KITA-YOKODAKE
横 岳 (2480m)

縞枯山 (2403m)

茶臼山 (2384m)
     北 横 岳 ( 2480m )
平成22年10月16日(土), 日帰り
   ★ 総所要時間: 6時間 45分
   ★ ハイキング標高差: 397 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 本州中央部 「八ヶ岳中信高原国定公園」 に属する… というか、その本体となる 「八ヶ岳
は、南北におよそ30kmにわたって連なる一大火山群である。 その広大な八ヶ岳連峰は、ほ
ぼ中央に位置する 「夏沢峠」 を境にして、それぞれの環境と山岳の性格から南北に大きく区
分される。 アルペンムードたっぷりに険しい岩稜を連ね、躍動的な雰囲気の 「南八ヶ岳」 に
対して、針葉樹の原生林に包まれ池沼・草原が点在する穏やかな山容の 「北八ヶ岳」 は情緒
的な雰囲気に溢れている。 どちらも魅力的な山群だが、一般に八ヶ岳と言った場合は主峰の
赤岳」 (2899m) を中心とした主脈が連なる南八ヶ岳の一群を指すことが多いようだ。 登山の
グレードも南の方が一般的に高いとされる。
インチキ山屋としては、これまでに 「天狗岳」 (2646m), 「蓼科山」 (2530m), 「編笠山
(2524m) に登頂しているが、今回も力量に応じて主脈への挑戦ではなく、北八ヶ岳の北端、蓼
科山のすぐ隣に位置する 「北横岳」 (2480m) と、それに続く 「縞枯山」 (2403m), 「茶臼山
(2384m) への連登を計画した。勿論、お得意のロープウェイを駆使した ”インチキ登法” での
挑戦である (笑)。
         坪庭から望む、縞枯山 ( 2403m )

北横岳の正式な名称は 「横岳」 であるが、南八ヶ岳の主脈の中に同じ名称の 「横岳
(2825m) がある為、登山では両者を区別する意味でこちらを 「北横岳」 と呼称するのが定着
している。 ロープウェイを利用すれば比較的短時間で山頂に立つことができ、抜群の展望が
得られるので、八ヶ岳の入門コースとしても位置付けられている。 溶岩台地と高山植物が織り
なす自然の 「坪庭」 (2240m) や、特異な景観が展開する 「縞枯現象」 など見どころも満載
で、観光地としても人気の高いエリアだ。
我らもこれまでに、坪庭へは蓼科高原も含めて数回訪れており (観光目的で)、 既にお馴染み
の光景である。 直近では2004年の夏、蓼科山に登頂する前日に訪れている 。
 (Vol.17 「蓼科山」 篇・参照)。

 やや歩行距離は長かったが、北ヤツの主脈に並ぶ三山のピークを結ぶ周回路は、変化に
富んで快適な山歩きが楽しめた。 そして何よりも (珍しく) 好天が幸いし、それぞれの山頂の
みならず、随所で雄大な山岳展望が得られた。 三大アルプスをはじめ、南北の八ヶ岳を一望
でき、さらに 御嶽山浅間山、…といった “中部山岳・オールスター総出演の大パノラマ劇場”
と化していたのだ (満)。
    縞枯現象のもと、 立ち枯れした樹林帯 (横岳)

中央自動車道の諏訪ICを降りて、蓼科高原を目指し 「ヴィーナスライン」 に入る。 右側に
ピラタス蓼科ロープウェイ」 への分岐が現れるので、案内に従って進めば迷うことなくロープ
ウェイの山麓駅前に到着する。 周辺観光地の目玉の一つでもあるので、広い駐車場が整備さ
れているが、この日は土曜日であったため朝から多くの車が既に集まっていた。
北横岳と縞枯山の鞍部 (標高2237m) にかかるロープウェイは、標高差466m・全長2147mを約
7分で運ぶ101人乗りの大型ゴンドラで、原則20分間隔で通年運行している。午前8:20の始発
前に現地入りしていたが、既に登山者を中心とした乗車待ちの列ができていたので、1本見送
って準備に時間をかけることにした。

   
        山頂駅前 坪庭・入口 (2237m)      第一休憩所から、山頂駅と南・中央アルプス

 朝から良く晴れ渡り秋の空も高いので、ロープウェイの車窓からも日本を代表する三大アル
プスと南八ヶ岳連峰が勢揃いして、山岳大パノラマが広がっていた。 山頂駅を出るとすぐ目の
前が 「坪庭」 となっている。 そして、左側に北横岳、右側には縞枯現象の目立つ縞枯山がデ
ンと構え、見事な景観だ。
ゴツゴツとした溶岩台地を這うように緑の低木が広がっている坪庭は、もちろん自然の庭園で
夏季には沢山の高山植物がみられ、アルプスの展望も良いことから毎年多くの観光客が訪れ
ている。 無料の園内には、一周約40分の 遊歩道(一方通行) が整備されており、通常の運動
靴でも気軽に周回が可能だ。 また、これに加えて 幾つかのトレッキングコースも設定されてい
るようだ。
             探勝路の分岐から、北横岳へ向かう

 はじめに (まだ足腰が元気なうちに)、北横岳を目指す。 一方通行の 「坪庭探勝路」 を少し
進むと、第一・第二休憩所 (展望台) を過ぎた探勝路のほぼ中間点付近で、北横岳登山道へ
の分岐が現れる。
登山道はいったん窪地に降りて沢筋へと下ったあと、きつい登り返しで樹林の山腹をジグザグ
に進み尾根上に出る。 傾斜が緩み、やがて 「三ツ岳」 と結ぶ稜線に達し、縦走路を合わせる
とほどなく 「北横岳ヒュッテ」 の前に出る。 ここから西側へ少し入った所には 「七ツ池」 があ
る。 大小七つの池がひっそりと水をたたえ、横岳や青空を映して美しいそうだが、今回はパス
して本線を先に進んだ。
再び傾斜の強まった山腹を登り詰めること10分ほどで、最初の山頂・南峰 (2473m) に出た。
北横岳は南北に二つのピークを持つ双耳峰で、最高点はこの先 (次) の北峰である。 明るく
開けた砂礫の台地である南峰からの眺めも最高だ。

            北横岳・南峰 山頂 (2473m)

 最初に大きく目に付くのは、何と言ってもすぐ隣に聳える北端の名峰 「蓼科山」 の雄姿だ。
諏訪富士の異名の如く端正な山容の独立峰で、広い山頂部のゴロゴロした岩原の様子まで
ハッキリと視認できた。 そして、その奥の西面から東面までぐるりと広がる360度の大パノラマ
風景である。
 北面には北横岳・北峰の山頂が見えており、登山者の姿も目視できる。

           
                南峰より、南八ヶ岳の主脈と手前に天狗岳

   
   (左から) 鳳凰三山, 北岳, 甲斐駒, 仙丈ヶ岳     中央アルプス (空木岳, 木曽駒, 経ヶ岳)

 南峰での景観を充分に堪能したところで、先の北峰にも向かう。 針葉樹の樹間を登り返し、
3分ほどで最高点の北峰 (2480m)に到達した。 特にこちらからは北面の展望が一段と素晴ら
しく、あとは南峰に負けず劣らずの360度に広がる最高の山岳展望だ。
 蓼科山の奥、西面から左方向 (東面) へと視線を移し山座同定してみる。 まずは北アルプ
の主脈 「槍ヶ岳」 から大キレットを挟んで 「穂高連峰」、西南方向に 「乗鞍岳」 と、やや距
離を空けて 「御嶽山」、南方向に中央アルプスの 「経ヶ岳」, 「木曽駒ヶ岳」, 「空木岳」と続く。
その左、南東方向には 「入笠山」 から連なる南アルプス北部の山々 「仙丈ヶ岳」, 「甲斐駒ヶ
」, 「北岳」, 「鳳凰三山」。
 そして東面に大きく見えている八ヶ岳連峰の主脈群が、南端の 「西岳」 から 「天狗岳」 まで
順番に全てが揃って見えるのは圧巻だ。
 北方面では上信越の山並みが広る、ひと際大きな 「浅間山」 と、その左に第一外輪山の
黒斑山」から連なる浅間連峰。 さらには 「妙高山」 と他の北信五岳や、「火打山」 と思わ
れる山々も見渡すことができた。
 この日は中部山岳の殆んど全ての山が見えていたのではないだろうか (満)。

   
      北横岳・北峰 山頂 (2480m)           蓼科山 (2530m)、左奥に 北アルプス

   
    穂高連峰 (左), 大キレット, 槍ヶ岳 (右)        乗鞍岳 (3026m)、手前に 霧ヶ峰

   
           御嶽山 (3067m)                浅間連峰 と 浅間山 (2568m)

 北横岳の北峰からは往路を辿り、膝を痛めないように急坂を慎重に下る。 先に分岐した坪
庭の探勝路まで戻り、そのまま先に進んで窪地状の地形に木道が敷かれたT字路に出る。
これを右側に向かうと坪庭探勝路の終点、ロープウェイ山頂駅に戻ってしまうので、左方向に
木道を辿り 「縞枯山荘」 の建つ 「八丁平」 の草原に向かう。 おいしそうなコーヒーの香りが
する山荘の横を通過して奥へ進むと 「雨池峠」 の十字路に出た。
ここで南側に折れて、深い樹林帯に包まれた薄暗い縞枯山の北斜面を急登する。 横岳の方
は登山者が多く賑わっていたが、こちらでは激減して殆んどすれ違わなくなった。 人気がなく
薄暗い急坂の山道…、何やら出てきそうな雰囲気だ (笑)。
 30分ほど登り詰めて、ようやく明るくなった縞枯山の山頂 (2403m) に達したが、ここは山頂と
いうより尾根の一角といった感じで、立ち枯れした樹林に囲まれ展望はイマイチだ。 縞枯山の
山頂部は、頂上の標柱から南東方向に緩やかな頂稜が続いており、展望箇所はその東端付
近の2387m地点にある。 その前に、キツイ登りだったの で休憩して昼食を摂る事にした。

   
         縞枯山・山頂 (2403m)            縞枯山・頂稜部西側から望む 北横岳

 ところで、山名が示すように この付近の山では特に 「縞枯現象」 が顕著である。 詳しくは触
れないが、これは針葉樹が帯状に立ち枯れして世代交代するという珍しい自然現象で、浅い
土壌や冬の偏西風が原因で特定の場所に起きるのだという。 他にも奥日光や、南アルプスの
一部、奈良の大峰山などでも見られるそうだが、これほど大規模で顕著に視認できるのは北
八ヶ岳のこの場所だけという事だ。
 昼食休憩を済ませ、東端の展望台に向かう。 立ち枯れした樹林帯を抜け、大岩が乱雑に重
なった展望ピーク (2387m地点) に出る。 南側の正面には、すり鉢を逆さにしたような見事な
台形の茶臼山が横たわっている。 ここでも北横岳同様、八ヶ岳の主脈や日本アルプスの全景
をはじめとした、素晴らしい展望が広がっており、いつまで見ていても飽きないほどだ。

           
               東端の展望ピークから、茶臼山と南八ヶ岳(左奥)

 この展望ピークから正面に見える茶臼山との鞍部に向かって、まずは一気に急下降する。
結構キツイ勾配で、一直線に下ったあとはその分だけ急な登り返しとなって 茶臼山の山頂
(2384m) に至る。
ここも、山頂は深い樹林に囲まれているが、西に数分だけ進んだ所に展望台があり、これまた
前の二山に負けない絶好の展望が広がっている。 まったく今回は “展望三昧” という寿司ネ
タみたいな (??) 展開である (笑)。

    
       茶臼山 (2384m) ・展望台           茶臼山・展望台より、南八ヶ岳連峰

 特にこの展望台で特筆すべきは、八ヶ岳連峰の眺めだ。 南側の主脈から自分の立ち位置
を跨いで、北端の蓼科山までが一直線に並んだように展望できるところだ。 人によって感覚は
異なるだろうが、自分が長大に連続する八ヶ岳連峰の稜線上に立って、山脈と一体となってい
る事が実感できた一時であった (幸)。

            
             縞枯現象が顕著な縞枯山、奥に連なる北横岳と蓼科山

 展望台から茶臼山の山頂に戻り、下山に取り掛かる。 麦草峠に続く方面の急坂を降りる
が、いよいよもって膝と足腰に負荷を感じ始めていたので、ゆっくりと下る。 原生林の中に入る
と大きめのゴロゴロした石が多くなり、尚さら歩くのに神経を使う。
やがて強い傾斜が緩んだところで、少し登り返すと岩塊の堆積した展望ピーク (コツ) である
中小場」 (2232m) に出た。 諏訪方面の広い展望が得られる。 下山して離れた茶臼山と、そ
の奥の縞枯山が少しずれて重なって見えている。 南八ヶ岳もまた、違った角度で楽しませてく
れる。
              中小場 (2232m) 

 再び深い原生林の中に入り、「オトギリ平」 に向かう 「大石峠」分岐に至る。 分岐を西に折
れると、傾斜は殆んど感じないくらいの緩い下り勾配となる。
北ヤツらしい苔むした岩場の道を辿ってゆくが、丸みを帯びた苔岩の上はとても滑りやすく、こ
の区間で二度も転倒してしまった。 つまり、苔の上でコケた!! 、という事だ (寒)。 
幸い、二度とも転び方が良かったのか、悪運が強かったのかは知らないが (笑)、怪我をせず
に済んで良かったのだが… (汗)。 
 オトギリ平の付近では背の高い樹林がなくなり、明るく平坦な笹原の中を快適に進む。茶臼
山が右側に大きく展望でき、なかなか絵になる美しい景観だ。

   
      北八ヶ岳らしい苔むした岩場を進む         オトギリ平から望む 茶臼山

 オトギリ平を過ぎると再び樹林帯の中に入り、やがて今回の周回コースの折り返し点となる
出逢ノ辻」 なる分岐が現れる。 この辺りが今コースの最低標高 (2083m) となる地点で、ここ
からは北に向きを変えてロープウェイの山頂駅がある2237mの坪庭まで、縞枯山と茶臼山の
山腹を緩やかな登り勾配で北上して帰還することになる。
 はじめは森の中を若干のアップダウンを繰り返してゆくが、途中で明るく開けた草原の道に
なったりと、変化があって飽きないし難なく進めるので快適なハイキングコースだ。
やがて小さな東屋の建つ 「五辻」 に出たところで、最後の小休憩をとった。 五辻を過ぎ、正面
に縞枯山を見上げて緩やかに登ると、次は向きが真北に戻って笹原の広い斜面を進むように
なる。 所々で日本アルプスや御嶽山の見渡せる気持ちの良い道が続く。

    
          東屋が建つ 五辻            縞枯山を仰ぎ、笹原を緩やかに登る

 やがて登山道はいつの間にか木道へと変わり、遊歩道の終点とされる 「森林浴コース終点・
展望台」 の標識が立つ展望ベンチに到達した。 これまでの大展望には劣るが、ここからの眺
めもなかなかのものだ。 あとは木道が坪庭まで続いているので、よく整備された遊歩道を淡々
と進むだけだ。
 正面に北横岳が現れると、ロープウェイの駆動音が聞こえ駅舎の一部も視界に入ってくる。
ほどなく坪庭に合流して静寂から喧騒の世界へと移り、観光客に混じってロープウェイ山頂駅
へと戻った。

   
      快適に歩く広い斜面を、振り返る          木道が整備された遊歩道に変わる

 結果的に6時間を越えるロングコースとなったが、それぞれの山登り自体の難易度は決して
高くはなく、初級から中級レベルのものだ。 それに、各山頂付近から得られる全方位の大展
望は、さすがに中部山岳の中心地域に位置しているだけに、名だたる名山を一望する素晴ら
しい景観であり、かなりお得感が高い (笑)。
 最近、ますます足腰にガタが目立ってきているので、2〜3日後の激痛と筋肉疲労が心配にな
ったが (実際、ひどい膝痛と、筋肉痛に襲われました… 笑) 、総じて近年にない充実した山歩
きとなった。

           坪庭に合流して帰還、正面に北横岳

 北横岳への単独山行だけでも充分であり、坪庭の散策とセットにしても余裕があると思うの
で、じっくりと時間をかけて楽しむのも良いだろう。 中級以下の山屋さん達には特にオススメ
だ。
 ただ、天候が良くないと魅力は半減する。 坪庭が最も美しいのは、やはり高山植物の花が
多い夏季であるが、夏の展望は晴れていても雲が多くて中々スッキリと見渡せる事が少ないた
め、登頂のタイミングが難しい面もある。
 蓼科高原には魅力あふれる観光スポットや温泉、ハイキングコースが他にも沢山あるので、
できれば数日間滞在してのんびりと過ごしてみるのもいいかもしれない。 
あれっ!? いつのまにか最後は観光大使のようなレポートになってしまった (笑)。

 下りのロープウェイを降りて山麓駅前Pに戻り、山の装備を解いてからお約束の温泉に向か
う。 今回は帰路であるヴィーナスラインに沿った蓼科温泉のうち、日帰り入浴も可能な 温泉
旅館 「小斎の湯」に立ち寄り、掛け流しの露天風呂で疲れを癒して中央自動車道への帰路
についた。
                                          ( 2010.10.30 記 )

立寄り温泉情報


トップへ

戻る