大山のきのこ
ムキタケを収穫する筆者(TCC中年ヒィーヒィー登山隊 田村博文(伯耆町在住49歳)
大山一帯は、ブナやコナラなどの広葉樹林が広がり、キノコの宝庫だ。道路わきを入ればキノコだらけといっても過言ではないが、競争相手も多い。群落を独占したいのであれば、急斜面を登った森林限界辺りには、「これでもか!」というぐらい密集しているところが多い。断っておくが、石やペットボトルを落としてしまったら、止めどなく落ちていく音が聞こえるくらいの斜面だ。枝につかまりながら登るため、翌日の上半身の疲れ具合は相当なものだ。
大山のキノコ狩りは、里山と違って、地面や倒木・立ち枯れの木を見ながら歩く。性能の良い「キノコ目」(ワラビ目と同じように一度キノコが見えるとよく見えるようになる)を備えていて、注意力散漫でなければ収量は見込めない。その上、上りと下りではキノコの見え方が大きく違うため、体力に自信がある人は登山道をはずれて、上を目指したほうがいい。しかし、場数を踏めば、地形や樹種・日当たり・湿度などの状況で、何のキノコが生えそうかが判るようになる。くれぐれも道に迷ってキノコの餌食にならないように!
茸採り物語
キノコ狩りにはまったのは、東京での学生暮らしを終えふるさとに帰って2年目の秋だった。知人に誘われて大山へ茸採りに行き、大木にびっしり生えたナメコを採ってからだ。5人全員が、大きなレジ袋を両手一杯に持ち帰った。家族も大喜び。それ以来、パチンコ通いをやめ、お茶とおにぎりを持って、山歩きを楽しむようになった。現在は、桝水原から車で3分ほどのところに住んでいるが、それもこれも茸採りに魅せられてからだ。
キノコでアル中
15年ほど前、妻を初めての大山のキノコ狩りに連れて行った。何でもいいから採って、後で選別しようと言って持ち帰った。夕食にザーザー(ナラタケ)を牛肉と煮込んで食べた。2時間後、顔面が針を刺したように痛くなり、紅潮してきた。呼吸も苦しい。一緒に食べた妻は何ともないという。「アッ」と気が付いた。僕だけビールを飲みながら食べたために中毒したようだ。あわてて洗面所に走り、水を飲んでは吐き出してを繰り返し、何とか落ち着いてきた。幼い子どもたちが不安そうに見つめていた。その後、米子の医大に電話してみるが、そんなキノコは知らないという。自分で胃洗浄したのなら、病院に来ても処置の方法はない。朝まで様子を見るようにとのことであった。幸いそれで症状は治まった。
キノコの中にはアルコール分解を阻害して、急性アルコール中毒を引き起こすキノコがある。ヒトヨタケなどの仲間がそうだ。ザーザーに紛れて、カケラが入っていたのだろう。もちろん酒を飲まなければ何の問題もない。以前から図鑑で見て、面白いキノコがあるもんだと思っていたが、まさか自分が犠牲になるとは・・・大事にならなかったのは、キノコ図鑑をいつも酒の肴にしていたからだ。
![]() |
![]() |
センボンイチメガサ(食)
猛毒のコレラタケに似ているので注意が必要。雨の後は、ヌメリがあって美しい。
ヌメリスギタケモドキ(食)広葉樹の枯れ木に生える。
ツチスギタケ(毒)
地面から生えるものは、有毒で下痢・嘔吐を引き起こす。わが家の庭に毎年、群生する。
きのこ1 きのこ2 きのこ3 きのこ4 きのこ5 きのこ6 きのこ7 きのこ8 きのこ9