはできない」「疑問や不安を解消させる具体的説明ができていたとは言い難い」と厳しく批判した。

 判決は、再び市営化すればさらに混乱するとして民営化の取り消し請求は退けた。ただ、横浜市に限らず行政は公的サービスの民営化や民間委託を進めており、今回の司法判断は、それが住民にどのようなメリットとデメリットがあるのか、時間をかけて説明と議論を行う必要性を示している。